【談話】与党2023(令和5)年度税制改正大綱の決定にあたって
立憲民主党 政務調査会長
長妻 昭
与党は本日16日、2023(令和5)年度税制改正大綱を決定した。
最大の焦点となった防衛費増額のための財源確保策については、そもそも増額の具体的な内容や必要性を示すことなく増税議論を始めたことなど多くの問題が
あるが、特に復興特別所得税の“流用”については断じて容認できるものではない。課税期間を延長することで復興財源の総額は維持するとのことだが、未だ復興の途上にある被災地の方々の心情を踏みにじるものであり、強く撤回を求める。
また、中小零細事業者やフリーランス等の事業継続に深刻な影響を及ぼすインボイス制度(適格請求書等保存方式)については、免税事業者が課税事業者になる場合、消費税の納税額を抑える経過措置を設けることとされたが、全く根本的な解決になっていない。そもそもインボイス制度は、複数税率(軽減税率)下で適正課税を確保することを目的とするものだが、多くの専門家が現行の「区分記載請求書等保存方式」でも適正課税は可能であると指摘しており、もはや導入の根拠自体が薄弱である。また、消費税の逆進性対策は、高所得者に多くの恩恵が及ぶ現行の軽減税率制度は廃止し、給付付き税額控除の導入で対応すべきであり、そうすればなおさらインボイス制度の必要性は失われる。我々は本年3月の時点で「インボイス制度廃止法案」を国会に提出しており、引き続き制度の廃止を求め続ける。
NISA(少額投資非課税制度)の拡充は、我々も求め続けてきたものであり、基本的には歓迎したい。しかしながら、格差が拡大し、日本社会の特徴とされてきた「分厚い中間層」が消失した現下の状況に鑑みれば、格差是正策も同時に打ち出すべきだ。与党は所得30億円超の超高額所得者を対象にした課税強化策を打ち出したが、これでは不十分だ。いわゆる「1億円の壁」の問題を解消するためには、金融所得課税の累進性強化が必要であり、将来的な総合課税化を見据えた上で、当面は分離課税のまま超過累進税率を導入するなど、より抜本的な改革に取り組むべきである。
その他の内容も含めて、今回の与党大綱は全体として課題山積である。立憲民主党は、来たる通常国会での税制改正議論にあたり、政府・与党の問題点をただしながら、公平・公正な税制の実現を求めていく。