衆院本会議では12月5日午後、旧統一教会の被害者救済の法案をめぐり、自民・公明、国民民主の3党提出の「特定不法行為等に係る被害者の迅速かつ円滑な救済に資するための日本司法支援センターの業務の特例並びに宗教法人による財産の処分及び管理の特例に関する法律案(被害者救済法案)」の修正案が賛成多数で可決しました。

 これに先立ち開かれた同日午前の衆院法務委員会では、「被害者救済法案」および立憲民主党・日本維新の会提出の「解散命令の請求等に係る宗教法人の財産の保全に関する特別措置法案(旧統一教会財産保全法案)」に対する質疑、採決が行われました。

 質疑では、財産保全に向けた検討について、自民党の法案提出者の柴山正彦議員が「具体的な課題が生じた場合は3年を待たずに検討に入る」と答弁。立憲民主党は修正法案への賛成を決めました。

衆院法務委員会
西村智奈美議員

 質疑に立った西村智奈美議員は、「被害者の救済のために旧統一協会の財産を散逸させないことを最優先に最速で行うべきだと考えている。私たちの法案が必要だ」とあらためて強調。他方で今ある民事保全の仕組みを拡充する点も評価できるところがあると述べました。

 その上で、同日自民、公明、国民民主の3党により提出された提出案の「施行後3年後を目途に財産保全のあり方を含めて法律の規定に検討を加える」とする付則部分の解釈について、「ずいぶん悠長な構え。検討は施行後3年をめどではなく、必要があれば検討に入ることが必要だ」と述べ、この点を確認。法案提出者の自民党の柴山議員は「具体的に検討するべき課題が生じた場合においては3年を待たずに検討を加え、必要があると認めるときはその結果に基づいて法制上の措置を講ずることとなる」と答えました。

 立憲民主党が主張する包括的な財産の保全をめぐっては、柴山議員は修正案の付則に「財産保全のあり方を含めて」との文言を加えたとして、実効的な財産保全の方策が検討の選択肢となり得ると答弁。西村議員は「実効的な財産保全の第一歩が包括的保全だ」と述べました。

 また、岸田総理が自民党政調会長だった2019年、旧統一教会の友好団体のトップと面会していたとの報道にも言及し、「逃げることなく説明することが被害者の皆さんに対する誠意」だと指摘。「その意味でも私たちの包括的な財産保全をしてバケツの穴をまずはしっかり塞いで、民事保全という土俵に立てるよう環境を整えることが立法府としての責任だ」と述べ、立憲・維新案の成立を強く訴えました。

西村智奈美

鎌田さゆり

 立憲・維新案に賛成、自公国案の原案に反対、自公国案の修正案に賛成の立場で討論に立った鎌田さゆり議員は、「旧統一協会による被害の拡大及び深刻化は、多くの議員の密接な関係と、30年以上にもわたる行政府、立法府の不作為によるもの。だからこそ、政治として責任を持ち、被害救済を実現しなくてはならない」と、厳しく指摘しました。

 さらに、旧統一協会は、数百億円にも及ぶ海外への送金を毎年のように行ってきたとして、「旧統一協会への解散命令が決定したときに、財産が失われている状況を回避するため、包括的な財産保全は必ず必要だ。そのために立憲・維新で『旧統一協会財産保全法案』を提出した」と意義を訴えました。

 修正案については、「法テラスの拡充や、不動産の処分、財務書類の確認ができることで、被害者の救済に役立つツールとなり得る」として賛成としましたが、旧統一協会への解散命令が決定したときに、財産が失われている状況を回避するため、「包括的な財産保全は必ず必要」と注文を付けました。

 原案については、「救済に役立つ内容もある一方、被害者の方が一番に求めている包括的な財産の保全については、3年後を目途とした検討条項にとどまる内容で、これは、3年後にしか検討しないと言っているも同然だ」として反対しました。

 最後に、「本法律案の可決をもって、これで終わりにするのではなく、被害者の方々に寄り添い、継続的な情報収集、必要な法整備についての検討を行うべきだ」と述べ、討論を終えました。

鎌田さゆり

衆院本会議
鈴木庸介議員

 鈴木議員は、昨年7月の安倍元総理の銃撃事件によって旧統一教会の問題が明らかとなってから立憲民主党が被害者救済のために、「早々に旧統一教会被害対策本部を立ち上げ」「国対ヒアリングと合わせて、約70回、延べ100名の方々から被害の訴えや支援の必要性を聞いてきた」点を強調しました。

 鈴木議員は、旧統一教会による被害の拡大及び深刻化が「多くの議員との密接な関係と、30年以上にもわたる行政府・立法府の不作為によるもの」と強く非難しました。

 そして、岸田総理と旧統一教会の友好団体の日米のトップとの関係が報道されていることに触れ、「自民党の調査自体の信ぴょう性も疑われる」と問題視しました。「総理自身及び自民党の議員に対し、旧統一教会と友好団体とどのような関係があったのか、責任をもって再度調査すべき」とあらためて求めました。

 鈴木議員は、旧統一教会が解散命令請求を出され、解散命令が決定するまでに、財産が隠され、散逸することで、被害者の救済資金が失われる現実的な強い懸念があると指摘し、財産保全の必要性を訴え、立憲民主党などで「旧統一教会財産保全法」を提出した経緯を述べました。

 与野党協議の中で、「旧統一教会に対し、たった一人で財産保全のための裁判を行うことは、大変困難」との共有があり、「個別の民事保全では難しい、包括的な財産保全が必要なのだとの意見」が出たことも踏まえ、「自公国の案も立維の案も、救済のための車の両輪」として「両案を成立」させるべきと立憲民主党は訴えてきました。

 立憲民主党・日本維新の会で提案した旧統一教会財産保全法案は否決されました。

 個人個人が民事保全を行う自公国案について、「施行後3年をめどに財産保全のあり方を含めて規定について検討を加えるとの附則を盛り込む修正を行う」とともに、自公国の法案提出者から「課題が生じた場合は3年を待たずに検討を加える」「実効的な財産保全の方策が検討の選択肢となり得る」として、「不十分とわかれば速やかに協議して対処する」との答弁を得られたと、賛成に至った理由を述べました。

 最後に鈴木議員は「本法律案の可決をもって、これで終わりにするのではなく、被害者の方々に寄り添い、継続的な情報収集、必要な法整備についての検討を行うべき」と訴えました。

鈴木庸介