立憲民主党は9月26日、憲法審査会に設置された「衆議院解散の制限検討ワーキングチーム(WT)」(谷田川元座長)を開き、東京都立大学の木村草太法学部教授からヒアリングし、意見交換しました。参加した議員らはその後、衆議院の解散手続きを見直して内閣の恣意的な解散を制限するための議員立法「衆議院解散手続法案・公選法一部改正案」(要綱案)について討議を行い、同案を確認しました。会議後、谷田川座長は、同法案の党内手続きを進めて、来月の臨時国会にも提出したい旨を述べました。

 同WTでは冒頭、谷田川座長があいさつし、「近年の衆院解散はあまりにも恣意的、党利党略、『いまやれば勝てる解散』だった」と厳しく批判し、内閣の恣意的な解散を防止するための法案を2020年頃にも準備していたものの、国会提出までには至らなかった経過を説明しました。そして、当時の法案のアイディアは、木村教授が2018年に提唱されていた仕組みを参考にしたものであったことを紹介しました。

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 木村教授は「衆議院解散の制約に関する憲法論について」をテーマに講演を行いました。まず、衆議院の解散には、内閣不信任決議により行われる日本国憲法「69条解散」と天皇の国事行為としての「7条解散」があることを指摘しました。解散を69条に限定する学説があるものの、通説は69条非限定説を採用しているとしましたが、内閣は7条解散によりどのような場合でも解散できるのか、と言われれば、木村教授は解散には「限界がある」と述べました。

 69条以外にどのような場合に解散できるかに関して、学説は(1)内閣と衆議院が重大な対立をしたとき(2)連立の組み替えなど政権の性格が変わったとき(3)国民の意思を問うべき新たな課題が生じたとき(4)選挙法の大改正があったとき――などを挙げているとしました。これら条件を憲法に書き込めば良いのではとの意見に対して、木村教授は「例えば(1)から(4)を憲法に明記しても、(安倍政権が解散の理由だとした)アベノミクスや国難突破が重大問題とされるので、憲法に条件を書くだけでは党利党略と区別することは難しい。やはり解散への手続きが重要だ」と指摘しました。

 木村教授は、解散・総選挙について「ある種お祭り。メディアも国民も選挙で何が問われたのか、後から振り返っても不明なことが多い」として、国民が冷静に判断する時間と解散理由の説明が不可欠だとしました。その上で、立憲民主党が準備している「衆議院解散手続法案」は、内閣が衆議院を解散しようとするときは10日前までにその理由を通知させ、本会議だけでなく一問一答が可能な議院運営委員会での国会審議を通じて、解散理由を明らかにする制度設計となっていることに触れながら、この手続き法案が「憲法理念にそったもの」と評価しました。木村教授は「解散権限を制限することは違憲だとの反論が出てしまうが、この法案は、解散について国民の理解を深めるもので、憲法理念を実現する法案」だとし、「解散理由の説明が国会の議事録に残る価値は高い」と法案の意義を強調しました。