日本では、介護、看護をしながら仕事をしている人は、2012年には約291.0万人でしたが、2022年には約364.6万人まで増えています(※1)。

 また、2022年に離職した人のうち「介護・看護」を理由とする人は約7.3万人、うち女性は6割強にあたる約4.7万人でした(※2)。2021年では、「介護・看護」を理由とする離職者の8割以上が女性でした(※3)。介護、看護は女性の就労に大きな影響を与えています。

 厚生労働省の2022年の調査(※4)で、介護休業制度の規定がある事業所の割合は事業所規模5人以上では72.8%、事業所規模30人以上では90.0%。一方で、常用労働者に占める介護休業者の割合は0.06%。介護休業者の男女比は女性が69.2%でした。介護休暇を実際に取得した人がいた事業者の割合は2.7%でした。

 厚生労働省が、民間に委託して2021年に行った調査(※5)では、介護離職した人に離職の前に職場でどのような取り組みがあれば仕事を続けられたかを複数回答で聞いたところ、「支援制度に関する個別の周知」が55.1%、「相談窓口の設置」が33.7%、「支援制度に関する研修」が31.7%などとなり、制度の周知や相談体制に課題があることが分かっています。

 また、介護のために仕事を辞めた理由については、「勤務先の両立支援制度の問題や介護休業等を取得しづらい雰囲気等があった」が43.4%、「介護保険サービスや障害福祉サービスなどが利用できなかった、利用方法が分からなかった等があった」が30.2%などとなっています。制度を整えるだけでなく、社会全体の意識改革や制度の見直し、サービス提供体制の拡充等が必要です。

 こうした状況であるにもかかわらず、政府は2024年4月、介護離職を増大させかねない訪問介護の基本報酬引き下げを行いました。訪問介護の基本報酬引き下げは、小規模な訪問介護事業所の倒産や人手不足に拍車をかけるため、在宅介護を受けづらくなり、介護離職を増大させるおそれがあります。こうした事態を防ぐため、立憲民主党は2024年4月9日、訪問介護の基本報酬引き下げの実質的な撤回・見直しの効果を持つ「訪問介護緊急支援法案」を提出しました(※6)。また、訪問介護以外の介護サービスにおいても、全産業平均と比べて賃金が大幅に低く、深刻な人手不足であることから、立憲民主党は同日、「介護・障害福祉従事者処遇改善法案」をバージョンアップさせて再提出しました(※6)。

 立憲民主党は、持続可能な介護制度のための介護従事者の処遇改善、介護離職ゼロに向け仕事と介護をより両立できる環境を整えます。また性別役割分業の意識を払拭するために社会のあらゆる場面でのジェンダー平等の実現を進めていきます。誰もが無理をせずに仕事と介護を両立できる社会的な環境を整えていきます。

※1)総務省「令和4年就業構造基本調査

※2)厚生労働省「令和4年雇用動向調査(2022年)

※3)厚生労働省「令和3年雇用動向調査(2021年)

※4)厚生労働省「令和4年度雇用均等基本調査

※5)「令和3年度 仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業報告書 労働者アンケート調査結果

※6)介護崩壊を防ぐため「訪問介護緊急支援法案」「介護・障害福祉従事者処遇改善法案」を衆院に提出

◆立憲民主党の考え方

介護離職ゼロ対策 

・介護離職ゼロに向けた取り組みを強化します。誰もが必要に応じて介護休業を取得できる制度への見直しを進めます。

・家族を介護する期間が長期化した場合に介護休業の通算期間を延長するなど、介護する家族の立場に立って、仕事と介護を両立できる環境を整えます。 

・介護休業を取得しやすくするため、介護休業中の賃金補償(毎月の賃金補償実質100%、ボーナスも一定程度手当て)を行います。

・在宅で介護をしている家族に対するケアを重視し、レスパイト入院(介護家族支援短期入院)など、介護する家族が一時的に介護から解放され、リフレッシュするための支援を進めます。

介護従事者離職ゼロ対策 

・介護現場の人手不足解消のために、立憲民主党が提出した「介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案」を早期に成立させます。

・全ての介護職員の賃金を全産業平均の水準に引き上げることを目指して、着実に処遇改善を行います。

介護サービス提供体制 

・地域の絆を強め、医療・介護・教育などが連携することによって、地域包括ケアシステムを拡充し、地域の「支え合いを支える」仕組みを構築します。

・「かかりつけ医」と訪問看護など医療と介護、医療および介護従事者、ケアマネジャー等との連携を強化します。

・要介護1、2の生活援助サービスを介護保険から総合事業へと移行することなど、要介護1、2の生活援助サービスを削減することがないようにします。