性犯罪刑法等改正案について5月16日、衆院法務委員会で参考人質疑が行われました。タレントのSHELLYさん、一般社団法人Springの山本潤さんらが意見陳述しました。
SHELLYさんは「性教育というのは、今まさに性経験を積み始めている、また、これから積み始めようとしている世代にいち早く正しい情報を届けるのが大事だと思い、ユーチューブで性教育チャンネルをつくって発信している」と自身の取り組みに触れました。
現在、国会で審議中の性犯罪刑法に関して、「同意年齢が13歳、中1なのに、文部科学省は中学生では教える必要がないって、すごく矛盾していませんか。性について何も知らない子どもが自分で判断できるわけがない」と指摘しました。
SHELLYさんの動画には「性的同意をそもそも知らなかった」というコメントが多く寄せられると述べ、「性的同意というのは、全ての行為に、毎回、『今ここで私はあなたとこの行為がしたい』という確認を取ることです。同意を取ること自体、日本だとちょっとまだなじみがないかもしれません。もちろん、世代別で見たら、大人の世代になればなるほど、そうしたことへの理解が少ないのかなという感覚もあります。夫婦だから、つき合って長いし、もうわれわれはツーカーだから、言葉でいちいち確認するなんて、そんなの粋じゃないよ、ムード壊れるじゃんって思われている方が、加害者になる可能性があるので気をつけていただきたいと思います」と、意識することの必要性を語りました。
また、「性的同意といえば、今は『イエス・ミーンズ・イエス』、イエスのみが同意という理解が進んでいます。なぜなら、ノーと言えない人がいます。ノーと言えない関係性があります。ノーと言えない状況もあります。なので、『したい』『しようよ』という積極的な同意のみが同意と捉えられるのが、今、世界的な理解になっている」と述べ、「性犯罪の話になると、なぜか決まって、でもお酒も飲んでいたんでしょう、彼の家に行っていたんでしょう、えっ、そんな時間に出歩いていたの、どんな服着ていたの、それってレイプなのかな、それ性暴行なのと、被害者を疑うような声が上がることがある」と指摘し、疑問を呈しました。
海外の調査では、虚偽と証明された事件は、届出されたレイプ事件の約5%未満という数字が報告されていると紹介し、「性被害についていくらでも嘘はつきません」と指摘しました。
そして、「被害者害者を生まない教育ではなく、加害者を生まないための教育、包括的な性教育」と「被害者をしっかり守る法律」の必要性を訴えました。
最後に「今の性犯罪に対する法律はあまりにも甘過ぎる。性犯罪と認められるのにハードルが高過ぎる」と指摘し、法改正の必要性を訴えました。
山本潤さんは、本刑法改正にいたる法制審議会での議論に触れ、「昨年10月に出された試案では、拒絶の意思を形成し、表明し又は実現させることが困難との文言が出された」ことについて、「被害者に拒絶の意思、抵抗の義務を課すかのように受け取られる可能性があること」等を指摘し、「なぜ、これだけの議論を重ねても……言っても言っても伝わらないのかと非常に絶望感を覚えたことを覚えています」と被害の実態を正しく捉えることの困難さを指摘しました。その後、社会からも反対の意見等を受けて、本改正案の「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難」になったことを評価しました。
公訴時効については、海外の調査報告書などを紹介して「日本の臨床現場において被害者治療を行っている委員の方たちからも、30代はせめてカバーしてほしいと聞く。そのような諸外国の例も踏まえて、日本でも、証拠がある、DNAがある、撮影などが残っている等のケースでは、きちんと加害を、罪を問うことができるようにしてほしい」と訴えました。
立憲民主党の寺田学衆院議員は、性的同意で問題となる本改正案の5歳差要件(※1)について質問しました。
SHELLYさんは「リスクは圧倒的に女の子の体の負担が大きいので、その人たちを守るということを、法律といろいろな整備で見せていってもらえないと、今回の5歳差案件というのは納得できるという国民は少ないと私は思う」と述べました。
山本潤さんは「社会的な意思を示すという意味では、やはり3歳差というか、成人が中学生にしてはいけないということをはっきり示すべきではないか」と述べました。
※1 本改正案要綱の「第一」「一」「1」「三」等の「当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。」