参院厚生労働委員会で26日、閉会中審査がおこなわれ、「立憲民主・社民」会派から田島麻衣子議員が質問に立ちました。
田島議員は、菅総理が25日の記者会見で「明かりがはっきり見始めている状況」と発言したことについて、「数字を見る限り、まったく明かりが見える状況とは思えない。9月12日までに新型コロナウイルスの状況を改善できるのか」と政府分科会の尾身会長に認識を尋ねました。尾身会長は「今の状況で一番大切なのは、医療のひっ迫がどれほど軽減されるかを基準に考えていくべき」と答弁しました。
また、全国知事会が全国への緊急事態宣言の発出を要請していることを取り上げ、それを受け入れず、区域変更を12道府県に限定した理由を尾身会長に尋ねました。尾身会長は分科会で全国への宣言発出について反対意見はなかったが、より効果的で効率的な対策を講じることがコンセンサスだったと説明しました。
田島議員は厚生労働省が発表している「療養状況等及び入院患者受入病床数等に関する調査」の推移を昨年5月21日から時系列でまとめた図(上記、資料1)を示し、「自宅療養者数は新規感染者の拡大と同じような動きをしている一方で、宿泊療養施設の病床数や入院の病床数の伸びが追いついていない。病床はなぜ増えないのか」尾身会長に見解をただしました。尾身会長は「日本の多くの民間病院は高齢化社会に対応する慢性疾患にシフトし、すべての病院にICUや呼吸管理ができるようなシステムが整備されていない。出来るだけ一般医療を制限して、コロナ医療に関与していただきたい」と説明しました。
田島議員は厚労省の発表を引用し、現在自宅療養者は9万7000人、療養調整中は3万1000人に上っていると説明し、「政府が臨時の医療施設や野戦病院型施設をつくっていく場合、どのくらいの病床数を確保していくべきか」尾身会長に確認しました。尾身会長は具体的な病床数について明言を避けましたが、「現状では臨時の医療施設をつくっていかないと対応できない。これから重症者の患者は増えていく。自治体や国の長が決断していくべき」と警鐘を鳴らしました。
田島議員は新規陽性者の感染場所は、自宅が約4割と最多で、飲食店での感染は少なくなっていると説明しました(上記、資料4)。同居家族への感染を防ぐため、「これまで厚生労働省は『入院させることができない場合には自宅療養を基本とし、例外として宿泊療養を活用する』としていた方針を撤回し、『原則は宿泊療養、例外的な場合だけ自宅療養とする』と転換すべきではないか」と田村厚生労働大臣に進言しました。田村大臣は日本は感染者の入院率は10%、イギリスの2%やフランスの5%やアメリカの6%と比べると高く、日本は病床で対応していると強調した上で、家庭で感染が拡大する恐れがある感染者を優先して宿泊療養で対応していく考えを示しました。
新型コロナウイルスに感染した妊婦の保護について、田島議員は「妊婦の配偶者も優先的にホテル等の宿泊施設に療養させることができるか」と田村大臣に確認しました。
臨時医療施設の確保について、田島議員は「日本国民の命を救うために、いつまでに臨時の医療施設をどのくらいつくっていくのか」田村大臣にただしました。田村大臣は13都道府県(北海道、東京都、神奈川、千葉、山梨、茨城、石川、広島、奈良、岡山、長崎、福岡、沖縄)で19施設を予定していると説明。各都道府県と連携し、病床の使用率、医療の人材・資源の効率的な活用を検討していく考えを示しました。
田島議員は厚生労働省が事務連絡でこれまでの人材の配置基準を緩和していると述べ、一般医療に影響のない形で臨時の療養施設をつくっていくことは可能だという認識を示し、福井県や日本財団の取り組みについて説明しました。
その上で、田村厚労大臣に「都道府県知事に要請しながら数を増やしていくのではなく、これだけ病院に入れない国民がいる中で、国のリーダーが何床確保すべきか、ゴールを示すべきではないか」と強く迫りました。田村厚労大臣は認識を共有していると答弁しながらも、国による臨時療養施設の増設について明言を避けました。田島議員は「予算もしっかりつけていくべき。そのためには国会を開くべき。入院できずに命を落とす方がいる中で、あまりに楽観的だ。もっと誠意をもってやっていただく必要がある」と田村大臣の姿勢を批判しました。
野戦病院型療養施設やホテル療養施設等の臨時施設で確保されたベッドに実費の支払いしかなされてないことから、簡易ベッドにも予算やインセンティブをつけていくべきではないかと田村厚労大臣に進言しました。また、「予算繰り越し金30兆円が余っている。今国民が必要なところに大胆に予算をつけていくべきだ」と機動的な予算措置を強く求めました。
野戦病院型療養施設やホテル療養施設等の臨時施設で働く医療従事者に感染症法第16条の2(協力の要請等)を適用すること、またその場合、「正当な理由なく当該協力の求めに応じなかったとき」の解釈について、医療機関からの協力を得られるよう、「正当な理由なく」の見直しを田村大臣に提言しました。
田島議員は田村大臣との質疑を振り返り、「本当に楽観的で、真剣さが足りない。災害レベルの状況を本当にわかっているのか。国会を開いて、国民の命と健康を守っていく方法について、予算措置も含めて議論していくべき」と主張し、質疑を締めくくりました。