「結局、自民党では変わらない・変われないということが明確になっている。有権者に対し、『支え合う日本』そして『まっとうな政治』に、共に『変えよう。』というのが、全体を通しての呼びかけの中身だ」(枝野幸男代表)。
枝野幸男代表は13日、都内で会見を開き、立憲民主党の次期総選挙に向けた政権政策「政権政策2021」を発表しました。
立憲民主党「政権政策2021」.pdf(PDF形式)
今回の政権政策の主なポイントについて、枝野代表から以下のような説明がありました。
■「政権政策2021」の表紙とコアメッセージについて
この総選挙に向けて発表したポスターと基本的な同じデザイン、そして「変えよう。」というスローガンを示させていただいております。ポスターの発表の後、自民党総裁選挙等もあり総理も変わりました。相手の総大将は変わった状況でありました。いろいろな対応を考えなければいけないと思わなかったわけでありませんが、結局、自民党では変わらない・変われないということが明確になっております。当初の方針通り「変えよう。」というスローガンのもとで、この政権政策についても準備をさせていただきました。
すでにいくつかのところで申し上げておりますが、「変えよう。」というのがポイントで、「変えます」とか「変えたい」ではないというのが1つのメッセージです。「変える」のは、私たちではありません。このパンフレットをお読みいただく、政権政策をお読みをいただく有権者の皆さんが「変える力」を持っている。そうした皆さんに「変えよう。」と呼びかけをさせていただくことが、まず全体としてのわれわれの思いでございます。
どう変えるのかといえば「支え合う日本へ」、そして「まっとうな政治」に変えようという呼びかけが、全体を通しての呼びかけの中身でございます。
パンフレットの1、2ページ目には私からのメッセージ、そして現状の日本の置かれている状況についての客観的なグラフ等も載せさせていただきました。1つには、この新型コロナウイルス感染症に対応できていないという状況、これを「『表紙』だけ変えては、変わらない」という私からのメッセージ。そして日本の経済、アベノミクスが成功していないこと。富の偏在をもたらし、貧困・格差を生んでいること、そして女性の社会参加が進んでいないこと――こうしたさまざまな現場の問題点を示させていただいた上で、全体で7つのテーマに分けさせていただきました。
1.新型コロナ対策と危機管理
1番目には、やはり「新型コロナから『命と暮らし』を守り抜く」。これは足元の新規感染者の数が減っているとはいえ、医療体制の強化と集中的な感染防止、そして強力で広範な生活と事業の支援をしていかなければならないということです。これについて、何かこれから岸田総理は案をまとめるよう指示しているということでありますが、具体的なわれわれの政策を示させていただいております。
また危機管理ということ。あるいは国民の皆さんに大きな被害、影響を与えた災害という意味では、この項目の中で、東日本大震災と原発事故からの復興についても示させていただいております。
2.経済対策――「1億総中流社会」の復活
2つ目はアベノミクスの失敗。これを転換しなければならないということで、「『1億総中流社会』の復活」を掲げさせていただいております。まさにこの3日間の代表質問でも違いが明確にできたと思っておりますが、われわれは「分配なくして成長なし」。(岸田総理の言う)「分配と成長の好循環」というのは、安倍・菅政権、アベノミクスと全く変わっておりません。
そもそも成長していない原因が、富の偏在、適正な再分配がおこなわれていないことにある。この明確な「認識」と「対応策」の違いは、代表質問を通じてはっきりしたと思っております。具体的にはこの間、代表質問等でも示させていただきました、具体的、かつ適正で公平な分配。そしてこれに加えて、弱ってしまってきている中長期的な研究開発力の復活など。そして単に国民の皆さんに分配をするのではなく、再分配が必要であると。この間、アベノミクスの恩恵を受けてこられた、いわゆる既得権をお持ちの皆さんには、応分の負担をお願いをすることについても具体的に示させていただいております。
3.自然エネルギー立国「原発に依存しないカーボンニュートラル」
3つ目の項目が、自然エネルギー立国であります。「原発に依存しないカーボンニュートラル」を大きく掲げさせていただいたところでございます。自然エネルギー立国は、実は昨年9月、結党直後の本会議で、私自身も高く掲げさせていただいたところであります。すでに「原子力エネルギーからの脱却を目指す」ことは、大きな大きな方針として、多くの皆さんにご理解をいただいていると思っております。それに加えて自然エネルギーをしっかりと増やしていく。そのことは単なるエネルギー政策にとどまらず、地域の活性化にもつながっていく。 そして第1次産業の多面的な機能と自然エネルギーの活用とをしっかりとリンク、連動させることによって、現実的で実効性ある地域社会が作っていけると、この自然エネルギー立国の項目で、パッケージとして示させていただいています。
4.暮らしの安心への投資
4つ目は、「暮らしの安心への投資――『人と暮らし』に重点投資」であります。大きな意味では、2項目目の「『1億総中流社会』の復活」、経済を建て直すための大きな柱でもございます。老後や子育て雇用などの不安が、財布の紐を固く閉ざしてしまい、このことが消費の低迷経済の低迷を作っている大きな要因でもございます。ここについては、多岐にわたる側面から「暮らしの安心」を作っていかなければならないということで、別項目を立てをさせていただきました。特に「学びやすい環境」、それからいわゆる「エッセンシャルワーカーに対する処遇改善」。これも具体的に示させていただいているところでございます。
5.多様性を認め合える「当たり前の社会」――人権政策の抜本強化
5番目、「多様性を認め合える『当たり前の社会』――人権政策の抜本強化」。昨日、自民党さんが発表された政策集では40ページにも及ぶということで、なんでも並べられたのかなと。何が重点なのかよく分かりませんが、残念ながら、そこから選択的夫婦別姓が抜け落ちていることからも明確になっている通りです。われわれと自民党との明確な対立軸の1つであると思っております。「選択的夫婦別姓」そして「LGBT平等法」、さらには同性婚を認める法制度など、誰一人取り残さない社会に向けた人権政策の抜本強化を進めてまいります。
6. 平和を守るための現実的外交
6つ目の柱が、「平和を守るための現実的外交」であります。これについては、日米同盟が基軸であるという基本線、ここは自民党とわれわれに大きな違いはありません。そして経済安全保障や食の安全の保障を確保しなければならない。あえて申し上げれば、地球規模の課題への積極的な取り組み、核廃絶の問題などについてわれわれこそが具体的なこれからのビジョンを示していると自負をしています。また健全な同盟関係を維持発展させていくためには、対等で建設的な日米関係を作っていかなければならない。地位協定の問題、それから沖縄の基地の問題についても具体的に示させていただいているところでございます。
7.「まっとうな政治――透明で信頼できる政府」の実現
最後、7番目に「まっとうな政治」ということで、「透明で信頼できる政府」を掲げさせていただいています。繰り返すまでのことはないかと思います。隠す、ごまかす、説明しない、公文書すら改ざんをする。そのことについて総理が変わっても、残念ながら何も変わっていない。これまでの隠ぺい・改ざん体質に全くの反省が見られない。政治への信頼を取り戻さない限り、さまざまな具体的な政策も、国民の理解を得て進めていくことはできません。全ての出発点として「まっとうな政治」を取り戻すため、この9年近い安倍・菅そして岸田政権の下で壊されてきた民主主義を、われわれは具体的に建て直してもらえるということを示させていただいております。
■自民党の政策との最大の違いについて
その後の質疑応答の中で「岸田新総理が率いる自民党との最大の違い」について記者から問われると、枝野代表は以下のように答えました。
枝野代表:1つには多様性。選択的夫婦別姓などの問題、ここの違いに注目していただける方も相当の数いらっしゃると思っております。それから隠ぺい、改ざん。こうした「まっとうでない政治」を改めるところ。これも自民党と決定的な違いがありますので、ここにご関心をいただいている方も少なからずいると思っております。
ただ全体として多くの皆さんに注目をいただけるのは、いわゆるアベノミクスによる富の偏在、格差の拡大、固定化。実際に、実体経済は良くなっていない。こうした「経済と暮らし」の状況をどう立て直すのか。安倍さん以来、ずっと政府がおっしゃっている「成長と分配の好循環」が起きていないから問題なのです。なのに、その一言を繰り返している、全く変われない自民党なのか。それともこの経済成長していない原因にしっかりと切り込んで、適正な富の再分配をおこなう立憲民主党なのか。ここがある意味で、多くの皆さんに注目していただける大きな違いだと思っております。
また「立憲民主党が目指す社会」の最も重要な項目の1つとして、枝野代表は「1億総中流社会の復活」を取り上げ、こう述べました。「アベノミクス、それからは小泉政権以降の、いわゆる新自由主義の結果として、豊かさが一部に偏ってしまっている。株価だけが上がった。そして一部の大企業超大企業における内部留保だけが、どんどん大きくなっていった。結果的に、『強い者』『豊かな者』を、より強く豊かにした結果、1億総中流と言われていた多くの国民の皆さんの生活が苦しくなった。あえて言えば、貧しくなったということであります。適正な分配をすれば、1億総中流社会を復活することは決して難しいことではないと確信しています」。
中長期的には、日本の財政との折り合いをどうつけていくのかとの問いに対しては。
枝野代表:今は100年に一度の危機。しかも経済に大きな打撃を与えている危機であるという状況です。私も財政規律は大事に考えています。けれども、それよりも目の前の「命と暮らし」と経済を守らなければならないと思っております。恐らく、ここから次の総選挙が最大4年後だったとしても、その間は、そういう状況の中で、いかに暮らしと経済を建て直し、命を守るかということで、誰がやっても、こうした政策を進めざるを得ないと考えております。一方で、私どもがきちんと責任を持って分配を訴えるのであれば、比較的豊かな、恵まれた状況にある、アベノミクスの恩恵を受けてきた皆さんに対して応分の負担をお願いをすると。具体的には、所得税の最高税率を上げ、金融所得課税を引き上げると。それから法人税累進課税を導入するという、負担を増やすお願いをすることも明確に示しています。残念ながら責任政党とおっしゃっている今の与党の方が、そうしたことに全く触れていない。このことを残念に思っています。
この日の会見には、泉健太政調会長、大串博志役員室長も出席しました。