参院本会議は21日、「少年法等の一部を改正する法律案」の採決前に討論をおこないました。立憲民主・社民からは、真山勇一議員が登壇しました。真山議員は、「改正の理由が全く見いだせない」という理由で反対を表明しました。
本法案は、成年年齢の引下げ等の社会情勢の変化及び少年による犯罪の実情に鑑み、年齢満18歳以上20歳未満の特定少年に係る保護事件について、ぐ犯(虞犯:罪を犯すおそれのある者)をその対象から除外し、原則として検察官に送致しなければならない事件についての特則等の規定を整備するとともに、刑事処分相当を理由とする検察官送致決定がされた後は、少年に適用される刑事事件の特例に関する規定は、特定少年には原則として適用しないこととする等の措置を講ずる必要があるという理由で提出されました。
真山議員は、法案改正理由の1つに「少年による犯罪の実情」が挙げられていることに触れ、現行の少年法が非常に良く機能しており、少年犯罪や凶悪犯罪が激減していて状況が大いに改善しているのに「なぜ、わざわざこれを後退させるのか、まったく理解に苦しむ」と述べました。
本法案の大きな柱として挙げられる18歳、19歳を「特定少年」として現行法の対象と区別することについては、この年代の少年が適応力があり、更生や教育の効果が高く、また人間の脳が25歳頃まで発達を続ける研究結果があることに触れ、「むしろ、少年法の適用年齢を引き上げ、更生と教育の取組みを強化するならわかるが、その逆をやる理由はまったく道理に反している」と反発しました。
もう1つの改正理由である「成年年齢の引き下げ等の社会情勢の変化」があることについて、「これが今回の改正案といったいどんな関係があるのか、最後まで明快な答えは示されませんでした」と指摘。成人として参政権などの権利行使が認められることと本人の健全育成のために国家が必要な措置をとることは「全く別問題だ」と述べ、「国家として更生及び教育に力を尽くす方が、むしろ現行の法体系と矛盾なく整合する」と述べました。
また、真山議員は、「特定少年」が検察に逆送致され、原則「短期一年以上」の刑にあたる事件が一律に検察への逆送の対象になることに「これは現行の『故意による被害者死亡』の場合から大幅に拡大されるもので、極めて広い範囲の犯罪が含まれる」と懸念しました。
真山議員は、本法案で「特定少年」が公判を請求された時点で実名での報道が認められることについて「その理由はまったく不明」と指摘しました。このことが少年犯罪への抑止効果があるわけではなく、審理の結果、無罪になる可能性も否定できず社会復帰を支援する家族にも困難をもたらすと疑問を呈しました。被害者本人と遺族の心情や生活の立て直しに配慮するためにも、「加害者の実名報道を推進するのではなく、被害者側についての報道の抑制を検討すべきだ」と提案しました。
さらに、「特定少年」からぐ犯を除外することも問題だと指摘。司法の現場に携わる人々にとって、ぐ犯とする家庭裁判所の司法手続きは選択肢として極めて有効であり、セーフティネットの役割を果たしているという主張があることを紹介。特にぐ犯の女子少年には虐待や精神疾患などの切実な問題があることも多いと述べ、「具体的な代替策を創設することなく、一方的にぐ犯から除外するのはあまりにも乱暴で無慈悲」と強調しました。
その他にも、「特定少年」に不定期刑が適用されなくなること、社会復帰をした後、仕事を探す際の資格制限排除の特例が適用されなくなることを問題視しました。現行法が資格制限からできるだけ早く解放し、本人の更生を助けることを目的にしているにもかかわらず、撤廃により「特定少年」の将来の選択肢が狭められると懸念。このような法案を提出した法務省に「厳密な検討をせずに本改正案を提出したのです。なんという怠慢でしょう」と述べ、「本改正案は、少年の立ち直りや更生保護を大きく後退させ、菅政権が国民の命や人生を軽んじていると言われてもしかたない内容だ」と締めくくりました。