立憲の政策がまるごとわかる政策集Policies 2022

障がい・難病

総論

  • 「障害者の権利に関する条約」の批准のための一連の障がい者制度改革の成果を踏まえつつ、同条約を誠実に履行するため、条約の規定に基づいて、住み慣れた地域で、誰もが居場所と出番がある社会を実現します。
  • 障がいのある人のニーズを踏まえ、障がい種別や程度、年齢、性別を問わず、難病患者も含めて、家族介護だけに頼らずに、障がいのない人とともに、安心して地域で自立した生活ができるよう、仕組みづくりや基盤整備、人材育成に取り組みます。
  • 精神疾患による患者やその家族への地域生活支援の強化等を充実させ、地域で自立した生活ができるよう、病院から地域への移行を促進します。移行に必要な生活支援のあり方については、当事者とともに議論しながら検討します。また、患者の尊厳を守るため、精神科病院での身体拘束の削減を進めます。
  • 改正された障害者総合支援法の附則を踏まえ、2011年の障がい者制度改革推進会議総合福祉部会の骨格提言の理念の実現を目指します。重度訪問介護の支援区分中度者への対象拡大や、常時介護を要する障がい者等に対する支援、障がい者等の移動や就労の支援、障害福祉サービスのあり方、障害支援区分の認定を含めた支給決定のあり方、意思疎通を図ることに支障がある障がい者等に対する支援のあり方などのうち、積み残された課題について検討します。
  • 障害福祉サービス等報酬の増額による経営の安定化とサービスの質の向上を進めます。
  • 障害福祉サービス等報酬の改定に当たっては、全ての障害福祉事業者のサービスが安定的に提供されること、障害福祉従事者の賃金が改善して生活が安定し、離職が防止されることにつながるよう配慮し、福祉施設事業所の活動の質の評価を反映させる仕組みの導入や、事務職やパティシエ等の技術指導者の処遇改善も行います。
  • 障害福祉従事者の賃金を全産業平均並みに引き上げることを目標とし、まずは「介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法」を早期に制定し、政府の処遇改善策からさらに支給対象を拡大、支給額を増額(障害福祉事業所で働く全ての職員1人当たりプラス月額1万円)します。
  • 障害福祉サービス等報酬改定で食事提供体制加算の廃止や、送迎加算の引き下げが行われないよう、「食事加算等存続法」を制定します。
  • 学校、病院の通報の義務化など第三者によるチェック体制を整備することなど、障害者虐待防止法を改正し、病院や学校等での虐待防止を進めます。
  • 障がい者の活躍の場を広げるとともに障がい者本人の意思決定を尊重するため、成年後見制度をはじめとするさまざまな制度のあり方を検討します。
  • 旧優生保護法下での強制不妊手術被害者に対する一時金支給法の施行を受け、地方自治体と連携し、対象者への周知に取り組みます。また、強制不妊手術が進められた背景・原因を検証するとともに、優生思想の問題点や社会の多様性の重要性について、啓発を進めます。
  • 共生型福祉施設設置など、共生環境を整備します。
  • 医療・介護・障害福祉等に関する社会保障サービスの自己負担の合計額について、所得に応じて上限を設ける総合合算制度を創設します。(再掲)
  • 災害対策基本法の改正を踏まえ、災害で誰も取り残すことがないよう、高齢者や障がい者などが避難計画策定や防災教育段階から関与する「インクルーシブ防災」を推進し、災害弱者対策を強化します。
  • 「インクルーシブ防災」の実現に向けて、避難所等のバリアフリー化のための改修の要件拡大を進めます。
  • 災害時支援の充実、小規模ホームのスプリンクラー設置を支援します。
  • UD(ユニバーサルデザイン)推進のために改修補助制度を拡充します。またホテル等のバリアフリールームの拡大とUD化を推進します。
  • 鉄道の駅ホームからの転落防止等の安全対策のうち、財政的な負担の大きさから工事等が遅れているものについては、国が財投資金等を活用して早急に進めます。(再掲)
  • 障がい者の暮らしを支える制度を拡充します。介護保険優先原則の廃止、障害年金の引き上げなどを検討します。
  • 障がい者の公共交通運賃補助制度の拡充を図ります。
  • 障害福祉サービスにおける脱施設化を計画的かつ戦略的に進めます。
  • 音響式信号機や盲ろう者対応信号の普及をはじめ、盲ろう者や視覚障害者が安心して安全に渡れる横断歩道の整備を加速化するため、地域の合意形成に向けた指針を定めるとともに、国としても省庁横断的に取り組み、自治体への財政支援を拡充します。
  • 精神疾患と犯罪を結び付ける偏見の解消に取り組みます。
  • 精神障がい分野のピアサポート(当事者による相談支援)事業がごくわずかな自治体でしか行われていない現状を改善するため、障害者ピアサポーター養成研修事業において事業所に雇用された障がい者だけでなく、多様な取り組みが評価されるように見直すなど、人材の養成・確保を国の責任で進めます。

障害者基本法、障害者虐待防止法の改正、差別解消法の実効性ある運用

  • 精神障がい、知的障がい、身体障がい当事者の政策決定過程への参画を実現し、ともに議論しながら障がい者政策を進め、内閣府に置かれている障害者政策委員会の機能強化など、障害者基本法の改正を検討します。また共生社会の創造に向けた地域住民・NPOの活動に対する支援をより拡充するとともに、それらを通じて障がいの軽重にかかわらず、健常者とできる限り同等に社会に参画する選択肢を増やしていきます。
  • 障がいの有無によって分け隔てられることなく、自立した生活が送れるよう、障がいのある人もない人もともに生きる共生社会を実現するため、改正障害者差別解消法の附帯決議を踏まえるとともに、裁判外紛争解決の仕組みの検討など、同法の実効性ある運用を目指します。
  • 障害者差別解消法の改正を踏まえて医学教育モデル・コア・カリキュラムや医療関係事業者向けガイドラインの改訂などを進め、障がい児・者が医療機関を受診しやすい環境整備に努めます。

情報アクセシビリティ・コミュニケーションの推進、手話言語法の制定

  • 視聴覚障がい者などの自己選択と自己決定が実現できる社会環境を整備するため、2022年に成立した「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」に引き続き「手話言語法」を成立させます。
  • 「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」の附帯決議を踏まえ、国・地方自治体がアクセシブルな機器を優先調達する仕組みを導入します。
  • 聴覚障がい者と聴者を電話で即時双方向につなぐ電話リレーサービスの着実な運用に努めます。

障がい者の就労、社会参加等

  • 「障害者の権利に関する条約」の第27条(労働及び雇用)が「締約国は、障害者が他の者との平等を基礎として労働についての権利を有することを認める」とうたっていることに鑑み、働く全ての障がい者にディーセント(働きがいのある人間らしい)でインクルーシブな就労の場を確保することを目標に据え、政策に取り組みます。
  • 福祉的就労利用者の一般就労への移行を進めるため、現行の雇用率制度に基づく一般就労のあり方にさらなる検討を加え、すでに地方公共団体で導入事例のある多様な就労の場の創出や、尊厳ある生活を維持できる稼働所得の確保を目指します。
  • 就労継続支援B型や地域活動支援センター等を利用している障がい者についても、労働者性が一定程度認められ、労災や健康診断など、個々の実情に応じて労働法規が一部適用されて安心して働けるよう、障がい者の就労支援体系全体の再編も視野に検討します。
  • 短期的には、現行の福祉的就労における低工賃問題への対応を図り、事業者への支援策の拡充を含めて、安定的な就労場所の確保や一般就労への移行促進も含めた自立可能な仕組みの構築を図ります。
  • 通勤や就労中に利用できない重度訪問介護サービスについて、利用を可能にするため、「重度訪問介護支援拡大法」を制定します。
  • 障がい者がそれぞれの能力を発揮できるよう仕事を切り出すなど、障がい者の雇用(国の行政機関および地方自治体を含む)を拡大し、定着支援を促進します。
  • 障がいの有無にかかわらず、すべての人が生涯にわたり文化芸術やスポーツを楽しめる環境を整え、個々の心身を豊かにします。障がい者の余暇活動に対する支援の充実に努めます。
  • 障がい者雇用を促進する観点から、「障害者雇用納付金制度」のあり方を検討します。

女性や性的マイノリティの障がい者への対応

  • 複合差別など女性や性的マイノリティの障がい者が直面する課題の実態調査を行い、意思決定の場への参画を進めていきます。
  • 障がい者が性暴力・DV被害を受けた場合の対策を推進します。

インクルーシブ教育・特別支援教育

  • 障がいの有無などにかかわらず、子どもたちが同じ場でともに学ぶことを追求し、難病や内部障がい、医療的ケア児を含む個別の教育ニーズのある子どもに対し、合理的配慮と必要な支援を提供できるインクルーシブ(ともに生きともに育ちともに学ぶ)教育を大学教育に至るまで実現します。
  • 子どもが発達段階や習熟度に応じた指導をインクルーシブな場、あるいは居住地の近くで受けられるよう、通級による指導も含め、体制・支援を充実させます。
  • 障害者権利条約に基づくインクルーシブ教育をめざして一人ひとりに応じた支援を行うため、医学モデルとなっている学校教育法上の特別支援教育の目的を見直し、特別支援教育のあり方について検討を進めます。

学びの環境の整備

  • 通級指導や交流および共同学習が、障がいのある児童・生徒を部外者として位置付けることがないようにします。教員や介助員、教材等のあり方について検討しつつ、普通学級で障がいのある児童・生徒が十分に学べるための環境整備を進めると同時に、全ての教職員、普通学級の児童・生徒が、障がいのある児童・生徒とともに支えあい、仲間として受け入れる理解を深めるための取り組みを進めます。
  • 高校進学を希望する障がい者が、定員内にもかかわらず不合格になる事例もあることから、こうした定員内不合格を禁止するとともに、入試時および入学後の環境整備を推進します。
  • 障害者放課後デイサービスの体制の充実並びに経営の安定化とあわせて、重度障がい児や医療的ケア児を含めた障がい児の受け入れを進めます。
  • AYA世代(思春期・若年成人)のがん患者や難病患者が治療を受けながら学業を継続できるよう、特に取り組みが遅れている高校生のための院内学級を整備します。

医療的ケア児等の学ぶ権利の保障

  • 「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」に則り、たんの吸引や経管栄養などを必要とする医療的ケア児の支援を拡充します。医療的ケア児の保育や学校教育等を受ける権利を保障するために、看護師を保育所や学校等に配置することや、研修を受けた介護福祉士等を学校に配置するための環境整備を進めるとともに、通学支援などを拡充し、希望する学校等に通学しやすい環境を整えます。医療的ケア児を家庭だけでなく社会全体で支えるための支援事業を拡充します。(再掲)

まちづくり

  • 内部障がいや発達障がい者を含めた移動困難者にとって大都市だけでなく地方でも移動しやすいユニバーサルデザイン社会を実現します。また、バリアフリー法の対象に災害時の避難対策も含めて、避難所等のバリアフリーを実現するとともに、バリアフリー法によってバリアフリーが義務付けられていない交通施設や小規模建築物等についても、円滑化基準の改定や財政支援などを通じて、バリアフリー化を進めます。

発達障がい

  • 発達障がいに対する地域や企業、職場での他の職員、産業医の理解の増進、職場での意思決定支援者による支援の導入等により、さらなる障がい者雇用の拡充を図ります。
  • 発達障がい者に対して切れ目のない支援が行われるよう、2016年に施行された改正発達障害者支援法に基づき、発達障がいの疑いのある児童の保護者への支援、教育上の配慮、関係機関と民間団体の間での支援に資する情報の共有、就労の支援、地域での生活支援、権利利益の擁護、司法手続での配慮、発達障がい者の家族等への支援等を着実に進めます。また、特別支援教育コーディネーターの役割を担う教員のあり方について検討します。
  • 大人の発達障がいへの対応(就労支援、ピアサポート等)を強化します。

失語症対策

  • 失語症対策を進め、失語症に対する障害者手帳制度を是正し、障害年金等級の見直しを検討します。
  • 全国に50万人いるとされる失語症者が、どこに住んでいても意思疎通支援サービスが利用できるよう、失語症者向けの意思疎通支援者の養成、人材確保を加速化するため、自治体への財政支援を拡充します。

難病対策

  • 難病・小児慢性特定疾患患者への支援を拡充します。
  • 患者のニーズを踏まえ、難病対策を拡充します。2014年に成立した難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)で全国に設置された難病対策地域協議会の実態を把握し、患者・家族の積極的な参画を促すための支援を行い、協議会の活動を活性化します。また、難病法の見直しに向け、医療費の自己負担、医療費助成を受けていた小児慢性疾患の患者が大人になると助成を受けられなくなるトランジション問題などについて検討を行います。検討に当たっては、当事者の声に引き続き耳を傾け、ともに議論しながら進めます。
  • 指定難病の医療受給者証等により、難病患者にも法定雇用率が適用できるよう、精神障がい者の雇用率算定の状況を見極めつつ、検討するなど、難病患者の就労支援を強化します。
  • 「難病の子どもの資金支援法」(仮称)を制定し、税制上の優遇措置を検討します。
  • 先天性の代謝異常症の患者が必要とする特殊ミルクの安定供給を進めます。
  • 新型コロナウイルス感染症の後遺障害に関する研究調査を継続するとともに、ME/CFS(筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群)との因果関係の解明に向け、神経免疫系の研究調査を実施します。
  • ALSや筋ジストロフィー患者をはじめとする難病患者が人工呼吸器をつけて地域で安心して暮らせるよう、医療的ケアの提供体制を整え、医療機関をはじめとする地域の関係機関と連携した支援対策に取り組みます。