衆院予算委員会で12月5日、「石破内閣の基本姿勢」に関する集中審議が行われ、階猛、岡本あき子、神谷裕各議員が質疑を行いました。

■階猛議員

 階議員は、石破総理が以前、地方創生担当大臣であったことを踏まえ、「地方の人手不足」について質問。この10年間で、東京一極集中の是正は「遠のくばかり」だったと指摘するとともに、人手不足と円安による輸入物価の上昇で、地方の中小零細企業が倒産や廃業に追い込まれるとの懸念を表明しました。

 また、階議員は石破総理が所信表明演説で述べた「物価上昇を上回る賃金上昇」を達成するには、まずは物価を抑えなければならないと指摘。政府と日銀が「共同声明」で掲げる「2%の物価安定目標」は、「削除すべき」と石破総理に迫りました。これに対し石破総理は、「現在のところ共同声明を(新たに)出す予定はございません」と述べました。

 さらに、「ご提案があれば承りたい」とくり返す石破総理に対し階議員は、石破総理も所信表明演説で述べたように「最低賃金を上げる」と、必然的に「年収の壁」に達し、「働き控え」により「労働時間は短くなる」と指摘。とりわけ「年収130万円の壁」は「手取りがガクッと減る」という「130万円の崖」であり、企業にとっても人手不足の解消にならないと強調しました。そのため立憲民主党は、この「崖」を給付で埋める法案を提案したと述べるとともに、合わせて、社会保険料の事業主負担を軽減する法案も再提出する意向を表明しました。

 その上で階議員は、総理主導で(与野党)協議の場を作るように「党内に指示を」と求めました。これに対し石破総理は、「党の方針について、今ここで私が断定的に申し上げることはいたしません」と述べるにとどめました。

衆院予算委員会 階猛

■岡本あき子議員

 「多様性の観点から石破総理の基本姿勢について質問する」と切り出した岡本議員は、特に総理就任前後で発言が変節しているのではないかと思われる(1)選択的夫婦別姓の導入(2)マイナ保険証(3)同性婚の法制化――を取り上げました。

 マイナ保険証については、健康保険証と同じ機能を有するにもかかわらず「資格確認書」と名前を付け、健康保険証はなくすという言い方をしていると問題視。なかでも「マイナ保険証を持っていなくても、資格確認書によりこれまで通り医療にかかれる」という政府の周知が医療機関や薬局に行き届いていないことから、健康保険証が1年間で終わってしまうと不安をあおっていると指摘しました。立憲民主党が提出する「健康保険証復活法案」を成立させるだけで十分に安心を届けられると主張。石破総理は「不便を感じる方がないように誠実な姿勢を持って臨みたい」「周知の努力は一層していく」などと答弁しました。

 選択的夫婦別姓をめぐっては、「通常国会で結論を出そう」と再三にわたり速やかな判断を迫りましたが、石破総理は「議会で決めること」などと明言しませんでした。

 冒頭、旧優生保護法による被害者救済について、特別国会で成立した「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者等に対する補償金等の支給等に関する法律」を受け、あらためて被害に遭われた方々へのお詫びの言葉と、補償金支給を対象者に確実に迅速に届ける決意を問いました。石破総理は「深くお詫び、謝罪申し上げる」「補償金の支給が着実に行われるよう施行の準備に万全を尽くしていく。それが実際に謝罪を具現化するためのものだと考えている」と表明しました。

衆院予算委員会 岡本あき子

■神谷裕議員

 神谷議員は、(1)農業者への直接支払いの在り方と石破総理の所信に対する答弁及び農政課題に対する認識(2)水田活用直接支払い交付金に関する石破総理の認識――等について質問しました。

 神谷議員は「地方にとっての基幹産業は第一次産業であり、農林水産省予算をいかにしてつけていくかは非常に重要」「農業従事者にとって農業政策の変更に簡単に対応するということにはなり得ない」との認識を示し、自民党総裁選以降農業政策に関する発言のぶれが散見される石破総理の真意を深掘りしていきたいとの考えを示しました。

 特別国会答弁ではブレーキをかけ、臨時国会では「議論を深める」など、さまざまな答弁が飛び交う形となっている農業者への直接支払い制度について神谷議員は着目。9月28日に総裁選で語り、日本農業新聞に掲載されていた「米の増産に舵を切り、自由に生産してもらい、輸出を拡大すべき。生産拡大に伴う米価下落には直接支払い制度で対応する」旨を発言したとされる石破総理の真意を神谷議員は確認。総理就任後の答弁等を踏まえると「この考え方は変換するということか」を確認しました。

 石破総理は「基本的な考え方を変えたという認識はもっていない」と述べましたが、神谷議員が「そうなると生産調整そのものについても否定的な考え方か」と重ねて認識をただしたのに対し、「総裁がこうだからということであらゆる政策が変わっていくものではない」として、総裁としての認識に論拠する形で内閣の政策が確定するものではない旨を答弁しました。

 神谷議員は「わが国では残念ながら農業者も農地も自給率も減っている。回復していくのは厳しいのではないかという認識に立っている。それを反転させるために立憲民主党は農業者戸別所得制度をはじめ、さまざまな施策を提案してきた」と述べ、前向きな取り組みを求めました。

衆院予算委員会 岡本あき子