参院法務委員会と文教科学委員会で12月12日午前、旧統一教会の被害者救済のための特例法案の連合審査が行われました。同日午後には、参院法務委で審議、採決が行われ全会一致で可決しました。

 参院では、自民・公明・国民3党が提出した財産処分の監視を強化し、法テラスを通じた民事訴訟の支援体制を強化するなどを規定した財産散逸防止特例法案・修正案(特定不法行為等に係る被害者の迅速かつ円滑な救済に資するための日本司法支援センターの業務の特例並びに宗教法人による財産の処分及び管理の特例に関する法律案)が審議されました(立憲・維新の法案は衆院で否決されています)。

【午前】参院法務委員会、文教科学委員会連合審査

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■石橋議員

 午前の法務委、文科委連合審査では、石橋通宏議員が登壇。冒頭、「大事な法案です。緊張感を持ってやりましょう」「(多くの方々が)われわれの真摯な審議を期待している」と述べ、質問に入りました。

 石橋議員は、全国霊感商法対策弁護士連絡会の方々が与党案に対し、民事保全システムの円滑化を図るという意味で評価しているのであって、本来の被害者救済の観点からは不十分だと指摘していることを取り上げ、「(与党案では)駄目だという声は聞いているか。これでは駄目だという声を聞いてもなお、衆院段階で立憲・維新案を否決したということか」と問うと、与党案提出者の山下貴司議員は、「われわれの案も被害者の気持ちに寄り添う」「被害者に対する真の救済という方向性・思いは立憲・維新と同じだ」と述べる一方で、立憲・維新案の問題点を挙げました。

 石橋議員は、弁連の皆さんは与党案のメリットは理解しているとした上で、「それでもなお(与党案に)足らない部分にどう応えるのかを聞いている」と述べ、山下議員が立憲・維新案の問題点を指摘したことを受け、「直せはいいじゃないですか、一緒にやりましょうよ」「実効性ある形で、将来に渡る救済が可能な形ができるのかを議論すれば良い」「残念ながら、与党案の法案提出が11月下旬(と遅かった)。われわれはずっと前から準備をし、議論しようと言ってきた。(もう)タイムリミットですよ、本来はそれが(議論することが)政治の責任ではなかったのか」と訴えました。

 衆院の審議で、法案の付則に施行後3年をめどに財産保全のあり方などを検討することが盛り込まれ、「3年を待たずに検討に入る」との答弁があったことから、石橋議員は「個別対応ではできない」「不十分だ」という場合には包括的な保全に向けた見直しすべきだと指摘し、提出者の見解をただしました。山下議員は「ぜひ御党の賛成もいただき法案を成立さえ、本法案を通じて実効性のある被害者の救済に全力を上げていきたい」と述べる一方で、「今の段階では、将来検討されるべき保全のあり方について具体的な内容についてお答えするのは差し控えさせていただきたい」と述べ、明言は避けました。

【午後】法務委員会

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■牧山ひろえ議員

 午後に行われた法務委では、牧山ひろえ議員と石川大我議員が質問。牧山議員は与党案修正案も必要だとした上で、解散命令請求が出された段階で財産の流出を防ぐ(財産保全)措置を可能とする立憲・維新案が、憲法に定める信教の自由や財産権等に抵触するとの批判があったことに関連し、与党案発議者の見解をただしました。

 山下貴司議員は、信教の自由について自民党以外にも、宗教法人の9割が加盟・関係するとした公益財団法人日本宗教連盟が声明で「信教の自由を含めた精神的自由は、最大限保障される権利であるとされています。そのような精神的自由に何ら配慮することなく、会社法の保全の規定を宗教法人に乱暴に当てはめることはあってはならず、また利害関係人の解散命令請求を受けた利害関係人による保全申立てを認めることは、濫訴による混乱も招きかねないと危惧します」としていることを挙げ、「憲法上の懸念と言っていい」と述べました。牧山議員は11月22日の衆院予算委で衆院法制局長が「宗教法人でも世俗的側面を対象とし、精神的側面に介入する目的ではない限り、財産規制も憲法の許容するところであり、立憲維新の案も十分説明可能な立論になっている」と答弁したことと、極めて抑制的な規定になっていることを挙げ、「信教の自由に抵触するものではない」と述べました。

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■石川大我議員

 石川議員は、本法案の策定過程で教団や関連団体からのアプローチの有無について質問。発議者の小倉將信議員は「直接的間接的に影響を受けたことはない。他の発議者も同様」と述べ、否定しました。また、策定するプロジェクトチーム(PT)の会議に教団に関係していた議員は参加していたのかを問うと、「昨年、今後一切持たないことを徹底することが党の方針として示されており、今回のPTに参加した議員に関しても一切該当団体とは関係を持たずに議論させていただいた」と述べました。

 また、石川議員は小泉龍司法務大臣の政治資金パーティーなどでのキックバックの有無についてただしました。小泉大臣は当初「政府の立場としてお答えは差し控えさせていただく」との答弁を繰り返しましたが、所属する派閥からノルマを越えた分に見合う支出は受け取っているとした上で、収支報告書に掲載していると述べました。