衆院厚生労働委員会で25日閉会中審査がおこなわれ、立憲民主党の4番手として質疑に立った尾辻かな子議員は、新型コロナウイルスの感染が全国的に急拡大するなか、24日東京パラリンピックが開幕したことを問題視。国民に対し誤ったメッセージを与えかねないと指摘し、大会中断も検討すべきだと訴えました。

 尾辻議員は冒頭、同日夜には、政府は緊急事態宣言の対象に8道県を追加、対象地域が21道府県に広がることにも触れ、今回の第5波では感染者数、重症者数は過去最大となり医療はひっ迫、感染爆発とも言える状況のなか、国会を閉じていていいのかと改めて提起。「野党は憲法53条に基づき国会開会を求めている。このまま(政府・与党が)応じないことは、政府や政治に対する信頼が失われてしまう」と臨時国会の開会を求めました。

 その上で現在の感染拡大の状況について、コロナ感染陽性者による自宅療養者数、療養先調整中の人数が合わせて約13万人(8月18日時点で自宅療養者数9万6857人、調整中が3万1111人)に上っているとして、「保健所がパンクして濃厚接触者を追えない状況で、今までの自宅療養者に比べて明らかに症状のある方が自宅療養している。東京都内だけで8月に入って12人の自宅療養死のニュースが報道されている。にもかかわらず、昨日(24日)からパラリンピック大会が始まった。自宅療養というより自宅放置という状況のなか苦しんでいる皆さんは『パラリンピックをやる余裕があるのなら、命を救ってほしい』との思いだろう」と述べました。

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 国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が「銀ブラ」した際、丸川五輪担当大臣が「不要不急であるかということは、ご本人が判断すべきもの」と擁護するような発言をしたことや、23日には都内で菅総理や小池東京都知事が参加するなか、約40人で国際パラリンピック委員会(IPC)のパーソンズ会長らの歓迎会が開かれたことなどにも言及。「どういうメッセージになるのか。矛盾だらけではないか」と政府の対応を批判し、尾身会長の見解を尋ねました。

 尾身会長は、「昨年4月の1回目の緊急事態宣言発令時との最も大きな違いは、人々の意識。私たちが再三申し上げたのは、オリンピック・パラリンピックの開催がどういうメッセージを発し、人々の意識にどう影響するかということ。例えば今、テレワークを要請しているときに、バッハ会長のあいさつがなぜオンラインでできないのか。小学校での観戦では、問題の本質は感染が起きるか起きないかの問題ではなく、そのことがどういうメッセージになるかということ。国民にお願いするのであれば、オリンピックのリーダー、バッハ会長はなんでわざわざ来るのか。ふつうのコモンセンスならできるはず。専門家というより一般の庶民としてそう思う」などと述べました。

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 尾辻議員は、パラリンピックの選手約88%がワクチンを接種している一方で、日本国内では障がいのある方や、障がい者施設ではワクチンの接種がまだ受けられていない方が大勢いるとして、そちらを優先すべきだと主張。また、オリパラ全体で約7,000人とされる医療関係者のうち3分の1程度がパラリンピックに従事することも政府に確認し、「優先順位がまったく違う。今苦しんでいる、救急車を呼んでも搬送先のない、三次救急は応需率(救急指定病院における、救急車の受け入れ率)は1割を切っている状況。感染拡大が止まらないのであれば中断も視野に入れるべき時に来ているのではないか」と訴えました。

 これに対し、政府は「コロナ対応に従事していないスポーツドクターや潜在看護師を中心に組織委員会で確保してきている」などと強弁。尾辻議員は、田村厚生労働大臣と小池都知事が、改正感染症法に基づき都内すべての医療機関に病床確保や人材派遣を要請、患者を受け入れていない診療所などにも、医師や看護師の派遣を求めているとも述べ、こうした緊急事態のなかでのパラリンピック開催に「矛盾のかたまりだ」と断じました。

 「もしパラリンピック選手がけがをした場合、どのようにして入院させるのか」と尋ねると、政府の担当者は「組織委では東京大会における指定病院都内9カ所、都外20カ所の病院にご協力いただいていると聞いている。医療機関の意向も聞きながら丁寧に調整を進めていくことと承知している」などと答弁。尾辻議員は最後に、田村厚労大臣に対して「東京都内の医療がひっ迫している状況のなか、国民の命を守る大臣として、いまパラリンピックをやるべきなのか政府内で検討してほしい。何を優先すべきなのかが問われている」と訴え、質問を終えました。

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