参院本会議で12日、「2021年度地方財政計画」「地方税法等の一部を改正する法律案」「地方交付税法等の一部を改正する法律案」について武田総務大臣から趣旨説明を受け、立憲民主党の吉田忠智議員が会派を代表して質問しました。

 吉田議員は冒頭、11日、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から10年が経過したことに、災害関連死を含めて犠牲となられた方々への哀悼の意を表すとともに、被害に遭われた方々、今なお避難生活をされている皆さんにお見舞いの意を表明。「避難者が戻れない、戻らない状況を打破すべく、『真の復興』に向けた新たな取り組みを今こそ改めて打ち出すべきだ。今後大きな余震も想定される。この経験を風化させることなく、復興の加速と原発に頼らないエネルギー政策の確⽴に向けて、国会としてもその役割を果たさなければならないと、皆さんと確認し合いたい」と力を込めました。

総務行政の規範と大臣の責任について

 吉田議員は、菅総理の総務大臣時代の秘書官であった長男・菅正剛氏が勤務する東北新社が総務省の幹部官僚への接待を行うことにより、衛星放送事業の許認可や外資規制違反逃れなど、東北新社への便宜供与が図られたのではないかという問題に加え、NTTの総務省への接待問題も明らかになるなか、携帯料金値下げやドコモ子会社化などで、通信行政がゆがめられたのではないかとの疑念も高まっていると指摘。「電波の許認可権を持つ役所の官僚が、⺠間事業者から接待漬けになっていた事実は看過できない」と述べ、今後の調査体制や再発防止策、自身の責任および政務三役が利害関係者の接待を受けた場合の法的、倫理的な問題等について、武田総務大臣の見解を求めました。

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 武田総務大臣は、今回の東北新社やNTTからの接待問題を受け、検事経験者のある弁護士を含めすべて第三者の有識者で構成する検証委員会を早急に立ち上げると答弁。自身の責任については、「真相究明を進めていく。今後二度と起こらないよう、先頭に立ち、総務省一丸となって国民の信頼回復に努めることで大臣としての責任を果たしていきたい」と決意を述べるだけで、これまでの調査の不備や、NTTとの会食の有無等については何ら答えませんでした。野田聖子、高市早苗両衆院議員が総務大臣時代にNTT幹部から高額接待を受けていたとの報道については、「報道は承知しているが、事実関係については把握していない。政務三役は特別職の国家公務員であり、倫理法令の対象ではないため、仮に在任中の話だったものでも倫理法令による調査の対象にならないものと考えている。大臣規範の趣旨に抵触するか否かは、自ら適切に判断し対応すべきものだと考える」と無責任な答弁に終始しました。

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ワクチン接種体制

 新型コロナウイルス・ワクチンの接種体制をめぐっては、地方自治体は政府の情報発信の迷走の中、混乱しているとして、全国の県や市町村の声を紹介。なかでも最も多かったのは「実現不可能なワクチン量を前提とした、実現不可能な予防接種の開始時期を周知するのではなく、安定的な供給が可能となる時期まで待って、予防接種を開始するようにしてほしい」との声だったと述べ、高齢者への優先接種分のワクチン提供量と提供日時の問い合わせに対し、厚労省が「正確なワクチン配送日は配送の数日前にお知らせする見込みです」と回答していることを問題視。こうした現状に対し、「国としてどのような改善点があるか。医療従事者の確保について、国として責任を持って地域の医師会にまで強く働きかけるべきではないか」とただしました。

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 しかしながら、河野大臣からの答弁は「4月5日の週から都道府県に順次送付、12日の週から高齢者への優先接種を始める。6月末までに高齢者全体のワクチンを配送する見込み。今後新たな情報が確定次第、自治体に速やかにお知らせする」と従来の答弁を繰り返すのみで、自治体からの要望に応えるものではありませんでした。また、ワクチン接種にかかる経費に関しては「合理的に必要と考えられる接種の費用については、国が全額負担することとしている」と答えました。

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 吉田議員はまた、マイナンバーを使った新たな予防接種システムの構築については、平時に慎重に議論すべきであり、有事とも言える現在の状況での拙速な導入は見送るべきだと主張。加えて、今回政府が検討するシステムは、マイナンバー法で認められている「特定個人情報の利用は地方自治体の中でのみ」ではなく、自治体の外のシステムでの利用となり、マイナンバー法違反になると指摘しました。

地方自治の本旨とデジタル改革の前提

 吉田議員は菅政権のデジタル化政策について、「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律案」は標準化を義務とし地方自治体の選択の余地がないこと、「デジタル社会形成基本法案」でも自治体への押し付けともいえる強引な規定が散見されることなどを挙げ、「『地方自治の本旨』への理解を欠いている」と批判。第32次地方制度調査会が昨年6月26日に総理に提出した「2040年頃から逆算し顕在化する諸課題に対応するために必要な地方行政体制のあり方等に関する答申」では、「国・地方を通じた行政⼿続きのデジタル化」について「地方公共団体が、合理的な理由がある範囲内で、説明責任を果たした上で標準によらないことも可能とすることが必要である」と提言していることに触れ、「標準によらないことも可能とする」との理解でよいかを確認しました。

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 また、「⼼配されるのが個人情報保護」とも述べ、自治体がこれまで⻑年にわたって住⺠と対話しながら築き上げてきた、個人情報保護の歴史や意義をないがしろにされ、地方の独自性を失い、個人情報の保護レベルが低下するのではないかと指摘、自治体の条例制定権、「データ主権」の観点から大いなる疑念を持つと述べました。

 これに対し武田大臣は、今回の法案は「対象を『情報システムによる処理の内容が、過去地方公共団体において共通し、かつ統一的な基準に適合する情報システムを利用して処置することが住民の利便性および地方公共団体の行政運営の効率化に寄与する事務』に限定した上で標準に準拠したシステム利用を義務付けるものとしている」などと説明。個人情報保護については、「条例による個人情報保護措置を踏まえつつ、全国的なルールを規定したものだが、改正後も法律の範囲内で条例により最小限の独自の保護措置を講じることは可能としている」などと答弁、吉田議員の懸念に応えるものではありませんでした。

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地方財政改革

 地方財政計画と地方税、地方交付税については、「2021年度の地財対策は、新型コロナの影響で大幅な財源不足が見込まれるなか、あらゆる地財対策を動員し、交付団体ベースで前年度を上回る一般財源総額を確保したものの、一般会計からの実額負担よりも、交付税総額からの控除要因を後年度に先送りにした対策が目⽴っており、当座の財源不足を凌いだ対策だ」「臨時財政対策債についても、2014年度とほぼ同額だが、当時と比べて今回は既往償還分の占める割合が高くなっており、臨財債の残高も増加している。後年度の一般財源確保の余地を考えると、地財対策の内容はもはや限界と言える」などと指摘。「経済財政運営と改革の基本方針2018(骨太方針)」 では、一般財源確保総額ルールを2021年度まで、国・地方折半ルールも22年度限りとなっていることから、「これを機に、事項要求に留めてきた『法定率の引上げ』を含む、抜本的な地方財政改革に進むべきだ」と提案しました。

 吉田議員は最後に、「質より量の公共事業や、前のめりの上からのデジタル改革を推進することよりも、まず、人々が社会経済活動にいつでも安⼼して復帰したり、接近したりできるよう、居住、教育、保健福祉、公共交通などさまざまな生活保障の経費を充実させるための真に骨太な抜本的地方財政改革に取り組むべきだ」と求めました。

【参院本会議】知財計画、地方税法、地方交付税法質問原稿(予定稿)吉田議員 2021年3月12日.pdf

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