立憲の政策がまるごとわかる政策集Policies 2022

多文化共生社会(外国人)

基本法制定と多文化共生庁創設

基本的な考え方

  • わが国は、すでに本格的な人口減少社会に突入し、特に地方での過疎化や高齢化が加速化する中で、農林漁業など第一次産業、地場企業の技術者や開発者、医療・介護・福祉・子ども子育て・教育などを含むベーシック・サービスの担い手などの育成や確保が大きな課題となっています。
  • そのため、国内ではすでに170万人以上の外国人労働者が経済活動を担い、学齢期の子どもを含め約280万人の外国籍の人が生活者として在留していますが、活力ある日本社会・経済を維持・増進していくためには、今後も、多くの外国人労働者に夢と希望をもってわが国に来日し、安心して働いて生活することのできる環境の整備が必要不可欠です。
  • 今回のコロナ禍において、日本の外国人受け入れ制度の制度的な欠陥が浮き彫りになりました。社会や経済を支える人材の不足が世界的に広がり、人材獲得競争が激化する中、このまま問題を放置すれば、いずれ日本が選ばれなくなるという強い危機感を国民全体で共有し、日本で働き、生活してもらうためのシステムを早急につくりあげなければなりません。
  • 政治の責任として、20年後、50年後の日本社会をも見据え、外国人労働者や生活者の人権を保護し、わが国へ移住して安心して働き、生活し、共に学び、社会・経済の担い手として定住してもらえる外国人受け入れ制度の構築およびそのために必要な多文化共生社会政策を実現します。

多文化共生社会実現のための基本法の制定

  • 人権の尊重を基本とした在留外国人を包摂できる社会の実現と、在留外国人の増加による社会経済情勢の変化への配慮を基本理念とする「多文化共生社会の形成」を目指す「多文化共生社会基本法」を制定します。

国および地方における多文化共生社会基本計画の策定とその実践

  • この法整備に基づき、国や都道府県・市町村は①国籍または社会的文化的背景が異なることを理由とする差別の禁止、②差別に関する相談および紛争防止等のための体制の整備、③教育・啓発、交流促進等による国民と在留外国人の関心と理解の増進、④日本語等の習得機会の確保、住居の確保に関する支援、情報提供等による生活の円滑化、⑤学齢期の者の就学等の未成年の在留外国人に対する教育の機会の確保、などの施策について基本計画を定め、その施策を推進します。

多文化共生庁の創設と一元的な政策の推進

  • 「多文化共生庁」を創設し、国籍や民族の異なる人々が、互いに文化的・社会的背景等の違いを認め合い、相互理解と協調を基本に社会の対等な構成員としてお互いさまに支え合い、ともに生きる「多文化共生社会」を実現します。これにより、国と地方自治体とが密接に連携・協力しつつ、多文化共生政策に一元的に取り組むことのできる環境を整備します。

労働・教育・地域交流

外国人労働者の受け入れ制度の抜本改革と権利の保障/保護

  • 人権侵害や労働法令違反の頻発が続いている現行の「外国人技能実習制度」や「外国人留学生の資格外就労制度」等を抜本的に見直し、外国人労働者の権利が国内労働者と同等に保障され、保護される環境を整えるため、新たに「外国人雇用/労働許可制度(仮称)」を制定します。
  • 経済連携協定(EPA)に基づく看護師や介護福祉士の受け入れ、国家戦略特区による家事支援外国人材の受け入れ制度などについては、新たな雇用/労働許認可制度の創設にあわせ、抜本的な見直しを行います。
  • 外国人労働者を雇用する事業主については、雇用上の責任を果たすことはもとより、地域コミュニティとの橋渡し役など、多文化共生社会の推進のための環境づくりに努めることを求めていきます。

外国人労働者の日本語/コミュニケーション能力向上のための支援策

  • 日本で就労、生活する外国人については、「多文化共生社会」の構成員として職場や地域での意思疎通、コミュニケーション手段の確保と、異文化や慣習等の相互理解の促進が必要不可欠であることから、①外国人在留者労働者側には職業上および生活上必要な日本語能力などの習熟を求める一方、②迎え入れる日本側(国、自治体、雇い主等)にはその習熟機会の提供や保証と、応分のコスト負担を求める新たな制度を創設します。

自治体への支援と連携・協力

  • 外国人受け入れ制度の構築・整備に当たっては、特に人材確保が困難な地域に必要とされる人材が集まるよう、人材の確保や育成、生活支援や交流事業、教育や多言語に対応したワンストップセンターの整備などに積極的に取り組む自治体等に対する制度上・財政上の支援策を検討します。

外国人の子どもたちの教育の保障

  • 外国人労働者の子どもについては、学校教育の機会を保障するとともに、その受け入れ体制の整備を行います。
  • 中長期に渡って日本で暮らす外国人が増加していることから、外国人の子どもの就学機会の確保や就学支援、学習支援を行います。
  • 外国をルーツとする子どもたちの幼児教育を含めた教育のあり方を検討するとともに、不就学や不登校の問題に取り組みます。
  • また、海外における日本語教育の推進を図るとともに、日本語学校の普及を進めます。

社会保障の確保

  • 外国人労働者が国内で安心して働き、生活できる環境を確保するため、就労環境の整備とあわせて、外国人労働者およびその家族についても、社会保障制度の担い手としての位置付けを明確にし、制度への参加を確保します。また、在日外国人の無年金問題を解決するため、特定障害者特別障害給付金制度の改正および老齢基礎年金相当の給付金を支給する制度をつくります。

住民自治と多文化共生

  • 外国人の政治参加や行政サービスの参画のあり方について検討を進めます。とくに、地域での外国人の増加により公共サービスのニーズが変化していることを踏まえ、意見・要望を反映する仕組みづくりを目指します。

多文化共生教育や人権教育の推進

  • 多文化共生社会の実現に向けて、地域社会や学校での多文化共生教育や人権教育の実践、相互に交流する機会の確保などを制度的に位置付ける方向で、必要な措置を講じます。

在留制度の見直し

  • 就労目的で来日する外国人について「労働者」としての在留を認め、「生活者」として安心して暮らしを営むことができる体制や環境の整備を段階的に進め、外国人労働者を「労働者」として受け入れる新たな外国人労働者雇用/労働の許認可制度を創設します。
  • 現行の就労に関わる各種在留ビザについては、上述の許認可制度の創設に合わせて抜本的な見直しを行います。
  • 特定技能制度にとどまらない抜本的な外国人労働者受け入れのあり方について、①地方の人材確保、②客観的かつ合理的な受け入れ人数の上限の設定、③適切な外国人労働者の待遇、④在留資格変更時の一時帰国、⑤現行諸制度の抜本的見直し、⑥適切な社会保障制度と教育制度、⑦家族帯同など人権的な配慮、⑧多文化共生施策の充実の8項目の観点から早急に再検討します。
  • 在留特別許可に関する許可基準を明示するとともに、児童の最善の利益の考慮、児童が父母と分離されないことへの配慮、家族がそろって在留できるような配慮等を行います。
  • 出入国管理制度の見直しを行い、多文化共生社会を実現する観点から、出入国管理行政と外国人労働者と生活者の支援・保護行政を区分けし、法制度上の措置を講じます。

難民等保護

  • 国際法違反との強い批判を受けている現行の難民認定制度・収容送還制度を抜本的に見直し、わが国が締約国となっている「難民の地位に関する条約」や「国際人権規約」等の国際ルールに基づいて、保護すべき難民申請者や補完的保護対象者等を適切に保護できる新たな難民認定・保護制度を確立するため、政府から独立した第三者機関である「難民保護委員会」の創設等を柱とする難民等保護法案の制定をめざします。

差別解消

包括的差別禁止法の制定

  • 日本は国連人種差別撤廃委員会から再三にわたり厳しい勧告を受けています。国際人権基準に立つ包括的な差別禁止法の制定を検討します。

個人通報制度

  • 人権条約に認められた権利を侵害された個人が、条約機関に直接訴え、国際的な場で救済を求めることができる個人通報制度を定めている関係条約の選択議定書を日本が批准することを目指します。

政府から独立した人権救済機関の構築

  • あらゆる人権侵害行為を受けた人を救済することのできる独立性を有し、公正中立さが制度的に担保されたより実効性のある人権救済機関(「人権委員会」(仮称))を設置し、救済活動を行う仕組みを創設します。

ヘイトスピーチ対策の強化

  • 2016年の第190回通常国会で法律が作られた「ヘイトスピーチ対策」への取り組みを拡大し、人種・民族・出身などを理由とした差別を禁止する法律の制定など国際人権基準に基づき、差別撤廃に向けた取り組みを加速します。
  • インターネットを利用した人権侵害を許さず、速やかに対応できるような法改正、窓口創設を実現します。
  • 刑法の名誉毀損罪の法定刑の上限は懲役3年となっていますが、現状の人権侵害の深刻な状況に鑑みて、上限の引き上げを検討します。(再掲)
  • 不正アクセスによるインターネット上の人権侵害について、プロバイダが被害救済のための対応をとることを義務付けます。