立憲民主党は7月22日、消費者部会(部会長:吉田統彦衆院議員)会議を国会内で開催。全国霊感商法対策弁護士連絡会の紀藤正樹弁護士から、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)等による霊感商法の消費者被害について話を聞きました。
西村智奈美幹事長は冒頭、党として対策本部を設置したことにも触れ、「国会として看過できない問題だと痛切に感じている。立憲民主党として真正面から取り組み、問題解決につなげていきたい」とあいさつしました。
紀藤弁護士は、今回は「消費者問題の立場」での話だと前置きした上で、安倍元総理銃撃事件をめぐっては、テロ対策、防犯上の問題をどうするかは政治的にも問われていると提起。「霊感商法の問題は、日弁連(日本弁護士連合会)の消費者委員会でも継続的に取り上げてきたが、社会的に宗教が絡むので消費者問題としては特に大きな問題にならない限り取り上げにくい」と述べました。
その上で、「ふつうの消費者事件は、事業体が倒産すればそれで終わるが、宗教団体は何年も続く。統一教会も、社会問題化して一部事業体が摘発されたにもかかわらず、今でも数万単位で日本人信者がいて、その人たちが『すべてのお金は神様に捧げないといけない』という発想で物事が動いている」と問題視。オウム事件の後、欧米諸国では議会として再発防止策の検討が進み、それらが抑止効果を生んでいる一方、日本では、宗教団体がやる霊感商法には消費者生活センターが政教分離、信教の自由があることを理由にタッチできないとする姿勢を取っていること、相談に行っても宗教の問題が絡むと行政が思考停止に陥ることが問題を根深くしているとの認識を示しました。
欧米では霊感商法や正体を隠した伝道はほとんどしていない中、日本だけ特に霊感商法が激しく、正体を隠した伝道が激しいのが現状だとも指摘。宗教法人が正体を隠して販売する場合は一般の法秩序に従う、消費者契約法の適用を受けるとした、1997年(平成9年)の奈良地方裁判所の判決を例に挙げ、「正体を隠したものや、信者ではない者からの献金など、霊感商法と言われる人を脅してとる行為は、問題意識を持っていただきたいし、行政的に適応させる考え方もありうると思う。ただそれだけでは足りず、取り消しなど特定商取引法上の規制がないと解決しない」などと述べました。
同連絡会の相談窓口集計によると、1987年から2021年までの霊感商法被害は、被害額1230億円以上、消費者被害は窓口がうまく機能していれば10分の1程度、機能していなければ100分の1程度と言われていることから、1兆円以上の被害があると推認できると説明。紀藤弁護士が最も重要だとする相談件数は3万4537件、その家族などを含めると膨大な被害者が埋まっているとして、今回相談してこなかった容疑者が事件を起こしたことに「力不足を痛切に感じている」と述べ、相談窓口の告知の在り方、事件を機に大きく取り上げられている二信者問題も大きな課題だと訴えました。
紀藤弁護士は、基本的には個人としての発言だとあらためて述べた上で、「この問題は、犯罪被害者の問題と、消費者被害の問題と、カルト問題。世界的にも稀有な事件が2度にわたって起きたことは、どこかにカルト的な問題に対する考え方の甘さ、規制がない、検討がされていないことになる。政党、政局の問題ではなく、消費者庁を作ったときのように超党派で議論すべき問題だ」「捜査中という理由は通用しない。憲政史上最長の歴史に残る首相の暗殺事件であり、曖昧な理由で放置するのは完全に間違っている。国会事故調のような、国会のなかに今回の事件調査委員会を超党派で作ってほしい。そのことが具体的な事案の検証と、それにより予防策がでる。予防策ができれば、最終的には霊感商法の問題も解決する。予防に勝る犯罪抑止策はないということにつながる」と訴えました。
出席議員からは「1999年奈良地裁の判決以後、政治行政がしっかり対応していれば今回の事件をも防ぐことができたのではないか」「なぜ日本だけが霊感商法にやられているのか」など質問が上がり、紀藤弁護士は、致命的な事件の前に起こしているさまざまな行政違反をきっちり摘発する必要性を強調。日本では規制がなく、誰も咎めないことから放置されてきたことなども問題視しました。