岸田総理大臣の安全性を軽視した原子力発電所再稼働推進、次世代原子力発電開発検討・原子力発電所運転期間延長検討指示に強く抗議する(談話)

2022年8月26日
立憲民主党環境エネルギー調査会長 田嶋 要


 岸田総理大臣は、8月24日、官邸で開いたGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議で、原子力発電所について、「再稼働済み10基の稼働確保に加え、設置許可済みの原発再稼働に向け、国が前面に立ってあらゆる対応をとっていく」と述べた。また、次世代型原子力発電の開発や原子力発電所の運転期間延長などについて、「年末に具体的な結論を得られるよう検討を加速してほしい」と指示した。

 そもそも、この10年間の自公政権のエネルギー政策により、省エネルギー、再生可能エネルギー、電力自由化の進展が遅れたことが、今日のようなわが国の苦しいエネルギー状況を作り出した根本的な原因である。
 加えて、今回の指示は、東京電力福島第一原発事故を受けて、原子力発電への依存の低減、安全を最優先するとしていた原子力発電への政府の姿勢を大きく転換する方針変更であり、日本のエネルギー政策の根本にかかわる決定がなされたと考える。政府には早急に臨時国会を開催し、本件につき十分な説明と質疑の機会を持つよう強く求める。

 原子力発電所再稼働の推進については、再稼働済みの原発に加えて、設置許可済みの原発も含め17基の2023年夏までの再稼働が目標とされたが、対象となる原発は多くの安全上の課題を抱え、安易な再稼働は到底許容出来ない。セキュリティ上の度重なる問題が指摘され改善が求められている柏崎刈羽原発、地域合意を得ることが極めて難しい東海第2原発など、来年の再稼働は困難である。
 東京電力福島第一原発事故の教訓である、重大な事故が起こった際に住民が安全かつ確実に避難ができる体制整備は、各地方自治体が策定する避難計画に委ねられており、これでは国として国民の生命と財産を守る役割を果たしているとは言い難い。国が避難計画を審査し、同意を与える法制度を整備することなく、再稼働に踏み切ることは、福島の多大なる犠牲を踏みにじるものである。

 原子力発電所の運転期間の延長については、40年運転制限制が法律の明文に明記された趣旨には、中性子脆化等を踏まえた原発の安全性という科学的な根拠もさることながら、福島第一原発事故の反省も踏まえ、40年で運転を終了させ原発依存度を下げていくという政治的メッセージも含まれている。そのことは当時の国会での議論からも明らかである。東京電力福島第一原子力発電所の事故の終息、廃炉への道筋が見通せない中、運転期間延長の議論を進めるべきではない。

 次世代型原発の開発については、自民党がこれまで選挙でも繰り返し「新増設や建て替えは想定しない」と訴えてきたことと完全に反することになり、公約違反のそしりを免れない。次世代型原発については、基本的な原理は既存の軽水炉と変わるものではなく、絶対安全はないものと考える。また、使用済み核燃料の処分の問題は新世代型原発といっても変わるものではない。将来に向けての原発依存の継続を意味する次世代型原発の開発については慎重な議論と国民の広範な合意が不可欠である。

 立憲民主党は、地域の資源を使って再生可能エネルギーを地域でつくり、地域でお金を回し、地域が豊かになる社会を目指し、2050年再生可能エネルギー電気100%を目標に掲げている。原発依存の低減、脱炭素社会の実現を目指して今後とも省エネルギーの徹底や再生可能エネルギーの普及大幅拡大のための施策の充実に取り組んでいく。

以上