参院国土交通委員会で24日閉会中審査が行われ、立憲民主党の2番手として質疑に立った熊谷裕人議員は、(1)「GoToトラベル」事業関連(2)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大防止――について取り上げ、政府や専門家の見解をただしました。

「GoToトラベル」事業関連

 政府が14日、「GoToトラベル」を全国一斉に一時停止(12月28日から2021年1月11日まで)を決定した、その判断に至る科学的なエビデンスがあるのかを質問。あわせて、突然の決定により現場が振り回されているとして、「停止するとき、再開するにあたって、予見可能な判断基準、指標をある程度示しておいた方がいいのではないか」「より強いメッセージを発するときはより丁寧な発表が必要だ」と提起しました。

 関連事業者へのキャンセル料に関しては、「ホテルや旅館業、納入業者など関連事業者にも配分できるよう配慮する」旨の政府の答弁を受け、裾野の広いところまできちんと支援が届くのかをチェックしてほしいと要望。これに対して赤羽国交大臣は、旅行のメニューがあれば本来対象となったとされる一時的なところには明示するような制度を近々に発表したいとした上で、宿泊業者の取引先に対しては「35%から50%とキャンセル料の引き上げには年末年始の特殊性に加え、独り占めせずに長い期間付き合う顧客であり、お任せはしますが配慮してくださいと明示して支給させていただく。そこからも漏れる観光業者の方には、各地方の運輸局に相談窓口を設けるので丁寧にきめ細かく対応していきたい」と答えました。

 熊谷議員は加えて、「一番いたんでいるのはGoToトラベルに参加できない皆さん」だと述べ、申請をしている旅行業者だけでなく、観光業に特化した事業継続のための予算は考えられないのかと質問。赤羽国交大臣は「観光協会のなかで、地方創生臨時交付金のなかで必要があればメニューを作り働きかけてもらうことも含めて、運輸局の相談窓口などを通じて寄り添いながら必要な対応はしていかなければならない」との考えを示しました。

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COVID-19感染拡大防止

 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長に対しては、11月9日に緊急対策として5つのアクションを提唱したことについて、その背景には、年末年始の書き入れ時には安心して旅行ができる環境を作るために感染状況を抑えるというターゲットの設定がなされていたのかと質問。同分科会会長代理の脇田隆字・国立感染症研究所所長には、同氏が10月後半から道内で感染者が急増した理由について、政の観光支援事業「GoToトラベル」の対象に10月1日から東京発着の旅行が追加されたことで「道内の感染状況を加速させた可能性がある」と発言したことに触れ、「東京が感染を抑えなければいけないという意識があったのか」を確認しました。

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 尾身会長は「経済活動の再開や、世の中的にみんなが慣れてきて感染を上げる要素があり、なんとかバランスが取れた平衡状態が崩れるのではないかとの見方をしていた。『このままにしておくと感染拡大の要因が多くなる』と、専門家として発信するのが責任だと思ったのが11月9日のこと。その後のことは感染状況にアジャストしていくのが感染対策の常識であり、年末年始が近づきそちらにフォーカスした。飲食のことは5つの場面をそれまでも言ってきたが、そのまま言うよりもリスクコミュニケーションはターゲットが明確でないといけないので、今回は、飲食を中心にターゲットを絞ってやってきたという経緯がある。年末年始だけを考えると拡大するという予想があったので、早く警告を出させていただいた」と説明。

 脇田所長は「北海道あるいは札幌の流行株が東京由来であるか。3、4月の感染拡大はヨーロッパ由来の株だったが緊急事態宣言によってほぼ消滅した。ところが一部顕在化したウイルスが東京に残り、それが7、8月の感染の拡大につながっている。その後、北海道含めて全国に広がったのも同じ系統のものであり、東京由来と間違いないとわれわれはゲノム解析から考えている。東京の感染拡大については、移動そのものではほとんど感染を広げるリスクはないが、東京を例にとれば、東京でどんどん感染が拡大していけば当然持ち出すリスクは高くなる。移動先でどのようなリスクのある行動をとるかが問題であり、当然感染拡大した地域では移動を控えていただきたい」との見解を示しました。

 熊谷議員はまた、ゲノム解析関連予算の拡充とともに、医療がひっ迫している状況を受け、資源の集中と不安による受診抑制の解消のためにコロナ専門病院の整備や、医療従事者の人材確保のための処遇改善や慰労金の支給をあらためて求めました。

 赤羽国交大臣は、コロナ専門病院については地域の事情に応じて都道府県判断で進めていると紹介し、それに対して財政的な支援を進めていると答弁。慰労金の支給や医療機関への追加支援については「検討していきたい」と応じました。

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