参院本会議で5月31日、「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案」に対する討論が行われ、立憲民主党から村田享子議員が登壇しました。

 村田議員は反対の立場から討論を行いました。

 今月19日に大手電力7社からの「規制料金」の値上げ申請が経済産業省より認可され、6月の使用分から値上げが実施されます。物価高が続く中、国民にとって更なる負担となります。

 また、私は、鉄鋼、造船、非鉄金属、建設等、いわゆる「ものづくり産業」の労働組合出身でありますが、電力を多く消費する産業であるため、現下の電気料金の高騰は、産業界にも大きな打撃を与えています。多くの仲間が現場で働いていますが、電気料金は原材料費と比べて製品への価格転嫁が難しく、賃上げにも影響を与えています。さまざまな方策を通じて、この電力状況を何とか改善していきたいと強く思っています。

 一方、本法案は、原子力発電の60年を超える運転を可能とする措置を講ずるものですが、現在の稼働年数を考えたとき、この法案が想定する事態を迎えるのは、10年以上も先のことです。そうであるならば、今、法案を改正するのではなく、政府はもっと時間をかけて議論し、国民に理解を求めるべきと考えます。

 本法案は、福島第一原子力発電所事故以降のわが国の原子力政策を大きく転換するものですが、昨年7月のGX実行会議における岸田総理の指示をきっかけとして、わずか数カ月で策定されたものです。事故によって厳しい経験をされた方々を含め、国民にとって、あまりに唐突な政策転換であります。岸田総理は、GX実行会議をはじめ100回以上政府内で議論を行ったと述べておられますが、政府内の議論の回数が重要なのではありません。国民に対してどれだけ真摯に、かつ丁寧な説明を行ったかが問われているのではないでしょうか。

 原子力規制委員会においては、原子力発電所の60年を超える運転を可能とすることについて、全会一致ではなく、反対する委員がいる中で決定され、委員から議論の進め方への疑問が呈されるという異例の事態となっており、扱うテーマの大きさに対して、熟議がなされて法案が提出されたとは言い難い状況となっています。

 本法案の国会への提出においても、政府の対応は拙速であると言わざるを得ません。本法案は、法案の件名にも含まれる電気事業法だけでなく、原子炉等規制法、再処理法、再エネ特措法、そして原子力基本法という、論点も分野も所管省庁も異なる5本の法案を束ねて改正を行う、いわゆる「束ね法案」です。個々の法案について十分な審議の時間を確保できず、国会審議の形骸化を招来するとともに、国会議員の表決権を侵害しかねません。どの法律がどのように改正されるのか等、国民に分かりづらく、適切な情報公開や国民への説明責任を果たすという観点からも、問題があります。

 また、運転期間延長の経済産業大臣による認可について、電気事業法改正案第二十七条二十九の二第八項で「第二項から前項までに定めるもののほか、認可に関する申請の手続に関し必要な事項は、経済産業省令で定める」としています。運転期間の認可という重要な規定は、国会における審議を経て、法律の条文に明確に定められるべきであり、このような省令への包括委任規定は、立法府の審議権を空洞化させるものであり、認めることはできません。

 原子力発電所の運転期間の延長については、60年を超えて延長することへの可否とともに、「なぜ運転期間に関する規制を原子力規制委員会が所管する炉規法から、経済産業省が所管する電気事業法に移すのか」が経済産業委員会において議論となりました。

 令和2年7月に原子力規制委員会は「発電用原子炉施設の利用をどのくらいの期間認めることとするかは、原子力の利用の在り方に関する政策判断にほかならず、原子力規制委員会が意見を述べるべき事柄ではない」との見解を明らかにし、政府は、今回の法改正について、「運転期間については利用政策であるから電気事業法に移行する」としています。

 しかし、5月23日に本院で実施された、経済産業委員会・環境委員会連合審査会において、西村GX実行推進担当大臣は「原子力規制委員会の審査に通らないと原子力発電所を運転できないという規制に加えて、運転期間の上限というダブルの規制をかけている」と答弁されており、これは、運転期間は安全規制ではなく、利用政策であるとの説明と矛盾し、規制と利用の分離の徹底という点からも、懸念があります。

 また、原子力規制委員会の姿勢も、信頼に値するのかどうか、多くの疑義が指摘をされました。令和2年7月に見解を発表以降、2年以上も法的な整理を自ら行うことなく、事態を放置し、昨年からのGX実行会議の議論の過程の中で、経済産業省、資源エネルギー庁の主導において法改正が行われる結果となり、原子力の安全を担う組織としての主体性、矜持を全く感じません。くわえて、運転開始から60年を超えた原子炉の安全規制について、原子力規制委員会からは、追加点検の方向性だけ示された段階であり、具体的内容が決定されたわけではありません。

 福島の事故を経験した、わが国において、規制と利用の分離を徹底し、安全性を確保することは大前提です。今回の法案は、運転期間延長に関する規定について、十分な議論があったとは言い難く、仮に成立となったとしても、原子力規制委員会はその役割をしっかりと果たせるのか、疑問は拭えません。

 政府は、原子力発電の位置づけについて、明確な方向性を長い間示してきませんでした。再生可能エネルギーの普及は、主要国に遅れをとっています。10年以上にわたる原子力政策の曖昧さは、立地地域の住民の方々を不安にし、また、原子力発電施設の製造や保守を行う、ものづくりの現場では、安全を確保するため、より高度な技術が求められますが、原子力産業での人材確保が難しく、技術の継承を妨げる結果となりました。今後より多くの需要が見込まれる廃炉事業については、発電所の建設と比べて人材が集まりにくいという現状があり、人材育成は急務です。この間、進められてきた電力システム改革についても、その検証が求められています。

 国民の暮らしを支え、産業の競争力を維持するには、安全で安定した安価な電力が必要ですが、政府のエネルギー政策には多くの課題があることを指摘し、私の反対討論といたします。

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