日本のハラスメントをめぐる法制度は不十分
ハラスメントは個人の尊厳や人格権を傷つける行為です。
日本では、パワハラ、セクハラ、マタハラについて別個の法律で、事業主に対する防止措置義務を定めています。そもそも、直接的にハラスメントを禁止する規定がありません。
パワハラについては、労働施策総合推進法改正により、セクハラについては、雇用機会均等法により、マタハラについては、均等法と育児介護休業法により、それぞれ事業主は防止対策が義務付けられています。ハラスメントの防止のみならず、ハラスメントが起きた際の相談から事実調査、その後の対応まで、企業内で行うことが想定されています。監督官庁である労働局は、企業に対して、指導・助言・勧告を行うこととなっており、直接被害者救済に関与しません。
企業が相談窓口を設けていても、相談した労働者は、いずれのハラスメントについてもわずか5%程度。企業の相談窓口は労働者にとって利用しにくいことが明らかです。そしてわずかに相談した方も、対応してもらえない、放置される、逆に不利益な人事の取り扱いを受けるなど二次被害も生じています。
また、就活セクハラも深刻です。保護対象は労働者になっているため、雇用されていない就活生やインターンをハラスメントから守る義務は雇用主に課されていないことも問題です。カスタマーハラスメントについても、雇用関係がないカスタマーハラスメントも対象外になっています。
ハラスメントを禁止する規定が必要
国際労働機関(ILO)では、2019年に「仕事の世界における暴力及びハラスメントの撤廃に関する条約」(ILO第190号条約)が採択されました。この条約では、ハラスメントを身体的、心理的、性的又は経済的損害をもたらす行動と慣行等と定義し、法的に禁止することを求めています。
日本政府は採択には賛成でしたが、批准には消極的です。この条約では、細分化された日本のハラスメント法制と比較すると、ハラスメントの定義は広く、適用範囲も、労働者だけに限らず、フリーランスや就活生、実習生、訓練生など働く可能性がある人も含めています。
行うべき政策も、企業にハラスメントの防止対策をさせるだけではなく、法律でハラスメントを禁止し、被害者の救済・支援をしなければならないとしています。
ハラスメントごとに別々の法律で対応するやり方は、しばしばハラスメントが重なりあって生じる実態を踏まえたものと言えません。また、雇用関係を前提にすると、上記の通り、取りこぼされるハラスメントがあります。
事業主のハラスメントの防止措置を定めるにとどまらず、直接的にハラスメント禁止を明記する規定が必要です。ハラスメントが重大な人権侵害であり許されない行為であることがより明らかになるとともに、個人が被害救済を求めたアクションを取りやすくなります。
立憲民主党は、ハラスメント禁止条約の批准、あらゆる形態のハラスメントを禁止する法制の整備を目指します
〇立憲民主党は、ILOのハラスメント禁止条約の批准を目指します。
〇パラハラ、セクハラ、マタハラなどあらゆる形態のハラスメントを禁止する法制の整備を目指します。
○フリーランスや就活生、あるいは、カスタマーハラスメントなど、雇用関係にない被害と加害についても、防止と救済の対策の整備を目指します。
○事業主に対してハラスメントの防止措置義務を課すにとどまらず、ILO条約に倣って、包括的なハラスメントを定義した上、禁止を明確にする包括的な禁止法の整備を目指します。