参院本会議で4月17日、「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案」の代表質問が行われ、杉尾秀哉衆院議員が登壇しました。

 冒頭、杉尾議員は、衆院での本法案の審議を急いだ理由を「バイデン大統領への手土産にするつもりだったのではないか」と疑念を表しました。

 訪米前に総理が駆け込みで行った裏金議員への処分についても、杉尾議員は「実に評判が悪い」と指摘し、関与が疑われている森元総理への再々調査と岸田総理自身への処分の必要性を指摘し、自民党総裁を辞任するよう訴えました。

 岸田総理は「下村議員や森元総理の言動の一つ一つについてコメントは差し控える」「森元総理への聴取ややりとりを明らかにすることはしないという前提で行った。詳細は控える」とこれまでの答弁を繰り返しました。

 杉尾議員は「カネと利権まみれの自民党政治はもう限界」と強調しました。

  杉尾議員は、「第二次安倍政権以降の政府・与党は、特定秘密保護法に始まり、共謀罪、安保法制など、ひた すら『強い国づくり』を目指してきた。そこにあるのは、国会での議論を軽視し、何でも閣議決定で決めたり、政省令や運用基準、細則等に「丸投げ」する、いわば「行政独裁」とも言える手法」「本法案もそうした流れの中にある」と批判しました。

 そして「一方、米中の対立激化に象徴される国際情勢の変化は産業分野にも及び、重要な経済情報を保全する必要性が高まっているのも事実」とし、「こうした現実に対応するため、我々も2 年前の経済安保推進法には賛成し、その際に附帯決議で付けられたのが『適性評価(セキュリティ・クリアランス)制度』」と経緯に触れました。

 本法案の内容については、「肝心かなめの法案の中身は全てが曖昧なままで、衆議院では『出来の悪い法律』と酷評される始末。このため、わが党が中心となって、恣意的な情報指定に一定の歯止めを掛けるため、 国会による監視等を盛り込んだ修正案を可決させた」とこれまでの衆院での動きを説明し、まだ残る懸念として、「機密の範囲と対象、プライバシー侵害の恐れ」等を指摘しました。

 杉尾議員は、「セキュリティ・クリアランス制度の導入に対してどれほどのニーズがあるのか、民間企業のビジネスチャンスがどれだけ広がるか、数字や具体例を示す」ように求めました。

 導入されるセキュリティ・クリアランス制度では、適性評価の対象となる人数について高市早苗国務大臣がようやく「多く見積もって数千人程度で、数万人という単位にはならない」と答弁したことをあげ「今回の新制度は最終的にどれだけの規模を想定しているか」質問しました。

 高市大臣は「大胆な仮定を重ねながら試算した。数千人程度になり、数万人にはならない。経済安全保障分野は変化が早く、時の経過と共に増減することもあり得る。将来の適正評価の対象人数を答えることは困難には変わりない。目安となる数字は大きく変動することはないと認識」と答弁しました。

 杉尾議員は、「民間人が調査されることによるプライバシー侵害の恐れが拭えないまま」と指摘し、これまでの政府の説明では、「調査は『本人の同意が前提』とされているが、会社内での処遇などを考えると、事実上の強制となる可能性が否定できない上、調査項目が配偶者や家族の国籍はもとより、飲酒の節度や、渡航歴、さらには経済状況にまで及んでいる事を考えると、民間人のプライバシーが『身ぐるみ剝がされる』恐れがないとは言えない。そこで、①適性評価を行う調査機関による「権限の濫用」を防ぎ、人権を最大限保障すると共に ②収集した個人情報の管理の厳格化と ③調査拒否を理由とする配置転換など労働者への不利益な取り扱いを禁止する事などの重要事項について、今後定める運用基準に委ねるのではなく、法案審議の過程で明確な歯止めとなるルールを示す」よう政府に求めました。 岸田総理は、労働者への不利益取扱いについて運用基準で明確に定めるとし、「本法案では、法律の適用にあたっては、これを拡張して解釈して国民の基本的人権を侵害してはならないと規定。担保されるようしっかり対応していく」と述べました。

 最後に杉尾議員は、「私が国会質疑で取り上げた大川原化工機のえん罪事件に象徴されるように、安全保障関連法制を巡っては、捜査当局による暴走の危険性が常につきまとう。こうした経緯に鑑み、岸田総理には国会軽視と行政独裁の姿勢を改め、権力を常に抑制的に行使するよう」「参議院では抽象的な議論ではなく、できる限り具体的に。そして、できうる限り真摯に質問に答えて頂くよう。これが国民の不安を払しょくする最大の近道である」「良識の府である参議院らしい議論が展開されることを期待する」と訴えて締めくくりました。

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