衆院本会議で12日、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定」(略称:在日米軍駐留経費負担に係る特別協定)について、趣旨説明と質疑が行われ、「立憲民主・無所属」会派を代表して、党外交・安全保障・主権調査会長を務める篠原豪議員が登壇しました。

 茂木外務大臣より、在日米軍駐留経費の日本側負担について、2月24日に日米両政府(茂木外務大臣とアメリカのヤング駐日臨時代理大使)が負担の根拠となる特別協定を1年延長するための改定議定書に署名したとの報告がありました。

 篠原議員は冒頭、総務省違法接待問題について、「NTTから接待、会食の存否について所管大臣が明らかにする事は当然の責務だ」と述べ、武田総務大臣に端的な答弁を求めました。武田大臣は「国民に疑念を抱くような会食、会合に応じた事はございません」とこれまでの答弁を繰り返すにとどまりました。

 篠原議員は(1)米軍駐留経費負担の正当性(2)負担割合の問題(3)日本側負担の交渉原則(4)米軍駐留に伴う国民負担を軽減する必要性――など、在日米軍駐留経費負担を巡る基本的な問題について考えを述べました。その上で、政府に「日米地位協定の見直し」と「辺野古の新基地計画の再検証」を在日米軍駐留経費負担に関する日米協議の俎上(そじょう)に上げるべきだと提言しました。

(1)米軍駐留経費負担の正当性
 「専守防衛」と同時に「日米同盟」をわが国の外交・安全保障政策の基本と考えており、特に近年、日本周辺の安全保障環境が厳しさを増していることを考慮すれば、米軍のプレゼンス確保は日本の防衛に欠かせないと主張しました。
 篠原議員は、「戦後、日本の防衛予算が国内総生産(GDP)比で1%を下回ってきたのも在日米軍の存在が大きい。さらには、自衛隊と米軍が盾と矛の関係、つまり憲法との関係で、たとえ自衛のために必須な行動であっても、自衛隊が他国領域内で武力行使を目的とした軍事作戦を展開することを回避することが従来の政府方針であることを想起すれば、米軍の駐留経費をある程度負担することに憲法的な正当性がある」との考えを示しました。
 従って、在日米軍駐留経費の負担に関して最も大切なことは、米軍の抑止力、特に、矛としての信頼性を確かなものとすることであり、それによって日米同盟が最大の効果を発揮できるようにすることであると説明しました。
 最近、問題なっている敵基地攻撃能力の問題について、「ミサイル攻撃に対する米軍の抑止力としての信頼性が確かなものであれば、起こりようがない。また、尖閣諸島を巡る問題も、米軍が同盟の役割を果たす姿勢を明確にすれば、事態が大きく改善されるのではないか」との考えを示しました。

(2)負担割合の問題
 2021年度以降の在日米軍駐留費の日本側の負担については「米国側の政権交代を機に、3月末で期限切れとなる現行協定を1年延長することに合意し、2022年度以降の4年分の負担額については、腰を据えて今年改めて交渉し、年内の合意を目指す」べきだと主張しました。
 また、日本の負担割合について、「防衛省の試算では、2015年度の日本側の負担割合は8割を超え、韓国やドイツなど他の同盟国に比べて突出して高いと言われている。そのために、わが国は、日米地位協定で米国が負担することになっている在日米軍の駐留経費を日本が肩代わりする形で、労務費や光熱水料費を負担してきたわけですが、この方式では、費目をこれ以上増やす余地はないのではないか」とただしましたが、外務大臣から明解な回答はありませんでした。
 さらに、米政府の18会計年度に示された、在日米軍の米側経費は、約53億ドル(約5565億円)で、その内、一番の人件費が約29億ドル、約3045億円と大半を占めており、以下、作戦維持費、基地建設費、米軍家族の経費となっていることを考えると、それを日本側が負担することは、正当性に乏しいのかと指摘しました。

(3)日本側負担の交渉原則
 日本側の負担について「地位協定を根拠とするわが国の負担は限界に達していると考える。他方で、米国が負担増を求める流れは変わらず、バイデン政権も日本側に増額を求めていると言われている」と懸念を示しました。
 これまでの「思いやり予算」をめぐる日米交渉を振り返り、思いやり予算額が減少に転じた理由は、日本が財政的な支援だけでなく、自衛隊による人的な貢献にも踏み込んだことが一因だと考えるとした上で、2022年度以降の4年分の負担額を交渉する際は、「人的な貢献についても評価に含めることを交渉原則として算定すべき」だと主張しました。

(4)米軍駐留に伴う国民負担を軽減する必要性
 在日米軍を支援する関連経費には、地位協定第24条第2項に基づいて支払われる義務的な経費及び「思いやり予算」とは別に、SACO関係経費や、沖縄の米海兵隊のグアム移転費を含む米軍再編関連経費があり、その米軍再編関連経費の額は、2021年度には2044億円にもふくれ上り、思いやり予算とほぼ同額になっていると説明しました。そして、「 SACO関係経費と米軍再編関連経費は、米軍の日本駐留がもたらす負の側面、とりわけ、米軍基地が集中する沖縄への対応が極めて大きな問題になっている」ことを物語っていると懸念を示しました。
 過重な米軍基地負担に苦しむ沖縄県が在日米軍にさまざまな特権を認める地位協定の改定を長年にわたって求めてきており、その「基地問題は一都道府県の問題ではない」という沖縄の切実な訴えを受け、全国知事会は、日米両政府に地位協定の抜本的な見直しを提言してることを取り上げました。
 篠原議員は、「在日米軍駐留経費の負担の目的が『日米同盟の強化』にあるならば、国民の支持を確かなものにすることも最重要事項であり、その意味で、日米地位協定の見直しを、在日米軍駐留経費負担に関する日米協議の俎上(そじょう)に上げるべき」だと主張しました。
 さらに、辺野古の新基地計画について「いつ完成するか、本当に完成するのかすら分からず、莫大な国費を投入して工事を続けることは、当面の大きな課題となっている中国に対する安保政策として好ましいとはとても言えない。バイデン政権の下で、インド太平洋軍が新たな対中戦略を提起している今こそ、両政府が沖縄県を交えて、打開策の検討に乗り出すチャンスだ」と訴えました。
 篠原議員は、「沖縄の負担軽減が日米同盟の強化に不可欠なことは、日米の共通認識。政府におかれては、純粋に戦略的な観点から辺野古の新基地計画の再検証を行うことを、日米協議の場で提起するよう誠心誠意、要望いたします」と求め、質疑を終えました。

在日米軍駐留経費負担に係る特別協定趣旨説明への質疑 篠原豪議員(予定稿).pdf

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