立憲民主党は2022年3月にフリーランスを保護するための政策提言を取りまとめる等フリーランス支援の法制化を訴えてきました。当事者の方々が声をあげ、政治の動きにつながり、4月28日に「フリーランス・事業者間取引適正化等法案」が成立しました。

1. 法案が成立して何が変わるのか?

○労働者を保護する制度
 企業に雇われる「労働者」については、労働関係法によって、権利を保護するための制度が整備されています。
 ・トラブルについて労働基準監督署へ相談できる
 ・休業や失業の際、労災保険・雇用保険等の給付を受けられる
 ・職場でのセクハラやパワハラが規制されている
○フリーランスのトラブル
 以上に対し、労働者にあたらず、自営業者として仕事をするフリーランスは、
 ・報酬が不当に低く決定される、報酬の支払いが遅れる
 ・仕事の内容が一方的に変更される
 ・継続案件が一方的に打ち切られる
 などのトラブルを抱えることがあり、労働基準監督署のような相談窓口がなくトラブルを解決できない人もいる実態がありました。休業や失業の際の補償の制度や、ハラスメントについての規制もありませんでした。
○法律による改善点
 フリーランス支援法は、フリーランスのトラブルを解決・防止するため、フリーランスに業務委託をする事業者に対し、
 ・契約内容を書面等により明示することの義務付け
 ・報酬を一定期間内に支払うことの義務付け
 ・報酬を相場より著しく低く定めることの禁止
 ・仕事の内容を変更等してフリーランスの利益を不当に害することの禁止等を定めるものです。
 事業者がハラスメント対応のための措置をすべきことや、国が相談対応等の体制整備を講ずるとの規定もおかれました。休業や失業の場合の社会保障については積み残しとなりました。
○偽装フリーランスについては未解決
 フリーランスに関しては、そもそも、本来労働者として保護されるべき人が自営業者であるかのように偽装されている場合がある、と指摘されています。
 アマゾンやウーバーなどプラットフォームと契約する事業者等について、ILO198号勧告を参考に労働者性を推定する立法を検討すべきとの指摘があります。

2. 立憲民主党の賛否と理由

  立憲民主党は政府案の課題等を附帯決議に盛り込み賛成しました。
【理由】
 これまでフリーランスは、労働基準法が適用されず、身分や権利の保護が十分でないため不利益を被る危険に常にさらされてきました。この問題の解決に向けて、立憲民主党は、2022年に、フリーランスを保護するための政策提言を取りまとめました。
 本法律は、フリーランスの保護や業務トラブルの回避に道を開くものであり、当事者が待ち望んでいた新法であることから立憲民主党は賛成しました。
 一方で、国会審議を通して明らかになった政府案の法律の不十分な点、①業務委託の際に明示すべき契約条件の内容が不明確②委託事業者の禁止項目の不足③労災保険や雇用保険、健康保険などフリーランスの社会保障対策がない④労務提供型プラットホームは本法の適用対象外となっている――など、残された課題については、質疑のなかで確認するとともに、附帯決議に反映させました。

衆議院内閣委員会附帯決議

※一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会

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3.相談窓口
〇フリーランス・個人事業主の方が、契約上・仕事上のトラブルについて弁護士に無料で相談できる相談窓口 「フリーランス・トラブル110番」 

4. フリーランスの実態
〇2021.11.12公表『新・フリーランス実態調査 2021-2022年版』によると
 「フリーランス人口は1,577万人、経済規模は23.8兆円。 2015年と比較すると、人口は68.3%(640万人)、経済規模は62.7%(9.2兆円)増加。 2020年1月の調査ではフリーランス人口は1,062万人、経済規模は17.6兆円だったことから、コロナ禍でフリーランス市場は大きく拡大」しました。

〇2022年9月16日開催「労働政策審議会雇用環境・均等分科会」「資料」の「フリーランス・トラブル110番」の相談実績相談件数は2022年8月だけで642件。 相談内容は「報酬の支払い」や「契約内容」が全体の5割強を占めています。

〇一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会
・「フリーランス白書 2023
・「フリーランス白書2021 第2章第4部 社会保障に関する課題感」(P.42~)
・「フリーランス白書2020 第5章 フリーランスの契約トラブル実態調査」(P.81~)

5. 立憲民主党の動き
2022年
2月3日「フリーランス支援PT」を設置
2月18日 フリーランス支援プロジェクトチームの1回目会合を開催(一般社団法人日本芸能従事者協会)
3月3日 フリーランス支援PT「出版業界におけるフリーランスの現状と課題」についてヒアリング(ユニオン出版ネットワーク、 日本出版労働組合連合会(出版労連)
3月24日 フリーランス支援PTは文化庁長官へ申し入れ 
4月21日 「芸能従事者の過労自死」をテーマにご遺族と意見交換
4月25日 フリーランスの現状と課題について連合からヒアリング 
4月28日 フリーランスの現状と課題についてヒアリング 一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会
10月22日 「フリーランスワーキングチーム」設置
10月26日 インボイス制度導入反対集会で、末松・落合両衆院議員があいさつ 
2月8日 菅俊治弁護士よりヒアリング
12月9日 立憲民主党として「2023(令和5)年度税制改正についての提言」をとりまとめ
「法人の欠損金の繰越控除期間が10年間とされていることに鑑み、法人・個人間の制度格差・不公正を是正する観点から、青色申告を行うフリーランスや個人事業主については、純損失の繰越控除期間(現行3年間)を延長すること」を明記
2023年
3月23日 関係団体からヒアリング(日本フードデリバリーサービス協会、プロフェッショナル&パラレルキヤリア・フリーランス協会、日本芸能従事者協会)よりヒアリング
3月28日 関係団体からヒアリング(ユニオン出版ネットワーク、日本芸能従事者協会、フリーランス協会、川上資人弁護士)
3月30日 内閣部門・厚生労働部門合同会議、「次の内閣」にて態度決定。「政府案に賛成するとともに、課題等については国会審議で確認し、附帯決議に反映させることをめざす」

6. 国会審議
4/5衆院内閣委員会
4/6衆院本会議
4/21
参議員本会議、塩村あやか参院議員が代表質問
4/25参院内閣委員会

4/27参院内閣委員会

4/28参院本会議 

7. 参考
フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ(厚生労働省)
フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン