参院本会議で4月24日、「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律案(水素社会推進法案)」及び「二酸化炭素の貯留事業に関する法律案(CCS事業法案)」に関する質疑が行われ、立憲民主・社民を代表して村田享子議員が登壇しました。

 村田議員は冒頭、本来業務の補助金交付等を行わずに管理費だけとなっている休眠基金について2024年末での廃止を政府が決定したことに触れ、全200基金を点検の結果、5,466億円が国庫返納されることになったとして、終了時期未定・定量的な成果目標の設定なし等、基金の管理体制が不透明で税金の無駄遣いであったと指摘。「子ども・子育て支援金、防衛増税等、国民に負担を求める前に、無駄を速やかになくすべきではないか」と指摘しました。

 齋藤健経済産業大臣は「不断の点検・検証を行い、適切な執行管理に努めていく」などと述べました。

■水素社会推進法案について

 村田議員は、「法案名にある『低炭素水素等』について、『低炭素』の基準や『水素等』の内容は省令に委任されている」として、その具体的な定義を尋ねました。さらに、「国から事業者に対する支援内容も、具体的に明らかになっていない」として、制度設計の甘さを指摘しました。加えて、地方公共団体の果たす役割や地方公共団体への支援の必要性についても問いただしたほか、「日本の温室効果ガスの排出量は過去最低となる一方、世界全体の排出量は増加傾向にある。日本が持つ脱炭素技術を他国にも広めることで世界の脱炭素化やビジネスチャンスにつながるのではないか」との意見を述べました。

 これに対し、齋藤健経済産業大臣は、「(『低炭素水素等』の)具体的な基準は、海外の制度を参考にしながら有識者にご議論いただいている。具体的な支援内容については、価格差に着目した支援措置などを法定しているほか、支援基準も法律上認定基準として規定しているが、詳細は審議会で取りまとめていただいた内容や国会での議論を踏まえ、今後具体化していく」「国際的に遜色のない基準にする予定だ」「意欲のある地方公共団体と連携しながら政策資源を集中して投下していく」と答えました。

■CCS事業法案について

 二酸化炭素を分離回収し、地中に貯留するCCSは、日本のGX戦略の中でどのような役割を果たしているのかと村田議員が質問したところ、齋藤大臣は「2050年にカーボンニュートラルを実現するための手段として、明確に位置付けられている」と回答。どの程度の二酸化炭素が貯留されるのかについては現排出量の1~2割に相当する試算である旨を述べました。

 村田議員は、CCSは「国民にとっては、なじみのある技術ではない」として、「CCS事業を進めるためには国民、特に貯留地域の理解が必要である」と訴えました。さらに、ものづくり産業の労働組合出身である村田議員は、「ご安全に」と本会議場で声掛けを行い、「CCSは新しい技術である。安全性を高めるための技術研究を進めるとともに、安全規制についても日々見直し、より良いものとしていく必要がある」と主張しました。

 また、「本法案においては、貯留事業等の許可申請は、外国法人であっても特に制限を受けないのか」との問いに対し、齋藤大臣は「一律に制限することはしないが、外国法人から許可申請があった場合には、その事業者の適格性に加えてその事業者が行おうとする取り組みが、わが国におけるCCS事業の健全な発達やカーボンニュートラル実現に資するものであるかなどを許可基準に照らして審査する」と回答しました。

■GXについて

 村田議員は、「日本の企業はもちろん、各国の製鉄会社が、製造時のCO2 排出量を大幅に削減した 、いわゆるグリーンスチールの開発にしのぎを削っている。どこの国が、 世界に先駆けて、脱炭素化を実現するのか。まさに今が正念場」だとして、政府の役割として、GX製品の市場価値向上や、国際的な取引ルールの確立にあると指摘しました。

 GX製品の市場価値が相手に理解されにくい現状をあげ、「GX製品に関する国際的な取引のルールづくりに我が国が積極的に参画し、ルールづくりを主導していくことは、国際的な市場獲得にとって大変重要である」と力説しました。そして、世界情勢が変化する中でのGX戦略について政府の見解を求め、それに付随して先日の米ポデスタ大統領上級補佐官との会合で、脱炭素分野での政策協調に向けた協議の内容を尋ねました。これに対して、齋藤大臣は「GX推進戦略と米国のインフレ削減法のシナジーを高めていくことに合意した」と述べました。

 さらに、村田議員は「カーボンニュートラルの目標が国によって異なること」に着目。目標年に開きがあるなか、日本の産業や雇用に大きな影響を及ぼすことになるとして国としての対処が必要との認識を示しました。

 最後に、「GX推進においては、『円滑な移行』だけでなく、『公正な移行』も重要である」と主張しました。GXの推進に関する国民からの不安の声や地域経済への影響などの懸念点を示し、これに対する政府の対応を要求して質問を締めくくりました。
20240424水素社会推進法案及びCSS事業法案質問原稿 村田享子参院議員.pdf

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