衆院本会議で5月9日、出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国に関する特例法の一部を改正する法律案及びその修正案の討論・採決が行われ、「立憲民主・無所属」を代表して米山隆一議員が反対の立場から討論に立ちました。
米山議員は冒頭、 2021年3月、スリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんが名古屋出入国在留管理局の施設で収容中に死亡した事案に触れ、あらためて哀悼の意を表明。「私たちは、二度とこの様な事件を起こしてはいけない。そのために、私たちは、外国人・難民の方々の人権が守られる、公正中立な入管行政を担保する法制度を作らなければならない」と力を込めました。
米山議員は、今般提出された法案は、この点で全く不十分だと指摘。収容に代わって施設外で支援者らの下で生活する「監理措置制度」が導入されたことは一歩前進とした上で、その適用は入管庁の広範な行政裁量に委ねられ、監理措置を行う管理人にはさまざまな義務が課せられることから、多くの外国人・難民の方々にとって引き受け手を探すのは極めて困難で、「全件収容主義」と揶揄される現実は実質的に変わらないと断じました。
収容期間中の仮放免については、健康状態に十分配慮した判断はあくまでも努力義務であること、難民認定についても、2回難民認定申請をして認められなかった人、第61条の2の9第4項2号(無期若しくは3年以上の実刑判決を受けた人ら)に該当する人は、難民認定申請中でも直ちに迫害の恐れのある母国に強制送還される危険があること、難民認定が国際的な基準になっていないこと、在留資格を持たない子どもたちとその家族に特別在留許可を与える仕組みが明確でないこと等の問題点を列挙。「これではわが国は自由主義社会の一員として当然果たすべき義務を果たしているとは言えない。今般の改正案でそれを補うはずの補完的保護要件も、定義が不明確で本当に救うべき人を救えるのか明らかではない」「このままでは日本は、日本を母国として育ち日本を母国と思ってくれる子どもたちの未来を詰み、見捨てる国になってしまう」と批判しました。
こうした法案に対する懸念は、自身を含む一部の者だけのものではないとして、2021年の旧法案のときに続き、今年4月にも、国連難民高等弁務官事務所の見解や国連人権理事会の特別報告者らの書簡で、日本政府に対し国際人権基準を満たしていない指摘されていることも言及。「日本が、迫害に苦しむ世界中の人にとって最も頼れる国の1つになる事は、決して外国人・難民の人たちの為だけでない。世界中の自由と人権と民主主義を守る砦となり、きっと、私たち自身を救うことになる。それこそが自由主義社会のリーダーとして、誇りある日本の歩むべき道だ」と訴え、議場にいるすべての議員に対し、「この法案に、反対して廃案にしてほしい。そして、共に知恵を出し、制度設計を根幹からやり直して、公正な判断をする第三者機関を作り、条文の穴を埋め、基準を明確化し、迫害に苦しむ全ての人に、公正で明確で十分な審査が制度的に保障され、必要な保護が与えられる法律を、作ろう。外国人・難民の子どもたちと私たちの子どもたちが同じ未来を信じる事ができる日本を、世界を、作ろう」と呼びかけました。
本法案は、自民、公明の両党、日本維新の会、国民民主党の賛成多数で可決され、参院に送付されました。