衆参両院で1月24日、能登半島地震への対応などを議論するため、閉会中審査として予算委員会で集中審議が行われました。被災当事者でもある近藤和也衆院議員は(1)断水の解消(2)被災者生活再建支援制度(3)仮設住宅(4)棚田、漁業の再生(5)グループ補助金制度――等について政府の見解をただしました。近藤議員は党の石川県連代表で、能登地方を含めた衆院石川3区が選挙区です。これまでも被災地域を回り、情報を収集、被災者や災害ボランティア団体等から要望を聞き取り、党や政府につないできました。

 1月1日、震度6を観測した穴水町で被災した近藤議員は、4日から七尾市に戻り各避難所を回るなか、当初は水や食料、毛布、暖房器具、次に仮設トイレやお風呂、現在では「洗濯機を置いてほしい」「壊れた家からまだ使える家財道具を出したいので、それを置く場所(コンテナ等)を設置してほしい」などの要望を受けていると紹介。直近1週間では特に「断水の解消」「仮設住宅の早期整備」「経済的支援(お金)」の3つ、加えて「農林水産業の再生や旅館や飲食店、製造業など生業の再開はできるのか」「2次避難で住民不在になると空き巣に入られ放題になる。地域のさらなる警備強化を」といった声があると述べました。

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 断水の解消については、岸田総理が質疑のなかで前倒しの可能性に言及したことを評価した上で、例えば七尾市では4月以降の復旧見込みとされていることから、「水の問題は命の問題。過疎地を救うという大変重い問題であり、発災から3カ月という、災害関連死を最も注意しなければいけない時期。なんとか年度内に水が来るようにするとの答弁をお願いしたい」と要望。岸田総理は「地元の期待や声をしっかり受け止めながら努力を続けていきたい」と答えました。

 立憲民主党・日本維新の会・国民民主党が共同での提出を合意した「被災者生活再建支援法改正案」については、被災者生活支援再建支援金の倍増に加え、損壊程度に応じた最大100万円の「基礎支援金」を引き上げることで、生活手段である車を手に入れることができると意義を強調。「被災者生活再建支援金は、被災者を側面的に支援するためのお金。これ以外のさまざまな支援、例えば災害復興住宅融資あるいは税制上の特例対応といった制度と組み合わせることによって、住宅や車等への支援を考えていくことは重要。そういった点で総合的に検討している」などと答えた岸田総理に対し、近藤議員は、「被災された方に保険や共済、融資を活用せよというのは酷な言葉。70歳、80歳、90歳の人がお金を借りられますか。無理ですよ。貸してくれないですよ。返せないですよ。何とか被災者の方に思いを寄せていただきたい」と訴えました。

 仮設住宅については、被災者が望む故郷での暮らし、小学校の単位でのコミュニティを維持するには石川県が発表した3千戸の住宅支援では不十分であり、1万戸の整備が必要だと主張。災害公営住宅については「ほとんどが持ち家だったなか、災害公営住宅の1万5千円の家賃がどれだけ苦しいかご理解いただきたい」と負担軽減を求めると、岸田総理は「地方公共団体が災害公営住宅の家賃軽減を含め被災者の実情に応じたきめ細かい対応ができるようになっている。政府としても被災実態を踏まえて自治体の取り組みを支援していく」と応じました。

 近藤議員はまた、世界農業遺産になっている能登の里山里海の地形が変わってしまったことに、「田んぼ、山を作り直す。そして海を作る。これは個人や事業者ではどうにもできない。こういった地形を作っていく、直していくことは国の責務だ」と指摘。しかしながら岸田総理は「こうした風景を戻すためにも地域におけるさまざまな生業や生活をしっかり再建していくことが重要」と述べるにとどまりました。

 中小企業等グループ補助金(なりわい再建支援事業)については、交付決定には申請・採択、県から国への復興計画の提出が必要であることから、一日でも早く再開したいという事業者に対し、「事業再開に踏み出せば遡及をして支援をしていくという答えがほしい」と求めると、岸田総理は「これまでの災害時の支援では発災日に遡って補助金の対象とすることが可能とされていることから今回の支援においてもそのように対応を検討したい」と答弁。近藤議員は「これで町に明かりがつきやすくなったと思う」と述べました。

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 予算委員会の質疑終了後、記者団の取材に応じた近藤議員は、「断水の解消について、一歩を踏み込んだ(岸田総理の)答えをいただけたと思う。被災者生活再建支援法については、微妙ではあったが全体的な空気感を作ることができたのではないかと考えている」と一定の評価をしました。

 その一方で、それ以外の支援策について、「役所の方々が考えたところをさらに乗り越えた答弁は無かったのかなと思う。もっと踏み込んだ心のこもった答えが、今後出てくることを望みたい」と感想を述べました。