立憲民主党は、3月28日午前、森林・林業・山村振興WT(座長・近藤和也衆院議員)・農林水産部門会議(部門長・金子恵美ネクスト農林水産大臣・衆院議員)を国会内で開催し、森林経営管理法・森林法改正案について林野庁より説明を聴取し、質疑応答を行いました。林野庁説明者の退席後、同法案について審査を行いました。(司会:渡辺創農林水産副部門長・WT事務局長・衆院議員)
■山林火災について
冒頭、近藤WT座長より、「先週、山村振興法改正案が成立した。ご協力いただいた皆さまに感謝申し上げる。今、山と言えば山火事。どうしてこうした状況になってしまったのか。今日の雨は恵みの雨。かつて、山があれば選挙にも出られるし、木を伐れば稼げるという時代があったが、伝説のような状況になってしまった。山火事、イノシシやシカ、害虫、花粉と、いつの間にか山が負担のようになってしまっている。かつて民主党政権の時、林道を30万km延ばし、負担の山を宝に変えていこうとしたが、中途半端になっている。私たちこそが山をもう一度宝に変えていくのだという思いの中で、しっかりと力を合わせて頑張っていきたい」とのあいさつがありました。
次に、金子部門長より、「この時期、山林火災が各地で発生している。渡辺創議員の地元でも山火事が発生し、何とか鎮火した。そうした中、今回の法案でCO2吸収などの話を聞いていると、とても悲しい気持ちになる。やらなければならないのは、わが国の国土面積の7割を占める森林をしっかりと守っていくことである。市町村の役割が出てくるが、大船渡市のように、一つの自治体の中であれだけ面的に被害があると、対応できるのか。災害対応ということもあるが、森林を守ることは政府一体で取り組まなければならない。路網整備の遅れから対応が十分にできなかったのではないかという声もある。議員宿舎から議員会館に来るまでの間、ラジオが流れていて、福島の対応でドローンやAIを使って、人が入れない山をしっかりとチェックしていくという話があった。もともとは原発事故後の放射能で人が入れないための対応であった。今、どこの山も人が入らない。人手不足。しっかりと対応していかなければならないと感じた」とのあいさつがありました。
渡辺創副部門長・WT事務局長より、「地元、宮崎1区の山火事について、林野庁の皆さんからご助言をいただき、収めることができた。感謝申し上げる」との発言がありました。
以上のあいさつ、発言を受け、林野庁より、「大船渡市の山林火災について、鎮圧はしたが鎮火には至っていない。2,900haという広い面積であった。林野庁も参加して森林の被害状況を調査している。激甚指定になったので、国も支援し、森林の復旧に向けて取り組んでまいる。漁具被害等もあったので水産とも連携し、しっかりやっていきたい。愛媛と岡山の山林火災についても、それぞれ400ha強、500haと非常に大規模な火災。今朝の情報が入っていないので、今回の雨がどう作用したか気になっているところ。いずれにしても、森林の復旧とともに、それぞれ原因がまだわからない中ではあるが、火災が起こらないよう、林野庁としても最大限努力していきたい。ご指導をお願いしたい」との発言がありました。
■森林経営管理法・森林法改正案についてヒアリング
森林経営管理法・森林法改正案の概要については、2月14日の農林水産部門会議において、同法案の条文については2月28日の農林水産部門会議において、それぞれ林野庁より説明を聴取し、さらに3月7日の農林水産部門会議において林野労組・森林労連と同法案について意見交換を行ったところですが、今回は法案審査のため、さらに林野庁より説明を聴取しました。
質疑応答に入り、参加議員から「自治体に事務をお願いすることになるが、最近の自治体では林政課という部署は人が減り、あるいはなくなっている状況にある。そのため、しっかりと財源を付けて頑張っていただかなければならない。交付税措置なのか森林環境税なのか、財源について林野庁としてどのように手当しているのか」(神谷裕衆院議員)との質問がありました。
林野庁から「今回の法案で創設される支援法人は外の法人になるので、市町村本体の体制も必要。これについては地域林政アドバイザー制度がある。同制度は、市町村や都道府県が森林・林業の技術者を雇用等する場合に財政支援するもの。500万円が限度であるが、特別交付税措置の対象とする。現在、全体で334名、市町村で約300名が地域林政アドバイザーとして役場の中に入り、林政の仕事を担っている。この仕組みを引き続き活用していただき、制度がきちんと回るよう一助になると考えている」との回答がありました。
回答を受け、参加議員から「334名はそんなに多くないというのが実感。財源の手当てをきちんとしていかないとワークしていかないのではないか。考えていただきたい」(神谷裕衆院議員)との発言がありました。
参加議員から、「不明森林の場合、6か月の公告をして所有権の移転ができるということだが、所有者が自分では手入れはしないが譲りたくないというトラブルがある。農地の集約でも同様のことがある。山の場合、どういった措置が行われるのか」「国産材の需要喚起は重要なテーマである。民主党政権のときに公共建築物の2階部分までは国産の木材で、という法律が成立した。今、この法律に基づいてどういう取組がなされているのか」(山田勝彦衆院議員)との質問がありました。
林野庁から「1点目について、森林の集積・集約化を進めるに当たって所有権移転ができるようにしたが、公告については所有権ではなく、市町村への経営管理権の設定に関するもの。所有権は移転しないが、所有者の意見をしっかり聞く、所有者不明の場合は公告をするというもの。決して所有権を引き剥がすというものではなく、希望される場合に所有権を移転できるという制度。改正案は、所在不明の方が多くなっているので、間伐等の場合であれば共有者の2分の1の同意で良い、公告期間も6か月を2か月に短縮するというもの。2点目、公共建築物の木材利用の法律については、国産材に限ると問題があるので木造を進めていくというもの。3年ほど前に民間建築物も含めて木造化を進めようということになっている。公共建築物は率先して国・都道府県・市町村が進めることとしている。毎年、国交省と林野庁で厳しく全省庁をチェックしている。土地改良や水利関係施設など技術的にできないもの以外は、木造化・内装木質化はかなり進んできている。各省庁を束ねて木造化を強力に推進している」との回答がありました。
参加議員から、「太陽光パネルが地元蔵王の山肌一面に敷き詰められ、遠くからキラキラ光っている状態。排水施設の設置等の許可条件違反について、どのようなことがあるのか。罰せられた事例はあるのか」(柳沢剛衆院議員)との質問がありました。
林野庁から「排水施設のほか、貯水池、土砂流出が起こりにくくするための防護壁を作ることなどが主な条件となっている。今のところ命令が出て、これに違反して罰則が適用されたという事例はない。今回は都道府県知事の命令を出さずに罰則をかけられるようにする。命令がなければ罰則が適用できないとすると、例えば太陽光パネル設置者が『やります、やります』と言っているうちに災害が発生してしまうことが起こりかねないので、今回こうした措置をさせていただく」との回答がありました。
参加議員から「森林所有者が、たまに山に行ったら全部伐採されていたという話がある。今回の改正案では、共有林の経営管理権の設定は共有者の同意要件を全員から2分の1に緩和されるということだが、連絡が付かず同意をもらう機会がない場合、どういった対抗措置がとれるのか」(野間健衆院議員)との質問がありました。
林野庁から「今回、共有者の2分の1の同意に緩和するものは間伐や保育などに限定している。伐採の場合は全員の同意が必要となる。間伐や保育であれば基本的に森林の価値は増していく。そういう行為であれば全員でなくても2分の1でよいのではということで今回措置した。伐採して財産処分ということになると、全員の同意をしっかりとった上でやっていくことになる」との回答がありました。
■森林経営管理法・森林法改正案の法案審査
林野庁説明者の退席後、森林経営管理法・森林法改正案の法案審査を行いました。 同席していた林野労組・森林労連に意見を伺ったところ、「われわれとしてもこの法律はきちんとやらなければならないと思っている。ただ、市町村の体制や境界の整備について、国の支援がまだまだ不十分。路網整備も遅れている状況。山火事が多発しているが、林道は防火帯の役割も果たし、消火活動にも役立つ。路網整備を推進すべき」との発言がありました。
金子部門長から「反対するものでは全くないが、まだ課題があるので現場でしっかりと質疑はしたい。附帯決議を付けていく必要があると思っている。現段階では賛成の方向で一任いただきたい」との発言がありました。
協議の結果、賛成の方向で部門長に一任することを了承しました。
