東日本大震災・原発事故 10年を超えて それぞれの「あの日」から
岡本あき子 衆議院議員(宮城県1区)

震災時、仙台市議を務めていた岡本あき子議員は、予算委員会審議の最中に被災。議会が一時休会扱いになったことを受け、地元に戻り、避難所になっている小学校や中学校を回り、被災状況を確認、情報収集、支援活動に尽力したと語る。

ジェットコースター並みの尋常ではない揺れ

――発災当時について 震災時、仙台市議会議員を務めており、予算委員会の審議中でした。ジェットコースター並みの揺れがあって、もう尋常ではないことから委員会が一時休会扱いになりました。控え室に戻ったら、什器類とか机とか書類とか、大変なことになっていたので、すぐ地元の太白区に向かいました。途中では停電していたり、信号も全てついていませんでした。道路が陥没しているところもありました。地元に戻って、避難所になっている小学校や中学校、近隣の避難所を回って、被災状況を確認したり、情報収集したり、お世話をさせていただいたりしました。

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――避難所の様子について 地元まで津波は来ませんでしたが、マンションが多い地区なので、停電になり、エレベーターが動かなくなりました。それからタンクの水をポンプで汲み上げられないので水が止まりました。高齢の方や小さいお子さん連れの方などが避難した小学校体育館は、600人までの収容を想定していたのですが、1000人以上が避難し、横になれず、体育座りしかできないほどでした。当初、皆さんはほとんど寝ることのできない状態で過ごしました。

 避難所設営については、以前から宮城県沖地震が来ることを想定し準備していたので、町内会中心にすぐに立ち上がりました。ただし、女性は避難所の運営にほとんど参画できず、炊き出し担当という位置づけでした。避難所を回っている私に、赤ちゃんを連れて避難してきた母親から、皆さんが物資が足りていない中で「赤ちゃんのモノを求めていいんだろうか」とか、ある女性は生理用品が必要だとなかなか言えなくて、「何とか手に入らないか」と必死に頼んできました。そのほか、洗濯機は使えるものの、女性の下着などを洗って干す場所がないとか、あるいは着替えや授乳したりする場所に困ったりしていました。パーテーションもない雑魚寝状態だったので、全然知らない男性が隣にいる中で寝泊まりすることに不安を感じるなど、表立って言えない女性のさまざまな困難さを強く実感しました。

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孤独の状態、精神的ケアが今後の大きな課題

――被災者の現在のニーズについて 残念ながら震災前と比べて、1ランク生活レベルが下がったところからのスタートにならざるを得ませんでした。10年が経ち、宮城県では復興住宅(災害公営住宅)は、今年度内に全て完成しますので、少なくともプレハブの仮設住宅での生活は解消されます。ただし、今まで戸建てにいた方々が、突然10階建てのアパート暮らしになるとか、今まであった庭がベランダしかなくなってしまう生活になる中で、孤独の状態、経済や健康面、精神的なケアが、今まさに課題になっています。悲しいことに仮設住宅の時よりも復興住宅での孤独死数が上回ってしまっています。10年前に命が助かり、恒久的な住まいを得たのに、ここで天寿を全うできずに生命が損なわれることがあってはなりません。

 こうした問題に対応する長期的なケアが大きな課題です。これには自助も公助も限界があるので、やはりNPOとか、外部の民間の力をお借りする共助がとても有効です。こうした活動を財政面を含めて支援できるよう国に求めているところです。復興予算は、9割がハード事業向けで、ソフト事業は1割にすぎません。震災から10年を超えると、さらに予算が縮小するので、長期の需要が見込まれる必要なソフト事業への予算をしっかり獲得していかなければなりません。土地や建物がある程度元に戻っても、人が住まなくなったり、住めるような状況でなくなったり、健康を害したり、コミュニティが壊れたりしていては、決して復興したとは言えません。

災害時、生命と財産を守るためには地方分権

――国政に転出した動機について 特に災害の時に感じたのですが、危機管理上、生命と財産を守らなければいけない時こそ、地方分権が必要だということでした。震災時、福島県と宮城県で起きたことは全く違いましたし、沿岸部と内陸部で起きたことも全く異なりました。各地の被災状況を正確に把握しないまま、国が被災地のニーズに合致していない指示を各地域に下すようなことがあってはなりません。むしろ現場に権限を委譲して、現場が動きやすくなるよう国がバックアップする。財政、人材を含めて支援することが、危機管理上の国の本来の役割だと思います。こうした現場の声を反映したいというのが1つの動機です。

 また、宮城県では、女性の視点や、マイノリティなど、多様な視点を災害対応に採り入れるべきとの認識に至り、いろいろなマニュアルやルールができています。果たして全国の他の地域で同様に展開されているのだろうかという疑問を持ちました。東日本大震災から学んだことを全国にもっと広めていきたいし、参考にしてもらいたい。この2つの思いから国政に挑戦をさせていただきました。

造成宅地滑動崩落緊急対策事業、権限移譲を実現

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――これまでの取り組みの成果について 国会議員になる前ですが、宅地が崩れ落ちたところを元に戻すために「造成宅地滑動崩落緊急対策事業」を作りました。当時、税金を私有財産である宅地に入れることができないことから支援策の対象にならないと言われました。ところが丘陵部が軒並み崩れて、家が真っ二つに割れたり、住める状況でなくなっていました。

 一軒一軒は私有財産ですが、そういったケースが30軒、40軒にもなったので、こうした土地に対して税金を投入して復旧をするという制度を提案しました。沿岸部だけでなく、宅地でも被害に遭った方々がいらして、仙台市議としては、宅地被害を見過ごしてはいけないと声を上げていったのです。

 このため、仙台市長、宮城県知事に何度も陳情に行きました。当時、民主党政権で内閣官房長官だった枝野幸男代表に宮城県の宅地被害の状況を視察してもらいました。被災地からこういう制度が必要だという声を出して、衆院議員だった郡和子仙台市長が粘り強く交渉し、民主党政権が判断し新しい制度創設につながりました。

 これは政令市に限定されていますが、災害時の県の権限についての政令市への一部移譲が実現しました。この権限移譲は、仙台市議会の委員会で繰り返し求めて実現したものです。全面的な分権にはなっていませんが、避難所の運営や物資配付、災害初期の対応等については、権限委譲が実現しました。

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支える人たちを支援する制度を充実させたい

――国政で力を入れていきたいこと 権限委譲はまだまだ道半ばです。緊急時だからこそ、現場に即した早急に対応できる体制が敷けるよう制度改正を求めていきます。また、私たちが法案を出している生活再建支援金の拡充についてですが、いざ被災した方々が生活をもう1度取り戻すというのは、並大抵のことではないと思います。その状況ですでに今の生活再建支援金額は不十分です。また他の災害でも適用になっていますが、家を失った方がもう1回、住まいをきちんと取り戻せるかというと、やはり不十分なところがあります。

 生活をしっかり取り戻して、再び人生を健やかに過ごせるという元気を回復して初めて復興だと思います。個人の健康の問題ですとか、コミュニティが崩れていてなかなか周りに声を出せる人がいないとか、さまざまな生活上の問題を抱えています。その中で孤独死だけは、発生も増やしてもいけません。

 もう1つは、地域コミュニティがきちんと機能する復興を目指します。それこそ風景は出来上がりましたが、人がいないとか、人が活動してない、生活していない、そういう状況を復興とは言えません。暮らしを取り戻して、「つらいことがあったけど、もう1回ここで人生を全うしよう」と思ってもらえる。そんな町を作っていくのが私の役割だと思います。

――自分の役割について 被災から復旧、復興の過程において、被災者だけではないNPO等の方々の力を借りる。そういう仕組みは、私の経験上も、とても役に立ち力になりました。行政が全部面倒を見るとか、あるいは自分たちだけで頑張れではなくて、そこをつないでくれる人の存在、そういう機能を担ってくれる存在が非常に必要だと思います。例えば、女性の方々が避難所で下着とかを洗濯できても、干す場所がない。そういうときに、女性の立場に立ったボランティアの方々が、その洗濯を引き受けてくれたり、アレルギー対応の食事の情報提供をしてくれたり。あるいは、女性の視点でいくと、避難所では贅沢品だと言われますが、基礎化粧品を届けてくれたり。こうした周りで支える方々の存在は、非常に大きい。そういう方々やNPOをさらに支援をしていきたいと思います。

 ボランティアの方々は元気と勇気を与えてくれます。一緒に前を向いていこうと声をかけてくださいます。それが被災者を1人にしない、孤独死防止にもつながる活動になります。こうした一歩外側で支える方々の存在は、非常に大きいと思います。これが風化防止にもつながります。これを行政が全部担うとしたら並大抵ではありません。こうしたノウハウが全国に広がることを期待しています。それを支援していくことが自分の役割だと思います。女性でもありますので、一般的なマニュアルに載っていない、きめ細やかな部分を、ボランティアの方々と一緒に埋めていく。あるいはそうした活動を防災手引きに反映する、そういう活動をしていきたいと思います。

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