衆院政治倫理審査会が12月18日に開かれ、自民党の裏金問題について青柳陽一郎、寺田学、柴田勝之、中谷一馬、米山隆一各議員が質疑を行いました。
■青柳議員が柴山議員に対して質問
派閥の裏金問題について、「還付金がいつどのように再開されたのかだれも説明をしていないし、再発防止策もない。今後、原因究明に取り組んでいく気持ちがあるのか」と柴山議員に問いました。柴山議員は「再発防止策も有意義な検討ができていないことには同意する。さまざまな方の証言を聞く限り大変残念だが原因究明ができていないことについて非常に歯がゆい思いをしている」と述べました。
また、派閥パーティーの収入について平成25年までは不記載なく双方が計上をしていたにも関わらず、平成26年から方針が変わり、派閥事務局から秘書を通じて不記載とする連絡があったことを受け、柴山議員自身は不本意であったと弁明していることについて、「弁護士でもある柴山議員は違法性を認識していたのではないか。なぜ、自身が派閥の事務局・幹部に直接確認をしなかったのか」と質しました。柴山議員は「まさかすべての党所属議員に関わるようなことで違法な処理をするはずはないと思っていた」「派閥で適切な処理をしていたのだろうと誤信していた」と弁明しました。
さらに、公判で安部派事務局長の松本被告が還流の再開については、幹部が手分けして派閥議員に伝達したと証言していることについて、柴山議員や秘書に伝達があったのかを問いました。「還付を止めると事務総長から連絡があったが、還付を再開する連絡を私は受けていない」「秘書は派閥から還付があることを知らされて(現金を)取りに行き、現金で保管していた」と答弁。青柳議員は、「民間であれば当たり前のように口座で資金を管理する。現金で資金を管理することはありえない」と柴山議員が以前、発言していたことを取り上げ、言行不一致だと断じました。
■寺田議員が鈴木議員に対して質問
寺田議員は、鈴木議員が派閥パーティーの還流について「知らなかった」と弁明していることについて、「信じがたい」と疑問視。昨日同委員会にて弁明した加藤竜祥議員が派閥の総会で、「ノルマ以上売らなくてもいい」とした発言があったと証言したことに触れ、鈴木議員について「ノルマ(50万円)以上売らなくてもいい超過分が280万円ある。還流の仕組みを知らないのになぜノルマを超える額のパーティー券を売る動機を持ったのか」と問いました。鈴木議員は「派閥パーティーが初めてのことで、どれくらい買ってもらえるのか相場観が分からず、(派閥へ)しっかり貢献しなければならないとの思いだった。パーティー券購入者は派閥の口座へ直接振り込むため、何枚売れたのか派閥から最終的に報告があるまで分からない仕組みになっている」と答弁しました。
また、今年3月に行われた政倫審において、西村康稔議員が当時派閥の事務総長として2022年4月に還流を止めると決めて、幹部から手分けをして若手議員を中心に伝達をしたと証言していることについて、鈴木議員に伝達があったのかを問いました。鈴木議員は伝達がなかったと答え、寺田議員は「昨日から出席した議員の中で柴山議員だけ電話を受けたと認めている。他の方は認めていない。政倫審の限界かもしれないが、伝達をしたと言っている方には、この食い違いをしっかりと説明してもらいたい」と求めました。
■柴田議員が関議員に対して質問
柴田議員は、2022年春ごろに安倍晋三元首相に「法的に問題がないのか、もしあるのでしたら、その運用は改めるべきではないかと相談をした」と述べた関議員に対し、それ以前には「疑問に思いながらも確認をしなかったのか」とただしました。
その上で柴田議員は、刑事事件の時効は5年だが、「政治家としての責任もないということにはならない」と強調。また、関議員が「清和政策研究会(安倍派)の集い」という「専用の通帳」にキックバック分を入れていたと述べたため、通帳のコピーを公開するように求めました。
■田畑裕明議員に対する中谷一馬議員の質疑
田畑議員は旧安倍派が政治資金パーティー券の販売収入の一部をキックバック(還付)していた問題で、収支報告書への不記載額は5年間で68万円にのぼっています。また、事務所が管理する党員701人のうち無断または架空登録が262人あったことを認め、党費は亡くなった親族や父親が肩代わりしていたと主張。一方、自身の関与は否定しています。自民党県連はこの262人の党員登録を抹消しています。中谷議員はこうした点について追及しました。
中谷議員は還付金の取り扱いについては同じ秘書が担当したかを確認したのに対し、「そうだと思う」と回答。還付の取りやめ・再開は誰から連絡があったのか確認したのに対して田畑議員は「直接は連絡を受けていない」と答弁しました。中谷議員はまた田畑議員が政治倫理審査会に配布した資料には「2018年の不記載分24万円を除いた44万円」と記載されている点を問題視。「今弁明をされた通り、68万円が正確な額だと思う。なぜ44万円の資料を出してこられたのか」と述べ、国会軽視ではないかと指摘しました。
中谷議員はまた、田畑議員が政治資金パーティを開催する際、「ご入金のみ」との選択肢を設けている点にも着目。「田畑方式と呼ばれ大変問題になっている」と指摘しました。本年6月に開催予定だったパーティを中止し、「今後の対応については詳細が決まり次第あらためて連絡する」とパーティー券購入者に連絡したがその後に何ら対応がとられていない点も問題視。「半年間も返金されていない状況は説明の内容と食い違っている」と指摘しました。
また、「パーティー券購入の際『ご入金のみ』」との選択肢を設けたパーティーを計7回開催し、約230の個人・団体が入金のみを選択したと報じられている点について、「入金総額はいくらで、どの程度返金されたか」を確認。田畑議員「該当する方にまだ戻ってないということであればすみません。急ぎ確認をしたいと思います」などと述べるにとどまりました。中谷議員は「ご入金のみ」の資金の流れについて政治倫理審査会への資料の提示を求めました。
■根本幸典議員に対する青柳陽一郎議員の質疑
根本議員は4年間で、計420万円の還流分を不記載にしていました。「派閥事務局からの指導に従った」とコメントしてきており、使い道は「すべて政治活動費として収支報告書に記載できる性質のもので、不正や私的な目的での支出はない」などと発言してきました。
青柳議員は冒頭、「先ほど弁明で国民の理解がまだ十分でないというのはその通り。何で理解が進まないのかというと、実態解明が十分ではないからだ。なぜこういう問題が起こったのかについて誰も答えてないからだ」と指摘しました。そのうえで、2023年12月に報道が出るまで不記載の問題を知らなかったと発言している点を踏まえて確認。2019~22年の4年間で420万円の還付金があったとされる点についてその都度還付金を現金でもらっていたのかを確認。「事務所スタッフが現金で派閥からその都度いただいてきたと聞いている」と答弁したが、「一度もその秘書から現金の還付があったという報告がなかったということか」との問いには「毎回だったかどうか記憶はっきりしないが報告があった」「細かいところまではなかったが数回還付があったことは報告があった」などと答弁。「現金で毎回還付があるのに毎回金額も確認せずにトータル420万円になっているというのは管理がずさんすぎる」と問題視しました。なぜ不記載だったかについては「清和会の事務局の方からこれは記載しなくてもいい」という話があったため不記載としてきたと繰り返しました。青柳議員は「根本議員がこの還付金を使いながら、政治活動で記載しなかったということは完全な政治資金規制法違反じゃないか」と指摘しました。
また、還付金の再開に関して清話会の幹部が手分けして派閥所属議員もしくは事務所に伝達したと安倍派の事務局長の松本被告が公判で発言していることに関して、根本議員にはいつどのように伝達されたかを確認しました。根本議員は「その連絡をいただいた記憶がない」との答弁に終始。「すべての議員もしくは事務所に伝達した」とされているにも関わらず、頑として知らせを受けた記憶はないと繰り返しました。
■米山議員が萩生田議員に対して質問
米山議員は、萩生田議員が収支報告書へ不記載の金額を別口座で管理していたと説明したことについて、当初は事務所スタッフが鍵付きの引き出しに現金で保管していたと説明していたのではないかと質問しました。萩生田議員が、パーティーチケットの販売段階で専用口座に入金し、パーティーが終わると全てのお金を秘書が引き出して管理していたと説明すると、米山議員は「かなり奇怪なことをする」と指摘しました。また、全額を口座からおろすのは派閥に全額を納めないといけないからだという説明に米山議員は、「わざわざ不正を起こしやすい方法を取っていたということで良いのか」と疑問を示し、「ごまかしやすくしているだけだ」と述べました。
■中谷議員が平沢議員に対して質問
中谷議員は、平沢議員が裏金問題について選挙期間中に「私一人あなた一人の話ではない」と述べていたことに触れ、詳細をただしました。平沢議員は、「私の責任は、大きいです。けれども、他の自民党の人が責任はないと私は思いません。やっぱりみんなあります。もっと謙虚になることが必要ではないか」と話しました。平沢議員が今回の政倫審に「喜んで出席した」と述べたにもかかわらず、これまで開かれた政倫審は出席を拒否していたことに「変遷したのはなぜか」と中谷議員は質問しました。平沢議員は、「先頭を切って大きな声を上げて先頭に立つということは、私は問題の性質からしてどうかなと思った」と答えました。