立憲民主党つながる本部(本部長:枝野幸男代表)とジェンダー平等推進本部(本部長:大河原雅子衆院議員)は27日午後、「コロナ禍の女性たちとつながる」と題して、国会内で合同会議を開催しました。

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 枝野代表は「立憲民主党が新しくなってから初めてのつながる本部の開催となります。『政治に私たちは見えていますか』緊急事態宣言の下で、ある学生さんから問いかけられた言葉です。思いを同じくする政治勢力がしっかりと結集して、政治家が見えていない、政治に届いていない、現場やその声を受け止め、届けていかなければいけないという思いで新しくスタートしました。つながる本部はさまざまな現場と政治をつないでいくプラットフォームです。立憲民主党のつながる本部をつかっていただいて、政治に届いていない暮らしや現場の声をお寄せいただきながら、誤りのない政策立案を進めていきたい。自治体議員のみなさんにも、ネットを通じても参加していただいています。つながる本部を通じて、国と自治体がしっかりと連携・役割分担しなければいけない。それぞれ役割分担しながら進めていきたい。コロナの下でさまざまなみなさんが厳しい状況に追い込まれ、限界を越えている方が多くいる。特にしわ寄せの多くを女性が受けている。ジェンダー平等推進本部と合同で、現場の実態を知るみなさんから話を聞かせていただきます。これからの国会活動にしっかりと活かしていきたい」とあいさつしました。

〇コロナ禍の女性たちの実情について関係団体、有識者からヒアリング

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 NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」理事長の赤石千衣子さんはコロナ禍のシングルマザーの状況の深刻さについて、食品提供事業の対象者2100人にアンケートを9月11日から12日にかけて実施した結果について報告しました。そのうえで、コロナ禍でのシングルマザーの生活苦は限界を超えているとし、ひとり親世帯臨時特別給付金を年内に追加給付を要請しました。また、共同親権制度導入は国内では夫からモラルハラスメントなどの精神的虐待を受けている女性が多いため、ひとり親世帯の親と子の生活の安定を破壊することになると指摘しました。

 自殺対策支援センター『ライフリンク』代表の清水康之さんは、「コロナ禍における自殺の動向に関する分析」の主なポイントについて(1)本年の自殺の動向は例年とは明らかに異なっている(2)本年4月から6月の自殺者数は例年よりも減少している(3)さまざまな年代において、女性の自殺は増加傾向にある(4)7月の若手有名俳優の自殺報道の影響と考えられる自殺の増加がみられる(5)本年8月に女子中高校生の自殺者数が増加している(6)自殺者数は依然として女性よりも男性が多い(7)政府の各種支援策が自殺の増加を抑制している可能性がある――などと報告しました。

 女性労働問題研究会代表・和光大学名誉教授の竹信三恵子さんは「コロナ禍で働く女性に何が起きたのか」について、3月20日、国連女性機関のプムズィレ・ムランボ=ヌクカ事務局長の発言「女性が低賃金でさまざまな役割を担うことで動いている公共・民間機能の欠陥を如実に露呈した」を紹介。3月の労働力調査で女性非正規のみが、前年同期比で29万人減少し、非正規への公的セーフティーネットの不備を問題として取り上げました。背景にあるのは「夫=セーフティーネット」という発想で、非正規女性のうち配偶者は6割に満たない現状との乖離があると指摘しました。具体的には非正規女性への社会的保護、「夫=セーフティーネット」から公的セーフティーネットへの見直し――などを提案しました。

 職場でヒールのあるパンプスの着用強制をやめるよう訴える運動 #KuToo 発信者の石川優実さんは「アルバイト先でパンプスを履くことがマナーだと指定されていたが、常に足がつらかった。個人の問題だと思っていたのが、実は性差別に関わる問題だった」と説明。尾辻かな子議員にツイートを紹介され、JALなどの航空会社や接客業で働く女性たちからたくさん反響がある一方、SNS上での誹謗中傷を経験したと報告しました。今後は2013年に始まった、暴力の根絶をダンスを通じて訴える女性解放運動「10億人が立ち上がる ワン・ビリオン・ライジング(One Billion Rising)」に参加し、日本でも大きな運動にしていきたいと語りました。

 赤ちゃんポストが前身の一般社団法人『小さないのちのドア』代表理事の永原郁子さんは若年妊娠相談について、コロナ禍で相談件数が急増しており、5月から8月までコロナ前の約4倍である120件(月平均)を超える相談があったとの報告がありました。今後の課題として、(1)隣接する土地にマタニティーホームを建築する(2)生活支援施設併設の24時間相談窓口の全国展開。そのために妊婦の生活支援の法整備と予算化(3)性教育(4)特別養子縁組、養育里親の啓もう活動などについて提案がありました。

 特定非営利活動法人『BONDプロジェクト』代表の橘ジュンさんは若年女性が犯罪に巻き込まれないように支援している活動を紹介。本年6月に実施した10~20代女性のアンケート結果について、「6割の回答者が家族・家庭について困ったことがあり、家族からイライラをぶつけられ、主婦も育児、DVなどの問題を抱えた人が多い。学生の87%が学業の心配、長い休校の不安、友人・先生に会えないさみしさ、先生に相談できないが多い。一方、いじめや不登校などの悩みが減ったを選択した人が13%いた。望まない妊娠をした人が9%いた」などと発表しました。公的機関につながりにくいSOSをいかに拾っていくか、課題を投げかけました。

 中央学院大学准教授の皆川満寿美さんはコロナ禍と女性の困難について、「非正規で働く7割が女性という状況が続いており、小売、宿泊、飲食などそうした女性が多く働くサービス業種をコロナ禍が直撃している。特別定額給付金については、非同居のDV被害者には手立てを講じたけれども、世帯主を受給権者としたため、立場の弱い女性に行き渡らない懸念がある。「エッセンシャルワーカー」という言葉が使われるようになったがその労働環境について対処されていない」などと指摘。また、女性たちの困難は突然発生したわけではないとして、国連のSDGsグループが4月に公表した文書から「パンデミックは既存の不平等を深める方向に作用する。社会、経済、政治などの既存のシステムのぜい弱さが明らかになっている」と引用。「緊急対応とともに、女性に被害をもたらす社会構造を変えなければ事態が大きく変わることはない」と税制や社会保障制度を含む構造的な問題の解決が必要だと総括しました。

○立憲民主党の今後の取組みについて意見交換

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 福山哲郎幹事長は「率直に言うと、コロナは女性の働く問題をより顕在化をさせた。そしてそのことに対する手当も緊急支援も構造的な問題もまだまだ足りない点が多い。そのことは子どもたちにも大きな影響を及ぼしている。若年女性たちの状況も含めて考えると、厳しい状況のひとり親世帯の女性の子どもたちにも連鎖する可能性が高い。その中で最も厳しい自殺という状況に追い込まれる。『よりそいホットライン』を紹介してもらったが、実は日本社会はかなり壊れているんじゃないかと思うところがたくさんある。そのことに対して政治は目を向けないといけないが、そこに目を向けるだけの細やかさが政治の場にはもてないという課題がある。みなさんのご指摘をつながる本部としても受け止めて、今の状況では政府与党にコロナの緊急要望として具体的な要請をしていく。構造的な問題に対しては、(現在検討が進められている)「第5次男女共同参画計画」に野党として声を上げていく。政権を担う時の準備として、構造問題についてどういうメニューをつくっていくかが、われわれの役割だと思っています」と決意を語りました。

 ジェンダー平等推進本部の大河原本部長は講師たちに謝辞を述べ、「過酷で壮絶なコロナ禍の女性たちの状況を私たちも受け止めたい」と述べました。ジェンダー平等推進本部では「ひとり親など支援のワーキングチーム(座長:森本真治参院議員、事務局長:打越さく良参院議員)」を設置したと報告。ひとり親などが、しっかり子どもを育て、かつ、安心して生活することができるようにするため、降りかかるさまざまな苦難から親子を守る、包み込むような手厚く切れ目のない多様な支援メニューを検討していく考えを示しました。

 徳永エリ本部長代行は選挙対策本部の副委員長の立場から「ジェンダー平等推進には女性議員を増やしていかなければいけないという声をたくさんいただいている。立憲民主党では昨年の参院選挙に少なくとも20%の女性候補者の擁立を目指し、45%の女性候補者の擁立を達成しました。1年以内に行われる衆院選挙の女性候補者は195人中28人の14%が現状。ぜひともみなさんからのご支援をいただきながら進めていきたい」と呼びかけました。

 つながる本部の逢坂誠二事務総長は「大変貴重な話を聞くことができました。2013年1月安倍前総理は所信表明で日本を世界で一番企業活動がしやすい国にすると言いました。確かにその方向になっているのかもしれないが、非正規が増えて、職の不安定な人や収入の見通しの立たない方がたくさんいます。そのことがさまざまな社会の不安を引き起こす要因となっている。菅総理も安倍政権を引き継ぐと言っている。壊れている日本の社会を気づいたところから手当をしていかなければいけない。国民の皆さんの立場に寄り添って、政策を具体的に進めていきたい」と結びました。

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