政府が提出した「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案」と「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律案」※1に対して立憲民主党等が提案した修正※2がなされた上で、5月30日に衆院本会議で全会一致で可決、6月16日には参院本会議で全会一致で可決・成立しました。

被害当事者らが求め続けた法改正

 刑法は2017年、強姦罪を強制性交等罪とするなど性犯罪を厳罰化する110年ぶりの改正が行われました。ところが性暴力事件をめぐり2019年、福岡や静岡、名古屋の地方裁判所で4件の無罪判決が相次ぎました。これに抗議するフラワーデモなどが全国に広がり、被害当事者や支援者らは同意のない性的行為を処罰する不同意性交罪の創設などを強く訴え続けてきました。

 2023年の改正では、強制性交等罪を不同意性交等罪に名称を変更します。これまで「暴行・脅迫」「心神喪失・抗拒不能」としてきた処罰要件に加え、「アルコール・薬物の影響(摂取)」、「(拒絶する)いとまの不存在」(突然襲われた場合)、「虐待に起因する心理的反応」(継続的虐待の影響)、「経済的・社会的関係上の地位に基づく影響力」(上司、部下など関係性の悪用)など8項目※3を例示しています。これらの要因によって被害者を「同意しない意思の形成、表明、全う」のいずれかが難しい状態にさせた場合を、新たな処罰要件とすることになりました。

※3
1 暴行・脅迫
2 心身の障害
3 アルコール・薬物の影響(摂取)
4 睡眠その他の意識不明瞭
5 同意しない意思を形成・表明・全うする(拒絶する)いとまの不存在(突然襲われた場合)
6 予想と異なる事態との直面に起因する恐怖又は驚愕
7 虐待に起因する心理的反応(継続的虐待の影響)
8 経済的・社会的関係上の地位に基づく影響力による不利益の憂慮(上司、部下など関係性の悪用)

5年後見直し規定の附則修正

 また改正刑法は、公訴時効を5年延長し、被害時に18歳未満の場合は、18歳になるまでの期間も加える。さらに子どもの被害を防ぐため、性交同意年齢を13歳から16歳に引き上げ、13歳から15歳の場合は加害者が5歳以上年長の場合に処罰し、わいせつ目的で子どもを手なずける行為も処罰する。盗撮被害を罰するため、性的画像の撮影や提供の罪も創設しました。

 立憲民主党は修正協議で時効の撤廃などを求めた結果、施行5年後の検討条項と被害申告の困難さに関する調査実施を明記した附則修正※2に与野党が合意しました。立憲民主党は、今後も残された課題※4について、被害実態を踏まえた性犯罪刑法等の改正を進めていきます。

◆政府提出原案※1

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◆可決した修正案※2

性犯罪刑事法改正案修正案要綱.jpg


◆可決された附帯決議※4

刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(衆).pdf

撮影罪法律案に対する附帯決議(衆).pdf

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