衆院予算委員会で2日、2021度予算案の締めくくり質疑があり、立憲民主党の最後のバッターとして川内博史議員が質問に立ちました。川内議員は独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)が実施した新型コロナウイルスの感染拡大にともなう経済的ダメージについての追跡パネル調査に触れ、経済的弱者への追加的な給付金の必要性を訴えました。また政治・行政への国民の信頼確保という視点から、森友学園に関する財務省の行政文書の開示問題について取り上げました。

生活困窮者への経済的支援について

 川内議員は追加的な経済的給付の必要性を強く訴えました。その根拠として、昨年4-5月、そして今年の1-3月と2度の緊急事態宣言の期間を経て、対人サービスをおこなう産業が大きな経済的ダメージを受けていることや、一部地域に発出された緊急事態宣言の経済的な影響が全国に及ぶ可能性があるとして、政府に対し必要な経済的対策を求めた政府新型コロナウイルス感染症対策分科会・尾身茂会長の提言などを取り上げました。生活困窮者に対する追加的な経済的給付を求める声は、与党内にも多数存在しており、衆院では国会議員の半数以上を占めるに至っていることも指摘。「生活に困っていらっしゃる方々への給付金については、総理は『今は考えていない』と発言をされました。今は考えていないと。ただ私どもは、検討していただく必要があるのではないかと考えております」と述べた上で、川内議員は、JILPTが昨年の5月から12月にかけて実施した調査を取り上げました(JILPT「新型コロナウイルス感染拡大の仕事や生活への影響に関する調査」)。

 この日の委員会に出席したJILPTの樋口美雄理事長は、同機構が行った追跡調査の概要を説明。昨年の12月に第3回目の個人調査では、新型コロナウイルスの影響を受けて収入が減少した雇用者の割合は、全体で27.2%だったが、勤め先の業種が飲食店・宿泊業である場合に限ると53.0%、運輸業では41.0%、サービス業では33.6%と、業種によりかなり差があること。また過去3カ月の家計収支が赤字となった世帯の割合も、全体では28.7%となっているのに対し、フリーランスの場合は43.0%、非正社員では31.8%、さらに前年の2019年の世帯年収が300万円未満の世帯では43.1%と、雇用形態や世帯年収によって差が出ており、特定の業種や雇用形態等で、厳しい状況がうかがえる結果となっていること等を説明しました。

 しかしこれに対し菅総理は、今後JILPTが行う追加的調査の結果を「よく精査したい」と答えるにとどまりました。また、政府としては生活困窮者の経済支援については新たな給付金を考えていないが、他方で「緊急小口資金の限度額の拡大や返済の一部免除、住居確保給付金の支援拡充で対応している」と説明しました。川内議員は、緊急小口貸付や総合支援資金などの枠を増やしたというのは、困窮する人々にとってはありがたいことだと認める反面、JILPTの調査でも、緊急小口貸付総合支援資金を利用すると回答する人々が、全体の2.3%程度にとどまっていることなどを指摘。「枠は確保したものの、融資の実行額が伸びていないという状況だ」と、重ねて追加的な給付の必要性を訴え、このテーマを結びました。

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森友学園問題における行政情報の開示のあり方について

 政治と行政の関係、政と官の関係の構造的な問題にしっかりと対応していくためには「ゆるがせにはできない問題」だとして、川内議員は質問の後半で森友学園の問題を取り上げました。

 このテーマの冒頭、川内議員は2018(平成30)年6月4日に財務省が提出した「改ざんに関する調査報告書」を取り上げました。この中で(1)情報公開請求が行われ、実際には応接記録があったにもかかわらず、文書不存在として不開示決定をした回数(2)政府が「不適切」な取り扱いがあったとする文書は、何に照らして不適切だったのか、情報公開法(行政機関の保有する情報の公開に関する法律)に対する明確な違反であったのかを問いただしました。これに対し、麻生副総理兼財務大臣からは、不開示の決定が財務省本省で9件、近畿財務局で37件の計46件あったこと、また情報公開法に対して「不適切」な対応があったと認める答弁はあったものの、個別の開示事案についてはそれぞれ慎重に判断する必要があるとして、法律違反であったとの言質は最後までありませんでした。

 川内議員は「問題は起きるんですよね、どんな時も。人間の社会だから。総務省の問題も起こるし、農水省の問題も起こるし、財務省の問題も起こる。問題が起きた時にその問題をどう解決するかが一番大事なこと。間違いを間違いと認める勇気。その勇気こそが国民と政治行政の信頼をつなぐ唯一のよすがになると最後に申し上げたい」と述べ、質問を締めくくりました。

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