立憲民主党は、5月21日午後、農林水産部門会議(部門長・金子恵美ネクスト農林水産大臣・衆院議員)を国会内で開催、米国の関税措置に係る日米交渉について、関係省庁よりヒアリングを行い、続いて、備蓄米のあり方について農林水産省よりヒアリングを行いました。(司会:野間健農林水産部門長代理・衆院議員)

 冒頭、金子部門長より、「お疲れ様です。疲れているのは国民の皆さん。食料安保を担っていた農水大臣から国民目線、消費者目線から全く離れた発言があった。私たちも国民の皆さん、生産者の立場で語っているが、大きな目的は、消費者・国民に安定して食料を供給するためにしっかりした生産基盤を作り上げること。だから、食料確保・農地維持支払制度を作らせていただいた。ところが、農水大臣が、米がなくて困っている方、米価が不安定でお困りになっている方々のお気持ちを全く考えない発言をしてしまった。失言という簡単なものではない。食料安全保障、山林火災、復興、災害と、党派を超えてしっかりと進めなければならない課題と思い、皆さんと心合わせをしてまいった。もし、政府、トップリーダーが国民目線から全くかけ離れた発言をし、これが本音であるのであれば、私たちは戦わなければならない。農水大臣が交代となった。令和の米騒動への対応として政府備蓄米放出に至っているが、本当に正しかったのか、検証をしなければならない。待ったなしである。トランプ関税の問題もある。食料安保が確立できる形で交渉が成り立つのかどうか。農産物がディールになるのかどうか。しっかりと議論していかなければならない。より良い政策作り、いい国造りをしていくための議論をさせていただく」との挨拶がありました。

■米国の関税措置に係る日米交渉についてヒアリング

 米国の関税措置に係る日米交渉について、農林水産省及び内閣官房米国の関税措置に関する総合対策本部事務局より説明を聴取しました。

 政府からは、「日米協議において、赤澤大臣から、米国の関税措置は極めて遺憾であると述べ、一連の関連措置の見直しを強く申し入れた。農業の生産現場から不安の声が出ていることに関し、農は国の基であり、生産者の皆さまが安心して再生産を続けられる環境を作っていくことが重要という考え。今後の交渉に当たって、農業を犠牲にするという考え方はしておらず、守るべきものは守り、わが国にとって最大限のメリットを獲得するため、政府一丸となって最優先かつ全力で取り組んでいくと考えている」旨の説明がありました。

 参加議員から「報道ベースの情報や政府関係者の情報という形でしか情報が私たちのもとに入ってきていない。事実かどうかわからないことがたくさんある。かつては、貿易交渉に関しては、守るべきものは守る、譲るべきものは譲るということであった。自動車関税を撤廃でいくのかどうかわからない状況の中で、譲るものは譲るという状況になってはならない。心配しているのは、1回目の関税協議も、2回目の関税協議も農水省の官僚が同行していないことだ。戦略だという話もあるが、一方で、政府内で何をするのか、ある程度決められているので、わざわざついていく必要はないのではないかという話もある。情報が錯綜している。なぜ農水省の官僚が同行しないのか」「そうした中、大豆やトウモロコシの話が出てきた。大豆について、ゲタ交付金があるから国内生産に影響はない、自給率は6%程度だから大丈夫という机上の考え方はやめていただきたい。現場を回って生産農家と話してきたが、政府が麦、大豆の生産を拡大していくということで、意欲をもって取り組もうとしていた矢先にこうした話が出てきたので、モチベーションが下がると。そういったことも考えてもらいたい。投資を促進して、これから生産拡大に取り組もうとしていた人たちがどんな不安な思いでいるか、そのことがどう影響するか、考えてもらいたい」「もしもカードを切ろうとしているのであれば、影響はどのくらいか、その影響にどう対応していくか、考えていかないと、農業はまったなしの状況に来ているから、これ以上、生産現場にマイナスの影響を与えるわけにはいかない」(徳永エリ参院議員)との発言がありました。

 これに対し、農林水産省より「交渉の中身をお伝えすることは難しいが、生産者が安心して再生産できる状況は大事だと思っている。先生方から申し入れもいただいている。これをしっかり踏まえながらやっていくことだと思う。自動車を守るために農業を犠牲にすることはあってはならないと考えている」との回答、内閣官房より「どういう体制で交渉に臨むか、ということについては、交渉内容を予断することになるので、どこの省が行って、どこの省が行かないのか、ということは差し控えさせていただく」との回答がありました。

 また、「われわれは前大臣に対して申し入れを行った。大臣が交代したが、これについて、何か一言あれば」(金子部門長)との発言に対し、農林水産省より「4月25日に江藤大臣への申し入れをいただいた。江藤大臣から、こうした申し入れをいただいてありがたいと、心強い、という発言があった。われわれ事務方としても強く重く受け止めていきたいし、政府の中で共有して今後の協議に当たって一丸となって対応していきたい」との回答がありました。

 「どういう考えに基づいて、同行する省庁、同行しない省庁を決めているのか」(田名部匡代参院議員)との質問に対しては、回答はありませんでした。

 「交渉事なので表に言えないことがあることは理解する。ただ、日本の農業を本当に守り切れるのか。国を挙げて戦うつもりでいなければいけない中で、戦略的に同行するとかしないとか考えているのか。今は議論になっていないが、いろんなことを想定してちゃんと体制を取っているのであれば、そう言っていただけたら少しは信用できる」(田名部匡代参院議員)との発言に対しては、内閣官房より「総合的な判断で体制を組んでいる。行っているから大丈夫、行っていないから大丈夫か、という話ではなく、あくまでも政府一丸となって関係省庁連携して準備した上で交渉に臨んでいる。相手は3人いるのに1対3で大丈夫かという議論もあったと思うが、バックアップがとれている体制であれば1人であっても大丈夫ということだと思う」との回答がありました。

 「関税、アメリカが非関税障壁と主張している消費税、相互関税、以上3点について、アメリカが考えていることに政府としてどう対応しようとしているのか。あれば教えてほしい」(福田昭夫衆院議員)との質問がありました。

 内閣官房より「基本的な考えとしては、米国の関税措置は極めて遺憾、アメリカの関税措置を強く申し入れていることは一貫している」「消費税については交渉の中身に係るのでお答えは差し控えたい。大臣も記者会見等で申し上げているとおり、日本政府の基本的な立場としては、アメリカに対して一連の関税全てについて対応すると強く申し入れている。そこから先のやりとりについては、協議の中身になるので、ここでは差し控えさせていただく」との回答がありました。

 この回答に対しては、「自由貿易のあり方のものをリセットしようとしているのがトランプ大統領。WTO、OECDの考え方をしっかりさせるべき」(福田昭夫衆院議員)との発言がありました。

 関税交渉における農水省職員の同行について、「私の記憶では農林水産委員会で江藤大臣が同行させませんという言い方をされた。その理由についても委員会の場で答弁されている。今お答えになれないというお返事があったのでいささか困惑している。かつて民主党政権で個別のことには答えられないといって罷免された法務大臣がいた。あえて申し上げるが、国民の皆さんに説明することは非常に大事。交渉の中身に入ることは言えないことは理解するが、不安に思っている農業者、農業界の皆さんに、もう少し踏み込んだ説明をしていただかないと、つらい、というのが本音。それもあり、今般、ヒアリングを実施させていただいた。野党だから、公の場だからということで、差し控えるということがあまりにも簡単に使われていると思う。あえて苦言を呈させていただく」(神谷裕衆院議員)との指摘がありました。

■備蓄米のあり方についてヒアリング

 続いて、農林水産省から、備蓄米の位置付け、「米の流通安定化に向けた対策パッケージ」、スーパーでの販売数量・価格の推移、銘柄米とその他(ブレンド米等)の販売割合・販売価格、政府備蓄米の流通実績(3月17日~4月17日)について説明を聴取しました。

 参加議員から「説明によれば、政府備蓄米に係る卸売業者の経費・利益が通常の取引よりも格段に大きく膨らんでいる。米の値段が下がらないのは、この経費・利益率が高いことが原因とも読み取ることができる。通常よりも経費が多くかかる要素があるかもしれないことも含め、異常な数字と思っているのか、このくらいのコストは備蓄米の流通を考えると仕方がないと考えているのか、農林水産省の認識を明瞭に聞きたい」(渡辺創衆院議員)との質問がありました。

 農林水産省から「異常とまでは言えないと思う。令和4年産と現時点の比較であることを考慮しなければならない。コストの内訳もなかなかわからない。集荷業者のように利益を取らないということではなく、卸売業者は利益を取った上で販売している。こうしたことに関して、国民の関心が高いので、なお一層のご努力を個別の卸売業者にはお伝えしている。今後の数値をみてこの辺りが上がっていく場合には、何らかの対応を取らなければならないと認識している」との回答がありました。

 「日曜日の某テレビ番組で、買戻し条件の緩和には関係のない卸売業者がテレビの取材に対し、備蓄米を買うと集荷業者から翌年の米の割当てをもらえなくなるかもしれないから、買戻し条件が気になって、卸売業者が備蓄米を買いたいという意思表示をすることができなかったと盛んに言っていた。農水省として、米をめぐる商環境としてそういう課題があると認識しているのか、事実と違うのであれば、誤った情報が流布しないようにすべき」(渡辺創衆院議員)との指摘がありました。

 農林水産省から「買戻しは、集荷業者との契約。一方、卸売業者が、集荷業者から『買い戻すときに協力してもらいたい、買戻しが発生したときには、その卸売業者への供給をカットせざるを得ないかもしれない』と言われると聞いているところ。買受している集荷業者に対して、そうしたことはわれわれが求めているものではないので、誤解のないようにと伝えている。改善されないのであれば、文書などで指導していかなければならないと認識している。

 「農水省が示しているデータでは米ができていないということはない、足りないことはないという前提のもとで政策が進んでいるが、多くの国民は、米は足りないのではないかという認識を持っている。米の量を的確に把握することは今の仕組みではできない。そこに課題意識があるか。中長期的に、米の量の実態を的確に把握する仕組みづくりの検討に取り組む考えがあるのか」(渡辺創衆院議員)との質問がありました。

 農林水産省から「米の流通の実態をしっかり把握しなければならないという問題意識はもっている。今まで捕捉していなかった部分をどうキャッチするか、内部で事務的に検討をしているところ」との回答がありました。

 「10万トンのうち、集荷業者から直接、小売業者へ販売するもの2万トンとあるが、基本的には入札で、高いままでしか行かないのではないかとの心配がある。備蓄米の倉庫が九州や四国にはないことを考えると、西日本は輸送コストがかかるから備蓄米が行かないのではないか。そうした地域の偏在について意識しているのかどうか。おそらく価格差が出てきているのではないか」(近藤和也衆院議員)との質問がありました。

 農林水産省から「遠距離のところに輸送費がかかっていることは認識している。一方で、備蓄米を原料としたブレンド米が、九州、鹿児島で3,000円台中頃と東京と変わらないものもある。輸送費をなにがしかの形で吸収している。私どもも事情を聴いていかなければならない」との回答がありました。

 また、「今日、堂島の米の先物がストップ高となった。これについてどう見ているのか」(近藤和也衆院議員)との質問があり、農林水産省より「先物に関して、指標としてどう見るか、難しいところがある。まだ不足感を感じている人が多いということが先物市場の価格動向に影響しているのではないか。4月末の作付け意向について、流通のプロフェッショナルの人々に合理的な行動ができるよう、情報発信をしていくことと思っている」との回答がありました。

 「江藤大臣と議論していく中で、一番残念だったことは、生産数量が不足していることが原因であることを認めなかったこと。明らかに生産量が足りないから、これだけ価格が上がって米騒動が起こっている。さすがに石破総理はここにきて、供給量が不足していることは否定できないという表現に変わった。現時点での農水省の認識を聞かせてほしい」(山田勝彦衆院議員)との質問がありました。

 農林水産省から「令和5年産が顕著であったが、精米歩留まりが悪かった。統計は玄米でとっているが、精米歩留まり減、ふるい目の上にあるものと下にあるもののバランスの問題から、流通過程の段階で、製品化していく上で十分でないという不足感につながっていることもありうるのではないかと思っている」との発言がありました。

 「買戻し条件を1年から5年に緩和したが、買戻し条件が間違っている。買戻し条件自体を撤廃すべき」(山田勝彦衆院議員)との指摘に対して、農林水産省から「今般の備蓄米放出は、シンプルな放出とは違うので、備蓄水準の回復もセットで売渡しを行っている。買戻し条件を外すことはとりえない。ただ、買戻し期間を5年以内として、柔軟かつ計画的にできるということでご理解いただけると思っている」との回答がありました。

 「食糧庁時代は、坪刈りで正確に作況指数を把握できていた。残念ながら農水省の地方職員の人員削減の影響もあり、作況指数を正確に把握できず、需要量と生産量のずれを生じさせているのが、大きな原因だったのではないか。現時点で正しく生産量を把握できていたのか。ずれがあったのか」(山田勝彦衆院議員)との質問がありました。

 農林水産省から「生産量については統計部が把握している。確かに坪刈りのほ場点数や統計に携わる地方組織の職員が減少していることはご指摘のとおり。一方で、生産量の調査は8,000筆のほ場を無作為に抽出し、ほ場内から3か所無作為に抽出することで一定の精度が保たれる。この調査方法は、統計委員会にもお諮りをして、実行しているもの」との回答がありました。

 「農水省として米の小売価格を真剣に下げたいという気持ちを持っているのか。生産者の概算金が確保されることは当然ではあるが。備蓄米の入札について今回工夫されているが、本当に米価を下げるのであれば、一番安い金額で入札したところ、小売価格までフォローして、一番安い価格で出せるところを落札するという方法など、大胆なことを考えていかないと、価格が下がることはないと思っている」(西川将人衆院議員)との指摘がありました。

 これに対し、農林水産省から「小売価格に直接的に影響するような対策、ご指摘のような形は、ある意味、再販価格を制限することになるので、現行の仕組みの中では難しかろうと思っている。今回の米の流通が混乱している中、不足時の備えである備蓄米を売り渡すことで、流通、価格も落ち着いていくことを狙っている。不足感の解消にも至っていないし、価格も、先物価格もそうした形になっている、結果が出ていないことに関して、まだまだ改善していかなければならない。法制度上の制約もあるが、なお一層何かできることがあるか、検討して省内で実行に移していきたい」との回答がありました。

 「全国のJAの概算金が24,000円台になってきている。あと3~4か月で新米が出てくる中で、確実に今以上に米価は上がっていく。このまま何もしないで、流通経路に乗せていくと5キロで7,000円、8,000円となるのではないか」(西川将人衆院議員)との指摘がありました。

 これに対し、農林水産省から「農家に対し、追加で概算金が上乗せされ、2万円前後になっているが、これだけでは店頭価格の4,000円強とはならない。集荷業者以外の業者に流れていったものが、業者間の転玉になってスポット価格で4~5万という価格がついた。こうしたことが合成されて今の小売価格となっている。概算金が2万円水準だから店頭価格がもっと上がるということでは必ずしもないと思っている。いずれにしても、こうしたことも含め、よく見て対応していきたい」との回答がありました。

■WTの設置

 以上のヒアリングを終え、金子部門長より「備蓄米についてヒアリングをさせていただいたが、多くの課題がある。昨年の食料供給困難事態対策法案に対する修正案に、備蓄についての検討条項を入れ、今般の食料供給困難事態対策法改正案にも入れさせていただいたところ。現在の備蓄米放出の課題、今後の課題もあることから、改めて『備蓄米のあり方WT』の設置をお願いしたい」との提案があり、了承されました。

 さらに、「農業用ため池について、超党派の議員連盟もあり、法案提出に向けた動きがあることから、『農業用ため池対策WT』の設置をお願いしたい」との提案があり、了承されました。