立憲民主党障がい・難病プロジェクトチーム(PT、座長:横沢高徳参院議員)は3月7日、「事件が頻発する精神科病院において如何にして人権を守るか」をテーマに、杏林大学の長谷川利夫教授(保健学部・作業療法学科)からヒアリングを行いました。

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 東京・八王子市にある精神科の滝山病院で、入院患者への日常的な暴力の実態が明らかとなり、看護師が逮捕されました。メディアなどでも連日報道されているこの事件を受けて開かれたヒアリングで、横沢座長は、「障害者総合支援法でも問題となった精神保健福祉法の現場で起きている課題を共有し、私たちも今後何をすべきかを検討し、真摯に取り組んでいきたい」とあいさつしました。

 長谷川教授は講演の冒頭に、「滝山病院事件がきっかけとなったが、暴力や人権侵害は事件のもみ消しも含め全国で起きている」と強調。その根底には、精神科特例(入院患者に対して医師数は一般病床の3分の1、看護師・准看護師は3分の2でいい、という取り決め)を含む現行の低い水準の精神科医療を維持しようとする圧倒的な勢力と、退潮するリベラル勢力の構図があると指摘しました。また、厚生労働省が毎年実施している精神保健福祉資料(630調査)は、身体拘束率のデータなどが実態と異なり信憑性が危ういこと、2014年に日本は障害者権利条約を批准したものの、精神医療に関しては「身体の自由及び安全」(第14条)は絵にかいた餅で、障害を理由に身体拘束をされる可能性が高いこと、などの現状を説明しました。昨年成立した「改正精神保健福祉法」について長谷川教授は、「医療入院の間口が広がってしまった。身体拘束の実施要件を定める厚労大臣告示(第130号)に、医師の裁量を広げるための“治療が困難”の文言が加わるのは改悪であり非常に問題。そもそも人権を制限する行為の要件が国会の審議を経ずに告示で定められていること自体が極めておかしい」と訴えました。

 質疑応答では、医療保護入院と退院の関係、施設や病院でのビデオカメラの設置義務など可視化の必要性、厚労省や警察庁への資料要求、虐待する病院としない病院は何が違うのか、など多くの質問が上がりました。

 講演を受けて長妻昭政調会長は、「精神科病院の可視化や過去にさかのぼっての精神科医療の実態調査が必要」であり、「このような事件が二度と起こらないよう取り組んでいく」と決意を述べました。