衆院予算委員会で「令和5年度一般会計補正予算」基本的質疑の2日目となる11月22日、(1)総理の政治姿勢(2)物価高対策(3)増減税――について取り上げた党最高顧問の野田佳彦議員は、防衛費増額や少子化対策について、重要な政策だからこそ財源の議論を先送りすることなく進めるべきだと訴えました。

 野田議員は、自民党5派閥が政治資金収支報告書を過少記載したとして告発された問題をめぐり、委員会冒頭の岸田総理の発言からは危機感を感じられなかったとして、「これは氷山の一角ではないか。もっとさかのぼれば継続的に構造的に行ってきた可能性がある。なぜこんなことが起こっているのかを解明するところまでが調査だ。国会審議に供することがなかったら意味がない。そこまで責任をもってやりきる覚悟を示してほしい」と求めました。

 これに対し岸田総理の答弁は「今回ご指摘いただいているのは、政府とも違う自民党とも別の政治団体の政治とカネの問題だが、人間が重なっているため幹事長に説明を尽くすよう指示をした。それぞれのケースに応じて、それぞれの立場から信頼回復に向けて努力していくことは大事だと思う。適切に説明が行われるよう徹底したい」とするにとどまりました。

 野田議員はまた、9月の内閣改造後、政務三役の辞任が相次いでいることについて、「適材適所という言葉がこれほど貶められた事態はない。あまりにも真逆過ぎた」と批判。加えて、岸田総理を含めて閣僚のほぼ半分が世襲、総理に至っては30年間で自民党出身の総理大臣で世襲でないのは菅前総理だけであることに、「適材が世襲ばかりと言うのは異常な事態ではないか。岸田総理は三世、ジュニアに委ねると四世になる。ルパンだって三世まで。歌舞伎役者ではないのだから」と述べ、志ある人が地盤・看板・かばんがないことであきらめることがないよう世襲問題に取り組むことが令和の最大の政治改革ではないかと主張。立憲民主党が臨時国会で提出した政治資金世襲制限法案への理解を求めました。

 加えて、北朝鮮の「軍事偵察衛星」打ち上げに備え、破壊措置命令が継続されている時に、たびたび政治空白を生じさせる解散風が吹いたことを問題視。2021年衆院選挙の公示日に北朝鮮が弾道ミサイルを撃った際、総理、官房長官ともに遊説のため不在でNSC(国家安全保障会議)が開けなかったことにも触れ、「過去に危機管理より政局を優先したことがある。そういうことの積み重ねだ」と総理の姿勢をただしましたが、岸田総理は「当時の対応は最善の対応をしたと思っている」と強弁しました。

 政府の物価高対策については、経済対策の取りまとめや補正予算の提出が遅すぎると指摘。岸田総理は昨年からさまざまな対策を講じていると縷々説明しましたが、野田議員は「政治は結果責任。危機感を持って下支えすることをなぜやらなかったのか。効果がなかったから(7〜9月期の国内総生産速報値が)マイナス成長になっている」と切り捨てました。

 また、政府の物価対策に対し日銀の金融緩和政策は物価を上げる対策であることから、「物価を上げたいのか下げたいのか分からない」とその整合性を問いました。「同じように矛盾しているのは増税と減税が一体となって語られていること」だと所得税減税の評価が低いことに言及し、「可処分所得が増えるように下支えをすれば消費に回るということだと思うが、防衛増税が控え、少子化対策の負担増も確実ななか、減税されてもそのお金を消費ではなく貯蓄に回そうというのが国民感情ではないか。そろばん勘定と国民感情がずれている。人情の機微が分かっていないのではないか」と断じました。

 防衛装備の充実や自衛官の待遇改善のための一定の防衛費増額、少子化対策、子育て対策の重要性は理解するとの立場を示した上で、「いつまでたっても負担がどれだけか分からないのは国民にとって居心地が悪い」と指摘。「岸田屋という飲食店に入った。いろいろメニューが出ているが、みんな金額に『時価』としか書いてなかったら消費者は不安になる。そういう総理の財政運営があるために減税と言っても響かない。子育て支援に3.5兆円、防衛費5年間で43兆円と、兆単位の財源作りなのに先送りしすぎて国民を不安にしている。『兆』という漢字は『しんにょう』という旁(つくり)を入れると『逃げる』に、手偏を付けると『挑む』になる。挑むか、逃げるかは、わが国にとって決定的な違い。『逃げよう』『先送りしよう』が岸田総理の政治姿勢として国民に映っている。国民は、総理を適材として見ていない」と述べました。

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