参院厚生労働委員会で5日、閉会中審査がおこなわれ、「立憲民主・社民」会派から川田龍平議員が質問に立ちました。

■「黒い雨判決を受けての対応」と「戦没者遺骨DNA鑑定の広報のあり方」について

 川田議員は、76回目の終戦記念日を迎えるにあたり、原告全員を被爆者と認めた広島高等裁判所の判決が確定した「黒い雨訴訟」判決に対して、政府が7月26日、最高裁判所への上告を断念する方針を決め、27日に閣議決定した 「内閣総理大臣談話」で「84名の原告の皆さまと同じような事情にあった方々については、訴訟への参加・不参加にかかわらず、認定し救済できるよう、早急に対応を検討する」としたと政府の対応に言及しました。その上で、「高齢化が進む被爆者救済の観点から、原告だけでなく、原告と同じように黒い雨を浴びた人たち、そして、広島だけでなく長崎で原爆の被害にあわれた方々も、高裁判決と同じ水準で救済する枠組みをつくることが必要だ」と主張しました。

 続いて、戦没者遺骨のDNA鑑定について、 厚労省は今年10月から、遺留品などの手がかり情報のない戦没者遺骨の身元特定のために、地域を限定せずにDNA鑑定を実施する予定で、これに先立ち、沖縄、硫黄島、キリバス共和国のタラワ環礁(かんしょう)で収容された遺骨について試行的にDNA鑑定を実施し、これまでに、タラワ環礁の2柱と硫黄島の2柱について、ご遺族との間で身元が特定されたと説明し、重要なのは広報のあり方だと問題提起しました。

 川田議員は「黒い雨判決を受けての対応」と「戦没者遺骨DNA鑑定の広報のあり方」について見解をただすと、田村厚生労働大臣は、黒い雨判決を受けての対応について、原告の方たちへの被爆者健康手帳を配布し、原告と同じような事情の方たちにも地方自治体と連携していく考えを示しました。戦没者遺骨DNA鑑定の広報のあり方については、「地域を拡大し、全国紙やブロック紙にあわせて、遺族会の機関紙、地方自治体や介護施設の広報誌を幅広く活用していきたい。遺骨がご遺族の元に戻るよう対応していきたい」と答弁しました。

■ワクチン接種による副反応について

 川田議員は「感染者が急増している地域では自宅療養を原則とし、入院は重症者や重症化の恐れが強い人に限るという。中等症の人はいったいどうなるのか。これでは自宅療養ではなく、自宅放置です。政府は国民の健康、生活、そして命を、いったいどのように考えているのか。憤りがわいてきます」と政府の無責任な姿勢を強く批判しました。

 川田議員は厚生労働省に死亡例と重篤例の件数およびワクチンとの因果関係の評価結果についてただしました。
 厚生労働省は8月4日現在の結果(令和3年2月17日から対象期間の7月25日まで)について、以下のとおり説明した上で、現時点では、ワクチンとの因果関係があると結論づけられた事例は認められなかったと報告しました。

 ファイザー社ワクチンの副反応疑い報告は7414万回接種中19,202例、医療機関から報告された重篤例は3254件、ファイザー社から報告された重篤例は8751件。死亡例は828例。

 モデルナ社ワクチンの副反応疑い報告は360万回接種中903例。医療機関から報告された重篤例は84件、モデルナ社から報告された重篤例は242件。死亡の報告は6件。

 川田議員は「副反応疑い報告の内容については、厚労省のホームページで積極的に公開されているが、SNS等では『ワクチン接種後に死亡しても、因果関係を認められず、補償を受けられない』というような誤った情報も見受けられる」と懸念を示し、健康被害救済制度について正確な情報発信を要請しました。

■治療薬について

 政府が8月2日の関係閣僚会議で、入院患者以外にも使用できるようにする方針を示した治療薬「抗体カクテル療法」の投与の対象と進め方について、厚生労働省に確認しました。

 厚生労働省は投与対象は重症化リスクのある酸素投入の必要のない中等者患者で、具体的な使用実績は中外製薬株式会社との秘密保持契約があるため詳細は控えるが、50代以上や基礎疾患のある方に積極的に投与し、在宅患者を含めた取り組みを実施していく考えを示しました。

 川田議員は軽症や中等症の患者の重症化抑制が期待されているとし、厚生労働省に「抗体カクテル療法」の提供体制を整備するため、医療機関に「抗体カクテル療法」の在庫確保を認めるよう、要請しました。

 イベルメクチンの活用について、厚生労働省は北里大学が治験を実施し、興和株式会社が臨床試験の開始を発表。これらの治験結果をふまえて、将来的に承認申請があれば、医薬品医療機器総合機構(PMDA)において審査する考えを示しました。

■デルタ株の感染防止のための空間除菌について

 デルタ株は感染力が強く、飛沫だけでなく、エアロゾルを吸引することによる空気感染にも注意しなければならないという指摘があると述べ、厚生労働省に次亜塩素酸水の安全性について、見解をただしました。厚生労働省は次亜塩素酸水の安全性を食品添加物としては認める一方、消毒や除菌に使用される場合に人体への影響が異なるため、安全性の確認が必要という考えを示しました。

 川田議員は田村厚労大臣に「感染を拡大させないために、空間除菌も含め、できることは何でもするという姿勢をもって感染防止対策に努めるべきだ」と進言しました。

 最後に、パルスオキシメーターの普及について、貸与だけではなく、一家に一台検査できるような体制の整備を求め、質疑を終えました。

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