衆院内閣委員会で5月10日、DV防止法改正案について審議が行われ、岡本あき子衆院議員らが質問に立ちました。

迅速な被害者救済の必要性
 岡本議員は、近年DV相談の件数はあがっている一方で保護命令の件数が下がってきている点を指摘し、「保護できなかったことを重く埋め止めるべき」と懸念を表しました。

配偶者からの暴力事案等の相談件数 DV防止法施行後最多
DV防止法に基づく対応.jpg

(令和4年におけるストーカー事案、配偶者からの暴力事案等、児童虐待事案等への対応状況について/警察庁)

 保護命令の申し立てから発令までの平均審理期間が約12日間かかっていることについて、岡本議員は「迅速な被害者救済とは程遠い」と指摘しました。小倉大臣は、「証拠書類の収集の被害者の負担軽減をはかること等申し立ての支援強化を進める」と述べました。

 岡本議員は、「1日で保護を優先する緊急保護の制度がある等の諸外国の例をみてほしい」と政府に提案し、被害者の安全確保を最優先とする一時保護の必要性を訴えました。

GPSの無承諾取得
 本改正案において「電話等禁止命令の対象行為」に追加された「位置情報の無承諾取得」について、岡本議員は「位置情報を23%共有しており、さらに10代のカップルは3割を超えて位置情報を共有している」との現状を指摘し「別れた後、相手方がなかなか削除しない場合でも対象になるか」確認しました。

 内閣府は「断ると伝えても、なお位置情報を取得した場合は、承諾を得ずに該当する」と答弁しました。岡本議員は、「伝えてから、本人に必ず伝わったかどうか、被害者が確認しなければいけないとなるとハードルが高くなる。相手方が受け取ったではなく、伝えたという事実にしてほしい」と政府に要望しました。

19歳等成人した子も保護の対象
 岡本議員は、本改正案の接近禁止命令対象に「同居する未成年の子/親族等」と「未成年」に限定し、成人した子どもは『親族』になるとの政府の説明について「子どもに対しては『子』として扱うべきではないか。子どもが巻き込まれるケースも多い。虐待は18才で終わるわけではない。性的虐待もある。成人した子どもへの虐待への対応が抜け落ちている」と強い懸念を表明しました。

 小倉国務担当大臣は「『親族等』への接近禁止命令もある。こども家庭庁では、子どもは年齢で線引きせずに、心身の発達によるとしている。成年におよぶ場合は「親族等への接近禁止命令」を活用することを周知徹底する。成年の子に対する虐待にも問題意識をもって対応していきたい」と述べました。

 岡本議員は「法律上も未成年に限定する必要はなかった」と改めて指摘しました。

 岡本議員は「虐待を受ける成人した子が転居した際に住民票等の閲覧制限をかけられなかったケースがあるある」と実例を紹介しました。

 総務省は「住民基本台帳の閲覧制限は、加害者が不当に利用して探索することを防止し、被害者の保護が目的。住民基本台帳事務処理要領により、成人した子は「その他これらに準ずる行為」の被害者としている。『18歳に達した後も引き続き支援を必要とするケース』についても、通知している。周知徹底していく」と答えました。 

民間団体への財政支援
 岡本議員が、DV対策における民間の支援団体の重要性に触れ、本改正案に民間団体への財政的援助を明記すべきではないかと質問したところ、小倉国務担当大臣は「必要な予算の確保に努めていく」と答えました。

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 続いて、堤かなめ衆院議員が、外国籍のDV被害者への支援について政府に質問しました。

 名古屋出入国在留管理局のおけるスリランカ人のウィシュマさんの死亡事件に関連して、堤かなめ議員は、DV被害者を救済の対象とするよう政府に求めました。

 法務省は出入国在留管理庁が発出した「本事案に関して『DV事案に係る措置要領』を担当した職員が認識していなかった」と述べ、「DVに特化した研修、専門家の講義、認知手法の習得、意識向上等に取り組んでいる。認知件数は2020年は110件、2022年は249件。DV被害者の立場に配慮しながら適切に対応していきたい」と答弁しました。