2020年12月4日

2021年度税制改正への提言

立憲民主党税制調査会

 今春以来の新型感染症の拡大は、これまで日本が抱えていた各種の問題点を改めて浮き彫りにすると同時にその矛盾をさらに拡大、深刻化している。ひとり親や若者・高齢者の貧困の問題、一部の人々への富の集中、少子化で人口が急激に減少する問題、差別や偏見による社会の分断の問題、そして気候危機による災害の多発と大規模化、これらは社会全体の改革を進めることによって解決しなければならない課題であるが、税制が問題解決にあたって果たすべき役割も大きい。2021年度の税制改正では、こうしたポストコロナ・ウィズコロナ時代の目指すべき社会像も見据えつつ、差し迫った危機に直面している個人や企業、団体に対する税制上の具体的な支援策を講じる必要がある。
 立憲民主党は、こうした考え方から、2021年度税制改正について、経済団体、各種業界団体、労働団体と意見を交換し、以下の提言をまとめた。

1.コロナ禍に対する税制・財政上の対応

 コロナ禍のもとでの医療機関や公共交通機関の経営悪化、各企業等でのテレワーク拡大、地方自治体の財政への圧迫などに対して、以下の措置を講じるべきである。

  • 新型コロナウイルス対策のため、医療機関や介護施設への寄付控除拡充、設備投資等における税制上の優遇を図る。
  • 医療機関の経営を支えるため、控除対象外消費税問題の抜本的解決のための措置を講ずる。
  • 新型コロナウイルス感染症の収束が見通せず、資金繰りの厳しい状況が当面続くことが予想されることから、観光関連事業や公共交通機関に係る固定資産税等の納税の猶予期限を延長(再猶予)する。航空機燃料税の軽減措置を継続・拡大する。
  • 通勤手当をテレワーク環境整備にかかる経費へ振り向けた際の通勤手当非課税限度額の適用等、テレワーク支援税制を拡充する。
  • 地方自治体が新型コロナウイルス感染症の影響に十分に対応できる体制を整備するため、減収補填債制度の対象に地方消費税を追加、地方交付税「別枠加算」の復活、固定資産税の安定的確保。

2.中小企業等の事業継続・雇用維持とウィズコロナへの経営支援

 中小・個人事業者の事業継続・雇用維持への支援のため、すでに実施されている納税猶予措置などの各種税制措置の延長のほか、欠損金の繰り戻し還付の適用拡大によるキャッシュ還流など思い切った時限的特例措置を講じるべきである。

  • 新型コロナ対策としての公租公課の猶予措置の延長と終了後の支援。
  • 約96万社が利用する中小企業者等の法人税率の特例(年間800万円以下の所得金額について本則税率19%から15%に軽減)の確実な延長。
  • 土地に係る固定資産税について、 現行の負担調整措置の延長 (3年間)のうえ、一定期間の税額の据置等の緊急措置を講じる。
  • 欠損金の繰越控除の繰越期間(現在10年間)の延長、中堅企業の繰越控除限度額(現在当期所得金額の50%。中小企業は所得の全額)の引き上げを行う。
  • 中小・中堅企業の欠損金の繰り戻し還付について、災害損失と同様に対象期間を複数年度に拡充する。
  • コロナ禍により生じた個人事業者の純損失についても繰越控除(現行青色3年)・繰り戻し還付(現行青色1年)についても期間を延長する特例措置を設ける。

 コロナ禍の拡大をきっかけに広がっているテレワーク勤務の増加や事業のデジタル化の加速などの研究開発をコロナ収束後の経済再生のための新たな革新の機会・手段ととらえ、税制面からも積極的に支援し推進していくべきである。

  • 中小企業経営強化税制、中小企業投資促進税制、商業・サービス業等活性化税制の確実な延長。
  • 景気の先行きが見えず設備投資の決断が困難であることから中小企業経営強化税制の経営力向上計画の認定期限を緩和。
  • 研究開発税制について、経営悪化局面でも研究開発投資を継続できるように控除上限の引き上げ。
  • 中小企業防災・減災投資促進税制の延長・拡充。
  • 法人の後継者の役員就任要件の撤廃等、事業承継税制のより一層の拡充。
  • スタートアップやベンチャー企業の成長段階に応じたメリハリある支援税制(創業期・研究開発型は還付、成長期は赤字繰越し、充実期は控除等)の整備・構築。
  • 国立大学の寄附収入を拡大させるため、個人寄附金に係る税額控除の対象を、学生への修学支援のみならず、教育・研究活動全般への支援に拡大する。
  • デジタル化に対応した税理士法の見直し。税理士のサテライト勤務を可能にするとともに、自署押印義務を本則上も見直し。

3.所得格差是正のための公平な税制の実現

 非正規雇用労働者の割合が過去30年で2倍近くに増加したことなどにより、日本社会の特徴でもあった分厚い中間層が減少し、低所得の貧困世帯の増加、高所得層と低所得層の二極分化が進んでいる。このような観点から、所得税などのあり方をあらためて見直し、所得再分配機能を強化する必要がある。

  • 個人所得課税の人的控除については高所得者ほど税負担軽減が大きい所得控除から、所得水準に関わらず一定の税額控除や社会保障給付、給付付き税額控除に振り替える。
  • 所得が1億円を超えると所得税負担率が低下する結果となっていることから、その大きな要因と考えられる株式譲渡益等の金融所得を定率(低率)の分離課税から総合課税に改める。
  • 所得税の最高税率の引き上げなど税率構造を見直す。

4.社会保障を支える財源調達と消費税の改革

 社会保障制度等を維持・充実していくためには、確かな税財源が必要である。そのためには、消費税導入時やその後に大幅な税率引き下げが行われた法人税、所得税等の税率構造等の見直し、所得・消費・資産等の税収構成のあり方の見直しを今一度行う必要がある。また、消費税についても時限的な税率の見直しも含めて、逆進性緩和などについて、改革を進める必要がある。
 特に、昨年導入された軽減税率制度については、真に効果的・効率的な低所得者対策とはなっていないことに加え、実務上の負担や混乱など問題が多いことが指摘されており、マイナンバー制度を活用した正確な所得捕捉の実現とともに「給付付き税額控除」制度(一定の所得以下の階層に対して基礎的消費支出にかかる消費税相当額の一定部分を税額控除または給付するもの)の導入を急ぐべきである。

  • 複数税率(軽減税率)の廃止。
  • 逆進性対策として給付付き税額控除制度を導入する。
  • 2023年10月導入予定の適格請求書等保存方式(インボイス)については、コロナ禍の現在の経済情勢のもとでは準備期間が不足し、免税事業者(約500万者)に対する取引排除による廃業の増加や不当な値下げ圧力等が生じる懸念もあることから、導入を延期する。
  • 小規模事業者の帳簿電子化促進のためのインセンティブとして青色申告特別控除の拡充。
  • 消費税転嫁対策特別措置法により総額表示義務が緩和され、消費者の誤認防止措置を講じることで外税での価格表示が認められているが、小売事業者等の企業努力のアピール上の必要性、書籍・出版業界での消費税率変動のたびの表示変更の困難さなどの声が強いことから、外税表示の選択肢を恒久化する。

5.安心で質の高い生活を維持するための税制

  • 住宅政策の抜本的な見直しを検討する中で、当面、住宅ローンの控除期間を延長する。家賃補助の創設も検討する。
  • 自動車関係諸税については、地方財政への影響に留意しつつ、地方の居住者にとって生活必需品であることをふまえ抜本的な軽減・簡素化を図る。自動車重量税の「当分の間」の特例税率は早急に廃止する。
  • 中堅所得層の生活の安心のために生命保険料控除制度の拡充(生命・介護医療・個人年金の各保険料控除の最高限度額及び控除合計適用限度額の引き上げ等)。

6.若者・子ども子育て世帯、DV被害者を支援する税制

  • 貸与型奨学金の返還額を所得控除の対象とする。
  • DV被害者が生活を再建する際の必要経費について非課税措置を導入する。

7.地域の足を守るための安心・安全・円滑な公共交通の確保

  • 安定的な公共交通網維持のため、軽油引取税の課税免除措置については脱炭素化への支援を図りつつ当面延長する。
  • バリアフリーや省エネを推進するため公共交通施設や車両の固定資産税等の税制上の支援措置や特例措置の延長・拡充。

8.グリーン税制・グリーンリカバリーの推進

  • 2050年までにカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)を達成できるよう、脱炭素の技術革新・技術開発を税制面からも強力に支援し、税制全体の見直しの中で炭素税のあり方を検討すべきである。
  • 電気自動車等の開発・普及をコロナ禍からの経済復興の一つの柱に据え、税制面等からも強力に支援する。

9.大規模災害対策関連税制

  • 現行の雑損控除制度とは別に「災害損失控除」を創設し、繰越控除期間を5年間とする。
  • 東日本大震災にのみ適用される「被災者支援者活動を行う認定NPO法人等向け指定寄付金制度」について、大規模災害発生時のために一般制度化する。
  • 被災者生活再建支援金の支給対象に半壊世帯の一部も追加されたことから、当該半壊世帯の一部に支給される支援金についても非課税措置等を講じる。

10.地方自治に関する税制

 地方自治体が自主性・自立性を発揮しつつ、真の地方分権改革を実現するべく、安定的かつ継続的な自主財源の確保が不可欠である。大都市から過疎地まで地方自治体の多様な実情に応じた税財政上の措置を講じる。

  • 国税と地方税の税源配分を見直す。
  • 地方交付税総額及び地方一般財源総額の確保・充実を図る。
  • 臨時財政対策債に依存することなく、地方税財源の安定的な確保・充実を行う。

11.その他

  • 国際的なデジタルネットワーク社会化が急速に進展する中で、いわゆるGAFAなど国内に拠点を持たないグローバル巨大IT企業に対する課税については、国内企業がグローバルIT企業と対等・公正に競争できる環境づくり、税源の浸食を防ぐという観点から国際的合意形成を急ぎ、国内法制整備を進める。

【別表】各部会から税制調査会に提出された重点項目

 2021年度税制改正について各部会で取りまとめて税制調査会に提出した重点項目は下記の通りである。

部会  項目   内容
内閣部会寄付金文化醸成、寄付を通じた社会促進に資する税制措置
  • 個人が寄付した際の所得税に係る控除限度額の引き上げをはかる。
  • 法人が寄付した際の法人税に係る損金算入限度額の引き上げをはかる。
  • 寄附金に係る所得税の控除、法人税の損金算入については繰り越しを認める。
  • 個人の寄附金控除については、年末調整での適用を認める。
  • 旅費交通費、宿泊費、通信費などボランティア活動にかかった経費を控除する制度を導入する。
  • 公益社団・財団法人及び認定NPO法人活動に資産に係る贈与、遺贈を行った場合は、みなし譲渡所得から一定額を上限に特別控除できる特例を設ける。
(要望団体)日本NPOセンター、シーズ・市民活動を支える制度を作る会、公益法人協会、新公益連盟、日本ファンドレイジング協会
内閣部会大規模災害等、天災発生時への対応支援、NPOや公益法人等の活動基盤強化に資する税制措置
  • 東日本大震災にのみ適用される「被災者支援者活動を行う認定NPO法人等向け指定寄付金制度」について、今後、大規模災害発生時に救援・支援活動を行う認定NPO等に対する指定寄付金制度を迅速に発動できるように一般制度化する。
  • 被災者生活再建支援金(以下「支援金」という。)について、半壊世帯の一部についても支給対象とする法律が成立しており、当該半壊世帯の一部に支給される支援金についても、所得税及び個人住民税を課さないこととする非課税措置等を講じる。
(要望団体)日本NPOセンター、公益法人協会、新公益連盟、日本ファンドレイジング協会、内閣府税制改正要望
内閣部会若者支援に資する税制上の措置
  • 日本学生支援機構貸与奨学金返還額を所得控除の対象とする。
(要望団体)キッズドア
消費者部会協同組合等の法人税率の軽減等

協同組合の法人税率の軽減をはじめとした、協同組合の特性と歴史的経緯に沿った税制の配慮の継続するよう要望する。

(要望団体)日本生活協同組合連合会
消費者部会受取配当の益金不算入制度の整備

平成29年度税制改正により「協同組合等の連合会等への普通出資」に対する配当の益金不算入割合が一律50%とされたことで、出資比率の高い生協では増税になった。協同組合の健全な発展、税の不公正性や二重課税排除の観点からも、さらなる制度の整備について要望する。

(要望団体)日本生活協同組合連合会
消費者部会消費税「総額表示方式」の法的義務づけの廃止

消費税の「総額表示方式」の法的義務付けを廃止し、消費者にとってわかりやすい表示方法を事業者自らが適切に選択できるように見直すよう要望する。

(要望団体)日本生活協同組合連合会
総務部会真の地方分権改革実現に向けた地方税財源の安定的な確保

真の地方分権改革の実現に向けて、国・地方の税源配分の見直し、安定的な税収を確保できる地方税体系の構築、地方交付税総額及び地方一般財源総額の確保・充実、都市部から過疎地まで地方自治体の多様な実情に応じた税財政上の措置の実現、「国と地方の協議の場」を通じた地方の意見の十分な反映等により、臨時財政対策債等に依存することなく、地方税財源の安定的な確保・充実を行う。

(要望団体)全国知事会、全国市長会、全国町村会、指定都市市長会、全日本自治団体労働組合(自治労)
総務部会新型コロナウイルス感染症の影響に対応するための税財政上の措置

地方自治体が新型コロナウイルス感染症の影響に十分に対応できる体制を整備するため、減収補填債制度の拡充(地方消費税を対象に追加)、地方交付税「別枠加算」の復活、固定資産税の安定的確保、入湯税の堅持と減収分への財政措置等、必要な税財政上の措置を行う。

(要望団体)全国知事会、全国市長会、全国町村会、指定都市市長会、全日本自治団体労働組合(自治労)
総務部会デジタル社会の実現に向けた税制上の措置

地方税の電子申告・納税の更なる推進等、行政分野でのデジタル化を進めるとともに、働き方改革やジェンダー平等に配慮したリモートワーク促進税制の推進、地方拠点強化税制の拡充、研究開発税制の拡充・延長、イノベーションの社会実装に向けた設備投資促進税制の創設等、民間分野でのデジタル化を推進する。

(要望団体)全国知事会、全国市長会、全国町村会、指定都市市長会、NTT、デジタルメディア協会、ソフトバンク
財務金融部会中小企業の事業継続のための税制措置

コロナ禍の影響によって厳しい状況に立たされている中小企業の事業継続のため、(1)令和3年度末が適用期限となっている中小法人の法人税軽減税率の適用期限の延長(2)中堅・中小企業向けプロパー融資の前年度比増加額の一定割合を損金算入できる特例の創設(3)事業承継税制のより一層の拡充、等を行うべきである。

(要望団体)全国銀行協会、信託協会、全国信用金庫協会、全国信用組合中央協会、全国法人会総連合、全国青色申告会総連合
財務金融部会インボイス制度導入の見直し・柔軟運用

令和5年10月からの「適格請求書等保存方式(インボイス制度)導入」に向け、令和3年10月より「適格請求書発行事業者」の登録申請が開始される。インボイス制度については、過重な事務負担を事業者に強いることになるばかりか、免税事業者が取引過程から排除されるリスクもあることから、現行方式の当面維持も含め、制度の見直し、柔軟運用を図るべきである。

(要望団体)日本公認会計士協会、全国法人会総連合、TKC全国政経研究会、全国間税会総連合会、全国青色申告会総連合
財務金融部会民間保険・共済制度の維持のための税制等

公的保険を補完し国民生活の安定と多様なリスクに備える民間保険・共済制度の社会的使命・重要性に鑑み、その維持のため、(1)火災保険等に係る異常危険準備金制度の充実、(2)地震保険料控除制度の見直し、(3)生命保険料控除制度の拡充(生命・介護医療・個人年金の各保険料控除の最高限度額及び控除合計適用限度額の引き上げ等)、(4)死亡保険金の相続税非課税限度額の引き上げ、を行うべきである。また企業年金制度等の積立金に係る特別法人税の撤廃、財形非課税限度額の引き上げと加入年齢の拡大、企業型確定拠出年金制度の退職時脱退一時金支給要件の緩和を行うべきである。

(要望団体)生命保険協会、日本損害保険協会、全国生命保険労働組合連合会、損害保険労働組合連合会、こくみん共済COOP(全労済)
文部科学部会教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の延長

祖父母等から子・孫に対して一括贈与された教育資金を受けた場合の贈与税の非課税措置。子育て世代の経済的負担を軽減し、若い世代を支援するため、必要な措置である。

(要望団体)国立大学協会、全私学連合
文部科学部会国立大学法人等への個人寄附に係る税額控除の対象事業の拡大

国立大学の寄附収入を拡大させるため、個人寄附金に係る税額控除の対象を、学生への修学支援のみならず、教育・研究活動全般への支援に拡大すべき。

(要望団体)国立大学協会
文部科学部会公益法人が所有・取得する重要無形文化財の公演のための施設(能楽堂)に係る固定資産税、不動産取得税、都市計画税の軽減措置の恒久化

現在は令和2年度末まで2分の1に軽減されているが、日本文化・芸術の継承のため、芸術家の活動継続のため、この軽減措置の恒久化を図るべき。

(要望団体)公益社団法人 日本芸能実演家団体協議会
厚生労働部会控除対象外消費税問題の抜本的な解決

控除対象外消費税問題の抜本的解決のための措置を講ずる。

(要望団体)日本医師会、日本歯科医師会、四病院団体協議会、日本社会医療法人協議会、日本病院会、全国老人保健施設協会
厚生労働部会消費税にかかわる低所得階層対策

軽減税率導入案を撤回し、最低限の基礎的消費にかかる消費税負担分を給付する「消費税還付制度」または「給付付き税額控除」を導入する。

(要望団体)日本退職者連合
厚生労働部会研究開発税制の延長・拡充
  • 総額型の控除上限、上乗せ措置の上限を引き上げる。
  • 総額型の控除上限引き上げ・上乗せ措置の適用期限を延長する。
  • オープンイノベーション(OI)型の手続き要件を緩和する。
(要望団体)日本製薬工業協会、日本化学エネルギー産業労働組合連合会(JEC連合)、日本医療機器産業連合会
厚生労働部会新型コロナウイルス対策のための医療機関等支援のための税制措置【新型コロナウイルス感染症に係る寄付による経営支援拡充のための税制整備】
  • 新型コロナウイルス感染症に係る、医療機関に行われた寄付につき、寄付者の所得控除、損金参入枠の拡充、並びに医療機関の受贈益を非課税とする。
  • 新型コロナウイルス感染症に係る、介護老人保健施設になされた寄付につき、寄付者の所得控除、損金参入枠の拡大、並びに介護老人保健施設の受贈益を非課税とする。
(要望団体)日本医師会、日本歯科医師会、四病院団体協議会、全国老人保健施設協会
【感染症対策のための設備投資、消耗品等の支出への税制上の支援措置】
  • 新型コロナウイルス感染症対策の設備投資等につき、即時償却又は税額控除、償却資産税の全額免除、消費税相当額の補助等の、税制上の優遇を図る。
(要望団体)日本医師会、日本歯科医師会、四病院団体協議会、日本病院会、日本医療機器産業連合会
農林水産部会農業経営基盤強化準備金制度の継続と改善

農業経営基盤強化準備金及び農用地等を取得した場合の所得税・法人税の特例措置について、農業者の計画的な投資に向け、制度を改善した上で継続すること。

  • (1)制度の対象となる農業用機械等の下限金額を設定し、強制取り崩し要件を撤廃すること。
  • (2)準備金の使途対象に一定の条件を満たす中古農機具などを認めること。
  • (3)個人経営の農家にも準備金の継承を認めること。
  • (4)積立期間については最長10年とすること。
(要望団体)全国農業協同組合中央会、北海道農民連盟、全国農業会議所
農林水産部会免税軽油制度の恒久化

農業用トラクターや漁船、動力源等の使途に供する軽油の「軽油引取税の課税免税」(32.1円/ℓ)については、地域経済の下支えなど農業・林業・漁業経営に不可欠な制度となっていることから、軽油引取税の特例措置を延長し恒久化すること。

(要望団体)全国農業協同組合中央会、北海道農民連盟、日本酪農政治連盟、林業関係10団体、大日本水産会・全国漁業協同組合連合会
農林水産部会東日本大震災からの復興支援税制の延長

東日本大震災から9年半が経過したが、いまも漁業者等は漁業再開に向けて日々努力している。未だ本格操業再開ができていない漁業者もあり、努力を無にすることのないように、被災代替漁船に係る特別償却、登録免許税及び印紙税の無税などの特例措置の延長などを講ずること。(東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律第11条等関連、所得税・法人税・登録免許税・印紙税・固定資産税)

(要望団体)全国農業協同組合中央会、大日本水産会・全国漁業協同組合連合会
経済産業部会テレワーク減税、デジタル投資等、新型コロナウイルス感染症対策に係る支援税制の構築
  • 通勤手当をテレワーク環境整備に係る手当へ振り向けた際の通勤手当非課税限度額の適用。【部会提案】
  • 感染防止のための設備投資・改修、新型コロナを機に実施するテレワーク等への投資減税は、対象を個人や中小企業に限定せず、全法人に適用を。
  • ウイズコロナ時代のビジネス変革を促すため、デリバリーサービスの充実、セルフレジ等非接触化の推進、ICTによる作業省力化等を促進するため、ソフト・ハードに対する投資への特別償却、税額控除等の租税特別措置の実施。
  • 従業員対策として所得税の非課税限度額(103万円)、社会保険適用(106万円)の引き上げや、事業者支援として感染予防対策に係る消耗品購入、設備導入等に係る税額控除・一括損金算入・特別償却の確保。
  • 第4次産業革命をリードする戦略的取組によってプロセス基盤の更新サイクルが短くなる中で、令和元年度に廃止されたIoT税制や平成28年度に廃止された生産性向上促進税制をはじめ、老朽化設備の更新や安全衛生対策を含む設備投資全体に対する税制上の優遇措置の整備。
(要望団体)日本チェーンストア協会、日本百貨店協会、JEC連合
経済産業部会地方の生活に必需品である自動車の関連税制の見直し、負担軽減
  • エコカー減税、グリーン化特例については、適用対象を絞り込むことなく拡充・延長すべきで増税となる見直しには反対。
  • 自動車重量税は廃止を前提に、まずは「当分の間税率」を廃止。
  • 自動車税・軽自動車税(四輪車・二輪車等)の環境性能割を含めた税額引き下げによる負担軽減。
  • 経年車に対する自動車税・軽自動車税・自動車重量税の課税重課措置の廃止。
  • EV等とガソリン車等との課税の公平性の確保
  • 燃料課税の簡素化、及び、消費税と石油諸税の適切な調整措置(タックス・オン・タックス解消)の実施。
(要望団体)自動車総連、日本自動車会議所、日本自動車販売協会連合会、日本中古自動車販売協会連合会、日本自動車連盟、石油連盟、全国石油商業組合連合会、JEC連合
経済産業部会電力・ガス自由化が進められる中で、旧制度を前提にした税制の見直し
  • 電気供給業・一部ガス供給業における、現行の収入金額(売上ベース)を課税標準とする課税方式から、一般の事業と同様の課税方式(所得ベース)へ改定。
  • 電気供給業における法人事業税の課税標準となる収入金額の算定にあたっては、災害による被害からの復旧に関する費用に充てるために交付される「災害復旧交付金」を控除
  • (要望団体)電気事業連合会、日本ガス協会
国土交通部会地域の足を守るための安心・安全な運輸の確立
  • 安定的な交通網維持のための軽油引取税の免税措置の延長
(要望団体)JRグループ、第三セクター鉄道等協議会、定期航空協会、日本旅客船協会、日本内航海運組合総連合会、日本港運協会、日本倉庫協会
  • 新型コロナ感染症の影響が見通せず、資金繰りの厳しい状況が当面続くことが予想されることから、現行納税猶予の期限延長(再猶予)、来年度の納税猶予及び法人税、消費税、固定資産税、事業所税、登録免許税、交通関係諸税等について緊急時の負担軽減措置
(要望団体)定期航空協会、全国地域航空システム推進協議会、全国ハイヤー・タクシー連合会、全日本トラック協会、日本港運協会、日本倉庫協会、交運労協
  • 駅バリアフリーを更に進めるための、バリアフリー化工事により取得した鉄道施設に係る固定資産税、都市計画税の特例措置の期限の延長
(要望団体)日本民営鉄道協会、交運労協、第三セクター鉄道等協議会、JRグループ
  • 省エネ社会への転換に対応するため、LRVも含めた低炭素化等に資する新規導入車両に係る固定資産税の特例措置の延長
(要望団体)JRグループ、日本民営鉄道協会、第三セクター鉄道等協議会
  • 地方鉄道事業者が補助を受けて取得する安全性向上設備に係る固定資産税の特例措置の延長及び老朽化対策を講じた鉄道構造物に対する税制上の支援措置の拡充
(要望団体)第三セクター鉄道等協議会、日本民営鉄道協会、交運労協
  • JRと近接民間鉄道との接続工事が継続事業中であることなどから、トンネルの非課税措置及び都市鉄道利便増進事業により取得する鉄道施設等に係る固定資産税の特例措置の延長
(要望団体)日本民営鉄道協会、第三セクター鉄道等協議会)
  • 観光立国実現の阻害要因にもなりうる航空券連帯税の導入反対と国際観光旅客税の航空保安への充当
(要望団体)航空連合、定期航空協会
  • コロナの多大な影響を被る航空事業者の負担軽減を図るため、現在行われている航空機燃料税の軽減を継続
(要望団体)全国地域航空システム推進協議会、航空連合、交運労協、定期航空協会
  • 温暖化防止対策に取り組むのは社会的責務だが、現時点で代替動力源が実用化されていない航空産業の特性として、免税措置が講じられている諸外国の公共交通機関への対応を踏まえ、航空燃料に係る地球温暖化対策税の免除、還付措置の恒久化
(要望団体)航空連合、定期航空協会、交運労協、全国地域航空システム推進協議会
  • 営自格差の見直しによる車両の自動車税増税に反対
(要望団体)全国ハイヤー・タクシー連合会、全日本トラック協会
  • 自動車関連諸税の簡素化及び負担軽減措置の拡充、消費税と石油諸税の適切な調整措置の実施(タックス・オン・タックス解消)
(要望団体)全国ハイヤー・タクシー連合会、全日本トラック協会
  • LPGハイブリッド車をはじめとする環境性能に優れたタクシー車両普及促進のため、自動車重量税に係るエコカー減税及び自動車税に係るグリーン化特例の適用期限の延長
(要望団体)全国ハイヤー・タクシー連合会、全日本トラック協会
  • 高齢者・障がい者を含め誰もが利用しやすいバリアフリー車両普及のため、環境性能割課税の特例措置の延長
(要望団体)全国ハイヤー・タクシー連合会
  • CO2削減等の環境対策に効果的な環境低負荷船を促進するため、現行の船舶の要件の見直しをすることなく、船舶の特別償却制度の延長
(要望団体)日本旅客船協会、日本船主協会、日本内航海運組合総連合会
  • 国際船舶に係る固定資産税の特例措置の延長(このような税制は国際的には異例。本来ならば非課税とするなど抜本的な見直しを行うべき)
(要望団体)日本船主協会
国土交通部会コロナで打撃を被る観光業者等の支援
  • コロナ禍で甚大な影響を受けている宿泊施設等について、家屋、土地、償却資産に係る固定資産税の軽減措置の適用範囲を拡大及び都市計画税の負担軽減
(要望団体)日本ホテル協会、日本旅館協会
  • コロナ禍で大幅に損失を抱えている現状を踏まえ、健全経営を回復する等の観点から、欠損金の繰越控除限度額の全額控除及び欠損金の繰戻し還付制度の適用範囲の拡大
(要望団体)日本ホテル協会
  • 消費マインドが落ち込み価格競争が激しくなり、中小旅館やホテルは厳しい環境下に置かれていることから、消費税が転嫁しやすい外税表示の恒久化
(要望団体)日本旅館協会
  • 外客をはじめ旅行者が安心して宿泊できるよう、自然災害に備え予備電源の整備や改修費用など、国際観光旅客税を活用した宿泊施設に対する助成の拡充
(要望団体)日本旅館協会
国土交通部会暮らしを守るための住宅関連税制の確立
  • 都市緊急整備地域において、民間都市開発プロジェクトに係る所得税・法人税の割増償却制度、登録免許税の特例、不動産取得税、固定資産税・都市計画税の特例措置の適用期限の延長
(要望団体)不動産協会、不動産証券化協会
  • 住宅ローンの控除期間の延長及び住宅ローン減税、登録免許税・不動産取得税の特例、住宅取得資金等贈与制度等の適用要件である床面積要件(50m2以上)の引き下げ
(要望団体)全国住宅産業協会、全日本不動産協会、不動産協会
  • 土地に係る固定資産税の評価替えに関する特別措置の延長
(要望団体)不動産協会、全国住宅産業協会
  • 長期保有土地等に係る事業用資産の買換え等の場合の課税の特例措置及び新築住宅に係る固有資産税の減額措置をはじめとした適用期限を迎える各種特例措置の延長
(要望団体)全日本不動産協会、全日本不動産政治連盟
  • 住宅ローン控除制度等の要件緩和及び拡充
(要望団体)全国住宅産業協会、全日本不動産協会、不動産協会
  • Jリートのみで組成された投資信託及びETFの「つみたてNISA」対象商品への追加
(要望団体)不動産証券化協会
  • 新築賃貸住宅で一定要件を満たすもの等に対し、サービス付き高齢者向け住宅供給促進税制に係る固定資産税及び不動産取得税に対する減額措置の延長
(要望団体)全日本不動産協会、不動産協会
  • 中古住宅流通・リフォーム市場の活性化に資するため、事業者の負担軽減及び取組促進のため、不動産取得税の特例措置適用期限の延長
(要望団体)全国住宅産業協会)
環境・原子力部会生物多様性・自然生態系の保全・再生に要する費用を負担する新税制の創設

森里川海を保全・再生しつなげる取り組みを国民運動として進め、地方創生を実現するため、生態系サービスを提供する生物多様性・自然生態系の保全・再生に要する費用を、国民が広く薄く負担する新しい税制の創設

(要望団体)日本生態系協会・日本ナショナル・トラスト協会
環境・原子力部会カーボンプライシングの推進・強化
  • 生物多様性・自然生態系を保全・再生していくための税制の一層のグリーン化、特にカーボンプライシングについて、専門的・技術的な議論の促進
  • エネルギー転換・経済の転換を図る手段としてのカーボンプライシング強化
(要望団体)日本生態系協会・日本ナショナル・トラスト協会・気候ネットワーク
環境・原子力部会ナショナル・トラスト活動により取得する土地に関する固定資産税、不動産取得税、譲渡所得税の非課税措置の創設

ナショナル・トラスト活動により取得する取りに対する固定資産税、不動産取得税の非課税措置及び土地の譲渡所得税の非課税措置の創設

(要望団体)日本ナショナル・トラスト協会
ジェンダー推進本部DV被害者の生活再建にかかる非課税措置制度の導入
  • DV被害者が生活を再建する際の必要経費について非課税措置を導入する。
  • 国民健康保険税における未成年均等割を廃止する。低所得者世帯の全額免除制度を導入する。
(要望団体)一般社団法人エープラス(DV被害者支援団体)
ジェンダー推進本部性暴力被害者のカウンセリング費用の医療費控除

性暴力被害者は長期にわたりカウンセリングなど治療が必要なケースが多い。カウンセリング費用を医療費控除の対象とする。

(要望団体)一般社団法人Spring(性暴力被害当事者団体)
ジェンダー推進本部所得税法第56条廃止

事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例(所得税法第56条)を廃止する。

(要望団体)全国女性税理士連盟

※なお、今後、従来の租税特別措置ではなく、党綱領に基づく政策実現へ導く、未来へ向けたあるべき税制を構築していくことを進めるべき、との意見が農水部会よりあった。
※なお、ほとんどの産業・エネルギー関係団体より、これまでの税制に加えて炭素税等の導入によって、さらなる負担が生じることについて強く反対する、との要望を受けており、炭素税については単純導入の議論を進めるのではなく、税制全体の見直しと再構築の中で、関連業種の税負担が現状以上のものとならないことを前提に、そのあり方を議論すべきとの意見が経済産業部会からあった。

2021年度税制改正への提言(20201204公表版).pdf