立憲の政策がまるごとわかる政策集Policies 2022

農林水産

農林水産業の基本的考え方

  • わが国の農林水産業は、国民の生命と生活を守る基盤です。国民が生きるために不可欠な食料を安定的に供給するとともに、国民生活の安定に欠かすことのできない国土・自然環境の保全、集落の維持・発展、地域文化の伝承等、各般にわたる機能を発揮しています。こうした重要な役割を担っている農林水産業の経営の持続的かつ安定的発展を図るとともに、農業、林業および漁業が有する多面的機能を十分に発揮させ、その役割を一層強化することを基本として諸施策を展開します。
  • 農業・農村が有する防災機能をはじめとする多面的機能の効果は全国民が享受しているものです。多面的機能は水田をはじめ、畑作、酪農畜産、果樹、施設園芸など、多様な農業が広く展開されてはじめて発揮されるものであり、基盤となる農業者の健全かつ安定的な経営が大前提です。このため、わが国農業の中心である家族経営や集落営農等を積極的に支え、中山間地等条件不利地での地域資源の活用、農業生産の活性化、地域の特性に合う多様な農業の展開、多面的機能に着目した直接支払、環境保全型農業の推進等の施策を通じ、戸別所得補償制度と一体で多面的機能の発揮を推進し、持続可能な開発目標(SDGs)の観点から農山漁村の再生を実現します。
  • 「農業の競争力強化」への偏重を改め、農林水産業固有の特性やわが国の農山漁村社会の歴史に根ざす地域政策を一体的に推進します。農協・漁協や自治体の振興を通じたコミュニティづくりや環境負荷を考慮に入れた農林水産業を推進します。
  • わが国農業は、大規模専業農業から農外収入を得ながら小面積を耕作する小規模兼業農業まで、規模や農法、作物等、多種多様な農業が存在しています。多様な農業が複層的に存在することは、わが国農業に極めて重要で、規模拡大を進める農業者も、小規模兼業で経営する農業者も、ともに、この国の農業を支える存在として重視します。このため各種支援策において「規模拡大」を要件とすることは盛り込みません。
  • 肥料・飼料・燃油など生産資材の高騰対策の強化と、供給体制の整備・安定を図ります。
  • 規制緩和と競争力強化に偏重してきた農政から脱却し、多種多様な農業者が共生する多様な農業のあり方を支援します。規制改革推進会議や国家戦略特別区域諮問会議を廃止し、法規制は国会議員が責任を持って議論・検討できる仕組みを整えます。

食料自給率の向上

  • わが国の食料自給率は、カロリーベースで40%を切る極めて厳しい状況にあり、主要な農産物の外国への輸入依存度が年々高くなっています。まずは、食料自給率の向上を目指すことを基本とし、農地の有効利用等による国内生産の拡大を図っていきます。
  • わが国農業の中心である家族経営を活性化し、国内農産物の需要拡大を図るとともに、耕作利用率や農業生産力の向上に向けた施策および食育・地産地消の取り組みを総合的・一体的に推進し、農業者戸別所得補償制度の構築によって自給率50%を目指します。
  • 食料自給率の能力を維持・向上するため、学校等における給食での国産農産物を利用した食農教育を推進するとともに、わが国の第1次産業の価値や、国土保全や災害防止の重要性、安定的な食料供給や食の安心安全を「国土と食の安全保障」として捉え、国民が広く認識の共有が図られるよう、理解の浸透と定着を図ります。
  • 現下の世界的な新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響や、気候変動・地球温暖化の影響といった状況に対処し、危機管理の徹底、農地・担い手の確保、国内生産の拡大と安定した流通体制の整備、国内生産の維持・拡大を旨とした貿易ルールの形成を図り、食料自給率を向上させ、「食の安全保障」を確立します。

コロナ禍の下での農業政策

  • コロナ禍は、特定産品の供給を外国に依存するリスクを明確にしました。特に食料供給は、国民の生命にも直結する重大な問題であり、あらためて食料安全保障の重要性が明確になりました。一方で、さまざまな農林漁業生産物が国内での需要を失い、多くの在庫が残ったことで、価格低下や新たな生産を阻害する要因にもなっています。農業での他作物転換や、次期作の取り組みへの支援、国内需給緩和時に国外市場向けの転換を可能とする代替新市場開拓など、コロナ禍であっても安心して農林漁業経営が行われるよう取り組みます。

農山漁村の活性化

中山間地農業等の推進

  • 中山間地域における農村自体が共同体として存続し、農業を継続していけるような体制の整備を推進します。
  • 農業生産活動の基盤の維持および整備、中山間地域その他条件不利地域の農業支援、有機農業など自然環境の保全に資する農業支援などのため、その実態に合った交付金を交付する制度を構築します。

6次産業化

  • 農業・農村の活性化には、農業所得の向上と農業従事者の確保が必須です。このため、農業生産基盤の整備および保全管理、生産資材価格の適正化、安心・安全な農畜産物の生産と適正価格の形成による需要拡大、地域資源の活用等、青年就農給付金等の強化、農産物の付加価値を高め、農業者所得の向上と地域雇用のさらなる創出を図るため、「6次産業化」を推進します。
  • 意欲ある若者や女性などが安心して農林水産業に参入し、継続して農林水産業に携わる環境を整備し新たな雇用の受け皿として再生していきます。また、食の安全・安心への関心が世界的に高まる中で、各種の市場開拓事業を展開し、国内の農林水産物・食品の輸出を積極的に進め、農林水産業者の所得を増大させます。また、これら農林水産業と商業、工業、観光業を組み合わせた「6次産業」を生み出すことで、地域社会の自信と誇りを取り戻します。(再掲)

エネルギーとの兼業

  • 農山漁村は、自然エネルギーを産するのに好適な条件を備えています。資源の乏しいわが国にあって、エネルギーの地産地消を実現し、さらには都市への供給も可能とするなど、その可能性を最大限引き出す施策を展開します。
  • 農業生産に伴う土壌炭素固定や温室効果ガス抑制を勘案した「資源・エネルギー生産性」を考慮し、地球環境負荷を認識するため、輸送量と輸送距離を定量的に把握する「フードマイレージ」を普及させます。
  • 農山漁村の土地、水、バイオマスといった豊富な資源を活用し、地域の規模に応じた発電事業による地域還元等を通じ、農山漁村の活性化を図ります。

農山漁村機能の維持・地域の活力等

  • 農地の利活用、維持管理を徹底するためには、農業者が農村に定住することが重要です。そのため、多面的機能支払、中山間地域等直接支払、環境保全型農業直接支払を統合し、食料安全保障や環境保全、中山間地域を支える観点で見直しを検討するなど、新たな直接支払制度を創設します。これにより農業・林業・漁業の振興を図り、農山漁村が持つ多面的機能の発揮・強化を図り、国民全体へ恩恵をめぐらせます。
  • 農山漁村休暇キャンペーン等、都市と農山漁村の交流の推進等を含めた複合的な農政の展開により、共同体の存続を前提とした農山漁村機能の維持を図り、地域の力をさらに活性化させます。
  • 農業委員会が果たす公的機能を再評価し、優良農地を守り、耕作放棄地解消につながる農地の引き受け手探しや、担い手への集積等、農村集落の維持に大きな役割を果たす地域の調整役としての機能強化を図ります。地域の代表者としての位置付けを明確に位置付けるため、「公選制」の復活について検討します。
  • 国民共有の財産である農地の向上を図る公共財としての土地改良については、農業者の負担から国民全体への負担へと、その負担のあり方を検討し、国費によって進めます。
  • 有機農業を振興し、オーガニック食材の積極的な利活用に向けて、学校給食等への利用を推進するほか、各地で朝市等を開設し地産地消を進めます。
  • 株式会社等の農地取得やソーラーパネルの設置等に見られる農地転用については、農村集落の維持との一体化が阻害されないようにすること等の規制について検討します。
  • 農福連携事業により、障がい者の農林漁業分野への就職や、就労継続支援事業所の農業への取り組みを強力に推進し、障がい者の社会進出と生活の質の向上を図ります。
  • 農地や林地等、相続等を契機として、耕作放棄や森林の適切な管理が行われない状況が生まれています。農地を次の耕作者に引き継ぎ、森林の適切な管理を実施するための登記のあり方について検討し、所有者不明土地の解消や林地の境界画定を進めます。
  • 農地は多面的機能の発揮や国民に安心・安全な食料を供給する公共財です。農地転用の厳格な運営に向けて、ヨーロッパ諸国に見られる都市計画のなかでの厳格なゾーニング規制等、従来の農地法・農振法・都市計画法等の枠組みを超えた本質的な農地政策のあり方を検討します。

農業・畜産業

農業者戸別所得補償制度の法制化・恒久化/収入保険/米・麦政策

  • 「価格は市場へ、所得は政策で」との基本的な考え方の下で、持続可能な再生産を確保します。そのため、農家所得・新規就農者の増大、食の安全・安心の向上につながる農業者戸別所得補償制度を法制化し、恒久的・安定的な制度にします。あわせて、環境の保全に資する度合いや中山間地域への加算を行う等、制度のバージョンアップを図ります。
  • さまざまなリスクに対応して平年並み所得を保障する収入保険制度については、農業者戸別所得補償制度と一体となって真に農業者の経営の安定に資する内容になるよう、制度の対象となる農業者の範囲等について検討します。
  • 米については、農業者戸別所得補償制度の下、再度、生産調整を政府主導に戻します。
  • 2021年12月の政府による水田活用直接支払交付金の見直し方針決定に対し、見直しを一旦白紙とするよう求めつつ、農業者戸別所得補償制度の復活に先駆けて、水田活用直接支払交付金を法制化し、恒久化を図ります。
  • 農業者戸別所得補償制度と収入保険との一体的な実施の実現を目指しつつ、現下の米の需給状況に鑑み、緊急的な特例措置として、民間に保管されている過剰在庫を政府備蓄米の枠を拡充して受け入れて市場から隔離し、需給を安定化させます。受け入れた備蓄米については、既に実施されている子ども食堂や子ども宅食への支援のさらなる推進や、コロナ禍における生活困窮者等への支援、災害等緊急支援の一つとしてレトルトパック化した米を備蓄し、状況に応じて被災地への供給や海外援助へ活用するなど、他の省庁とも連携して、需要を促進・拡大する方策を検討します。
  • ミニマムアクセス米の輸入については、日本国内での消費動向や、国の財政負担を伴って多くが飼料用米として販売されているなどの状況に鑑み、受け入れの停止や見直しを求めます。
  • 物価高に対する緊急対策として、国が輸入する小麦価格に上乗せして製粉企業等へ売り渡すマークアップ(輸入差益)を引き下げ、小麦原材料費の上昇を抑えます。マークアップ引き下げ分は国の予算で十分確保し、国内での小麦生産を支えます。
  • 米粉用米の加工・販路促進、国内産麦の生産支援をさらに進めます。

農業所得の安定・向上と担い手確保、新規就農者支援等

  • 人・農地プランの作成により、多様な経営体の育成を図りつつ、農地の有効活用、農村の維持・発展など、今後の方向性を明確にする取り組みを支援します。
  • 農業者戸別所得補償制度を復活し、農業者の判断のもとに、国の適正生産量にのっとって米生産を行う地域・農業者に対し、経営を維持し再生産可能となる支援を実施します。
  • 地域にある自然環境や文化資源などを見直し、農林漁業体験機会の提供促進や滞在施設等を整備することで、都市住民との交流並びに農業・国産農産物への理解の促進を図っていきます。
  • 地域の農林水産高校を地域の豊かな農林漁業や魅力の発信拠点として支援・整備し、第1次産業に関わろうとする若者の可能性を最大限追求できる場となるよう後押しします。
  • 就農人口の極端な減少に対応するため、地域の担い手として、都市住民が田園回帰で農業を営む新たな兼業農家の様式(半農半X・副業農業)等の多様なライフスタイル担い手の一形態として推進・支援し、新規就農者への充実した支援と高齢者の生きがいの場を提供します。
  • 中核的な担い手の育成や農地集積を図るとともに、農山漁村への移住を積極的に支援するため、農業次世代人材投資資金(旧青年就農給付金)制度の充実などを通じて、意欲と能力のある若者・女性農業者等に対する積極的な支援を行います。

農業協同組合の役割と体制・機能の強化

  • 農業者の相互扶助組織である農業協同組合は、農業者の経営、生活の安定・向上がその存在の第一義的な目的であり、さらに現在では、金融、保険、生活物資の販売、燃料の供給、病院の経営等の生活に欠かせないインフラを地域住民に提供しています。地域でのこうした農協の役割を明確に位置付け、支援することで農村地域住民の生活と利便性の向上を図ります。
  • 官邸主導で改正された農協法を見直し、協同組合原則を踏まえ、「地域のインフラとしての農協」として、農家の所得向上と経営の安定を図るだけでなく、生活や医療、福祉など地域のさまざまな機能をも支える組織であることを法律上明確化し、農協がいきいきと活動できる環境をつくります。
  • 農協など、地域に根差した協同組合の活動や、協同組合間の協同・連携を促進するための仕組みづくりを検討します。
  • 農業協同組合が100%民間出資の団体であることに鑑み、農協のあり方については自主性を重んじ、その自主改革案を後押しするとともに、JA准組合員や員外利用の規制のあり方についても、民間組織であるJA自らが判断すべきであって、経済活動に対して過剰な介入を政府は行わないこととします。

都市農業の振興

  • 消費地に近い場所で営まれる都市農業は、新鮮な農産物の提供、豊潤な緑地・景観の保全、防災空間の提供および都市住民との交流による農業への理解促進等、多様な役割を果たしています。今後とも、意欲ある都市農業者が都市農地を有効に活用し、安定的に経営できるよう施策を拡充していきます。
  • 都市農業の機能や効果が発揮できるように、生産緑地等の持続可能な都市農業を守るための政策の推進を図ります。あわせて、市民農園のさらなる開設に向けた取り組みを進めます。
  • 都市農地は「なくてはならないもの」であることに鑑み、実情を踏まえた支援措置の創設を図ります。生産緑地指定の下限面積を引き下げ、対象農地を貸借した場合の相続税納税猶予制度の継続適用の拡大や、農業経営の安定的な継続を可能とする固定資産税の減免等の税制改正を検討します。

園芸作物=野菜・果樹・花き・茶等

  • 野菜・果樹・花き・茶等を含む総合的な収入保険制度の強化を検討します。
  • 生産状況等を的確に踏まえた上で、世界各地への輸出も視野に入れ、改植とこれに伴う未収益期間の経費支援等、引き続き園芸作物の戦略作物化も含めた効果的な生産振興を図ります。
  • 中山間地域の重要な基幹作物である茶栽培の支援を図ります。また、関連するお茶文化の振興や海外への普及等を総合的に支援していきます。

農業のスマート化の推進

  • AIの活用やGPSを利用した無人トラクター、ドローンを使っての防除など、農業分野での技術革新を支援します。またブロックチェーン技術等の情報技術の進歩は流通情報の正確性を確保するものであることから、農業の流通改革やブランド価値の発信に適用できるよう検討します。

鳥獣被害対策

  • 農作物に多大な被害を及ぼす有害鳥獣の対策を進めるとともに、捕獲後のジビエ等の利活用を推進します。
  • 近年の野生鳥獣の異常出没急増、それに伴う人的被害や農作物被害の深刻化といった実態を十分に踏まえつつ、生息地管理、中山間地域活性化、被害防除を3本柱とする対策のさらなる充実を図ります。その際、人の安全確保と農作物被害防止のための措置を確実に講じつつ、広葉樹林・針広混交林など野生鳥獣の生息しやすい森林整備を通じた被害軽減、可能な限りの生態系の再生・回復等に取り組み、鳥獣被害の抜本的解決を目指します。

畜産・酪農の振興

  • 着実な生乳需給の安定対策を行いつつ、地域の特色に応じたブランド力の高い畜産・酪農経営を支援し、家族経営を中心とする、中小規模でも持続可能な酪農生産を目指します。
  • 獣医師や家畜防疫員の人材確保など、動植物検疫の適正な体制の整備・拡充を図り、アフリカ豚熱(ASF)など、海外からの家畜伝染病流入の防止のため、水際対策を強化します。また豚熱(CSF)や高原性鳥インフルエンザなどの家畜伝染病予防の観点から、国内農業の防疫レベルを上げるとともに、飼養衛生管理基準の高位平準化を図ります。
  • 将来展望を持って畜産経営が行えるよう、飼料高騰への対応を行うとともに、中長期的な視点に立ち、水田等地域資源の有効活用による国産の自給飼料基盤確立に向け、デントコーンなど、地域の風土に適応した飼料生産や生産技術向上の推進等、飼料政策の一層の展開を図ります。また草地交付金など所得補償と合わせて酪農を主産業とする地域経済の安定化を目指します。
  • 畜産経営の安定を図るため、肉用牛肥育安定特別対策事業および養豚経営安定対策事業を強化します。また、酪農ヘルパー事業の充実を図ります。

アニマルウェルフェア<家畜福祉>の強化

  • 生産性の向上や畜産物の安全にもつながるアニマルウェルフェア<家畜福祉>を強化していきます。

ワンヘルスの実施施策強化

  • 近年の新興・再興感染症の多くは動物由来の人獣共通感染症となっており、有効な人獣共通感染症対策、薬剤耐性(AMR)対策等を推進するため、人や動物の感染症研究を担う国や大学等の機関、全国的に構築された医師と獣医師との連携体制の下、人および動物の健康並びに野生動物を含む環境の保全を一体的にとらえて対処する「ワンヘルス」の実施施策を強化します。(再掲)

森林・林業・林産業

林業の多面的機能の発揮と保全

  • 森林の健全な状態での維持は、国民生活および国民経済全体に多大な利益をもたらします。このため、森林経営者や林業従事者の所得を安定・向上すること等により、健全な林業経営を継続するとともに、社会全体で森林づくりを行うとの考え方の下、所有者不明森林の管理保全を含め、地元の森林組合および市町村、国および都道府県が、公的役割を連携・活用して実施する体制をさらに強化します。
  • 豪雨災害による山腹崩壊の早期復旧および山地防災力の強化のため、森林経営者が受けた損害の救済対策、森林土木事業等を拡大実施し、あわせて、森林の適正な保全に支障を及ぼす開発行為等についての規制を強化します。
  • 森林を適切に管理・保全することにより、土砂災害の防止や水源のかん養など、森林の持つ多面的機能を向上させます。森林・林業再生プランに基づき、木材の安定供給の強化、国産材の利用促進を図り、また、フォレスター(森林総合監理士)、森林施業プランナーなどの山の専門家の育成等を支援します。
  • 間伐、主伐後の造林等適切な森林管理を実施する者に対する直接払い制度を維持・拡充し、「木材自給率50%」を目指します。また、国産材の価格を低下させる要因の一つでもある違法伐採木材の日本市場への流通を阻止するため、クリーンウッド法の実効性を評価し、効果向上に向けた検討を行います。
  • 森林環境税のさらなる有効な活用に向けて検討し、森林吸収源対策のための諸政策を拡充します。

林業所得の安定・向上

  • わが国の林業は、小規模・零細な所有構造であり、多面的機能の発揮に対する支援を行いつつ、複数の森林所有者が一体となって主伐、再造林および保育等の循環型森林施業を実施する体制を構築していきます。
  • 林業の担い手を育成・確保し、安全労働環境を整備し、雇用の安定および高齢者の生きがいある働く場を確保するとともに、林道・森林作業道の整備、林業機械の活用および優良種苗の確保等、総合的施策の展開により堅実かつ安定的な林業構造を確立し、林業所得の安定・向上を図ります。

木材産業の振興

  • 路網整備や高性能林業機械導入への支援、販路開拓など流通ルート各段階における支援の強化、森林施業集約化をさらに進め、森林環境の保護と再造林の確保等、林業振興を一体的に推進し、林業の発展と雇用の拡大を図ります。その際、林業の労働安全衛生の徹底を図ります。
  • 国産材供給量、木材需要量ともに年々回復傾向にある中で、わが国の木材自給率は、着実に上昇を続けています。木材の利用は、快適で健康的な住環境を形成するだけでなく、山村経済の活性化、森林の多面的機能の持続的発揮に寄与しており、今後もさらに森林・林業に関する国民の理解を深めつつ、公共・非公共建築物の木造化の推進、CLT(Cross Laminated Timber=直交集成材)の活用、木造住宅ポイント制度の推進などにより、木材利用を促進します。
  • 木材産業は原木の購入を通じて山村や森林の整備を支え、また、需要者のニーズに応じた木材製品の供給によって木材利用を推進するという重要な役割を担っており、今後も木材産業への原木の安定供給体制を強化するため、林地と施業の集約、再造林体制の強化、林業と木材産業との川上・川中・川下の連携等を推進し、木材の安定供給と国産材の利活用を促進します。
  • 「植える→育てる→使う→植える」という森林資源の循環を維持するため、川上(森林所有者・素材生産業者)と川中(木材流通業者、木材加工業者)・川下(工務店・住宅メーカー)との連携強化等により需給変動に的確に対応できる国産材の安定供給体制を整備し、木材価格の安定と川上への着実な収益の還元を図ります。
  • 適正に管理された森林から産出した木材を認証する「FSC」「SGEC」制度を推進するとともに、違法伐採木材の市場流入を防止します。

山村の活性化

  • 山村は、林業者が安定的に経営を営み、地域住民が定住し、森林の多面的機能を発揮する重要な場です。山村振興のため、森林資源の循環利用による林業経営の維持安定および生活環境の整備を図ります。
  • 地域住民が里山林の保全管理に関わり、森林・山村を観光資源として活用しつつ環境教育・体験活動の場とし、都市との交流を進める体制を整備することにより、国民全体の森林への理解を深め、あわせて地域住民の定住促進を図ります。

国有林野の役割

  • 国有林は、わが国の国土面積の2割、森林面積の3割を占め、その9割は「水源かん養保安林」等の保安林であり、公益的機能を果たす国民共有の重要な財産です。国有林野事業については、国民の安全・安心を確保するための公益重視の管理経営を推進し、その組織力、技術力を生かして、国有林野の荒廃地や保安林を整備するとともに、民有林と一体となって災害復旧、被災地域の支援を行い、また、林業の低コスト化等に向けた技術の実証・普及、人材の育成を支援します。
  • 国有林野の活用により、林産物を計画的・安定的に供給し、地域経済の振興、住民生活の向上に寄与するよう支援していきます。
  • 国有林野職員について、自律的な労使関係の下で労働関係の調整が行われてきたことに鑑み、引き続き労使関係を円滑に調整するため、国家公務員制度改革による自律的労使関係制度が措置されるまでの間、暫定的に、労使関係に関する従前の法律関係を確保するための措置を講じます。

漁業・漁村・水産業

水産食料の確保

  • わが国の周辺海域で採捕される水産物は、国民の健康と生活を維持する大切な食料資源です。国民の求める水産物を安定的に供給するため、資源と漁業権の管理、中小漁業経営等の基盤強化対策を実施します。
  • 国民1人当たりの水産物消費量が年々減少し続けている事態に対応するため、消費量減少の原因および消費者ニーズの変化を見極め、健康に良い魚介類の消費拡大に向けて、水産加工・流通対策の強化と魚食文化の啓蒙(けいもう)普及および食育の拡充強化等の対策を講じます。

漁業所得等の安定・向上と担い手の確保

  • 地域と水産業の担い手、女性および高齢者のそれぞれが役割を分担しつつ、地域ごとの水産資源の特性を生かし持続的生産を行うとともに、付加価値の向上を目指した流通・加工に取り組むことにより、漁業所得等の向上、多面的機能の発揮および地域の活性化を図ることを推進します。
  • 「漁業者所得補償制度」(資源管理・漁業所得補償対策)や「積立ぷらす」の強化および「漁業経営セーフティーネット構築事業」の拡充や税制の見直しなどにより、燃油・養殖用配合飼料価格の急騰への対策の充実を図り、適切な資源管理と漁業経営の安定の両立を実現します。
  • リース方式による漁船の導入を支援し、持続的な漁業生産構造を確立するとともに、国産水産物の流通促進と消費拡大を推進します。
  • 地域ごとの実情に即した具体的対応策を地域の水産業関係者自らが考え合意する「浜の活力再生プラン」の策定と実行が有効であることから、各地域の目標達成に必要な資源管理、生産基盤整備、流通・加工対策、魚価対策および多面的機能の発揮等に必要な支援を行っていきます。

漁村地域の活性化

  • 水産業および漁村は、国民の安心・安全な食料である魚介類を持続的かつ安定的に供給するほか、国境監視活動や海難救助等の国民の生命財産を保全する機能、地域社会や文化を形成し維持する機能等、多面的かつ重要な役割を果たしています。こうした水産業や漁村が果たす役割の重要性を再認識し、地域の漁業・水産業の発展を図り、あわせて、各地域の特性を生かした体験漁業、漁家民宿等により、都市と漁村の交流に積極的に取り組み、活力あふれる漁村を全国各地に創出していきます。
  • 浜の豊かさを実現するため、漁業者だけでなく、漁業を支える加工、資材、販売、漁協などを面的に支援し、「浜プラン」の充実・強化を図ります。
  • 沿岸漁業、養殖業等への新たな企業参入については、地元漁業協同組合が中心となって地域社会の意向を取りまとめた上で決定する仕組みを導入します。
  • 漁村集落が行う海の清掃、稚魚の放流等の取り組み、藻場・干潟等の保全など、水産業・漁村の多面的機能の発揮に資する地域の取り組みに着目した直接支払制度を創設します。

漁業協同組合の役割と体制・機能の強化

  • 漁業協同組合は、漁業者による協同組織として、販売、購買等の事業を実施するほか、漁業権の管理等を通じて水産資源の持続的活用、浜の清掃活動、海難防止等の公益事業に積極的に取り組んでいます。今後とも、漁村地域の中核的組織として漁協が行う各種事業の役割と意義を踏まえ、必要な経費負担のあり方、各漁村で地域組織が果たすべき役割等を検討しつつ、漁協組織の体制・機能の強化に取り組んでいきます。

水産資源の活用と管理

  • わが国は、面積で世界第6位となる広大な領海および排他的経済水域を有し、生物多様性の高い豊かな海を有しています。近年のわが国漁業生産量の大幅減少の原因は、マイワシ資源の自然環境の変化に伴う減少と国際的200海里時代の到来によるところが大きく、これらの地球規模での環境・資源の変動、国際的な資源管理の取り組みの変化に即応し得るよう、漁業経営安定対策を拡充・整備していきます。
  • 藻場・干潟の保全、国境監視等、漁業・漁村の多面的機能の発揮と地域や現場漁師の声と実感を反映させる仕組みを創設し、資源管理の実効性を向上させます。
  • 悪質化・巧妙化する外国漁船による違法操業の取り締まり強化を進め、海洋・水産資源の確保と保全、漁業経営の安定を図ります。
  • わが国の漁業制度は、操業海域での漁業資源の特性および各地域の輻輳(ふくそう)する漁業形態に即してきめ細かく定められており、先人たちの経験と苦労と知恵の結晶であると考えます。したがって、各国漁業とともに操業する海域に生息する水産資源の利用については、国際合意に基づき、必要に応じてアウトプット・コントロール(産出量規制)による資源管理を導入しても、わが国周辺海域の水産資源、特に沿岸の資源については漁場利用の実態に即し、インプット・コントロール(投入量規制)およびテクニカル・コントロール(技術的規制)を基本とした実効ある資源管理を行っていきます。
  • 生態系や資源の持続性に配慮して漁獲されたことを示す「水産エコラベル認証」の普及を後押しします。
  • 赤潮のメカニズムの解明と対策の強化・充実を図ります。

捕鯨文化の推進

  • わが国の伝統や食文化に根差した鯨類資源の活用を推進し、再開された商業捕鯨の安定的実施拡大を目指します。
  • 商業捕鯨について国際的な理解の向上に努め、わが国の持つ科学的な知見の拡大を推進します。

食の安全・安心

国民の求める安心・安全な食料の生産と提供

  • 「品質」「安全・安心」および「環境適合性」の確保という国民のニーズに適った生産・流通体制を構築することは、わが国の農林水産品の品質向上や優位性を発揮する重要な手段です。「グローバルG.A.P.」(農業生産に関する国際基準)「HACCP」、有機JAS等の認証制度の普及を後押しし、消費者が求める安心・安全な食料生産を普及・支援していきます。また持続可能で、環境に配慮した農業生産を推進していきます。
  • 食の安全確保に向け、内閣府・消費者庁・厚生労働省・農林水産省など関係政府機関の連携を強化するとともに、窓口のワンストップ化を進めます。
  • 私たちの身体は、食物からできています。したがって長期間身体を構成することになる食品の評価は、身体に取り込まれた後も、長い間安全であることが必要です。こういった考え方を持つ「分子栄養学」的な観点から、現在の食品安全の評価手法を検討します。
  • 貧困が拡大し、食事を満足に取れない人々が増加している一方、農産品価格の下落防止のために調整保管事業等、税を使っての農産品備蓄が行われています。やがては市場に出て、再度供給圧力となり得る保管事業ではなく、農産品そのものを消費することによって需給圧力を緩和し得る、困窮世帯への食料支援を実施します。
  • わが国の財産である遺伝資源を守るため、主要農作物種子法を復活します。また、地域の農業用植物の優良な品種の確保と地域農業の持続的な発展に資するため、公的試験研究機関での新品種育成の促進や適切な利用、在来品種の多様性確保、種苗生産に係る技術を有する人材の育成を促進する法律の制定を図ります。

食の選択を可能とする仕組みづくり

  • 食品流通の国際化や進展等に伴って、さまざまな食品がわが国の消費者に提供されています。そういった中で消費者が安心して食品を合理的に選択できるよう食品のトレーサビリティの拡大を図ります。また、消費者目線で食品表示制度を見直し、遺伝子組み換え食品についての表示制度をさらに厳正化し、消費者の「選択」を後押しします。

国境をまたぐ食品や遺伝子、種子管理の厳格化

  • 輸入食品が量・件数ともに増加しているのに対し、検査率は低下しています。輸入食品の監視体制を強化し、違反・違法食品の流通を防止するため、税関職員や食品衛生監視員等の人員確保など検疫体制を整備するとともに、トレーサビリティ制度の確立に向けて、米国の食品安全強化法など国際的動向を参考に必要な法整備に取り組みます。
  • わが国からの優良な種や遺伝子の持ち出しが大きな問題になっています。貴重な遺伝資源の持ち出しや種子の持ち出しが行えないよう制度の厳格化に取り組みます。
  • 安全性に懸念のある輸入食品の増加を踏まえ、予防原則・未然防止の観点から遺伝子組み換え食品の表示を厳格化するとともに、肥育ホルモン剤の利用状況を消費者に伝達するスキームの構築に取り組むなど、消費者の権利に応える施策の推進を図ります。

食品ロス削減

  • 日本では、まだ食べられる食品が日常的に廃棄されています。食料廃棄の削減に向け、サプライチェーン全体の連携により食品の廃棄を抑制し、フードバンク等を通じて貧困世帯への支援や「子ども食堂」などの福祉分野での活用を進める取り組みを支援します。

フードダイバーシティの推進

  • 観光にわが国を訪れたイスラム教徒のハラルやビーガン等のベジタリアン、あるいはアレルギーの人等、食に制限のある人々がいます。そういった人々が安心して食にふれ、わが国を訪れる人々にも美味しい食を楽しんでもらえるよう食の多様性(ダイバーシティ)を推進していきます。

食育の推進

  • 食を通じて、健康な身体や心を培う「食育」を進めます。また、朝食の取れない児童・生徒に対する朝給食の導入や、いわゆる「子ども食堂」の取り組みを支援します。
  • 学生に対する親元からの経済的支援や学生アルバイトも減少する中で、学費や生活費に困窮する学生が増えています。このため、フードバンクやNPO等による農産物等の食材提供を通じ、学業を継続できるよう、食の面からの支援を進めます。

「和食」文化の推進

  • わが国の豊かな気候風土からもたらされる多様な食材で作られる「和食」は、だしや長期保存や加工など地域の文化や伝統が継承されたものも多く、国際社会からも健康食として高く評価されています。地域の行事や観光などを通じた食文化の発信を支援するとともに、日本ブランドとして和食の価値を世界で高めるための支援をします。

気候変動と災害対策

  • 近年、急激に進行している気候変動は、豪雨、大型台風、異常高温等の発生による農地、農業施設、作物の流出、作物の生育不全などの大規模な被害をもたらしています。さらには、生産適地の変化に伴い、加工・流通体制の再編をも余儀なくされています。農業者等が直接に受けた被害については、可能な限り早急に復旧することはもとより、災害の発生防止と営農継続に向けた防災・減災事業を積極的に進めます。また、二次被害対策を含め、被害農業者の救済と農業経営の再建等のための支援策を拡充していきます。
  • 気候変動に伴う作物の生産適地の変化については、試験研究機関等と連携し、地域の特性に合った作物を奨励し、その生産拡大と加工・流通体制の見直しにより、営農の継続および安定を支援していきます。
  • 災害等不測の事態にも対応可能な供給力を反映した食料自給力を政策目標とし、効率重視から農地および農業従事者等の資源の保全でリスクに適応できる農業を目指します。
  • ほ場整備や水利施設の整備、ため池等、農業の生産性向上や品質の向上に寄与する土地改良事業を進めます。また、近年頻発する自然災害の減災・防災対策を進め、被災した農林漁業者が、災害を契機として「なりわい」をあきらめることのないよう、きめ細やかで継続的な支援を実施します。

輸出・経済連携・貿易協議

輸出促進

  • 日本の農林水産物の魅力や、ユネスコ無形文化遺産である「和食」など、日本の食文化を世界に向けて発信し、販路拡大を含め輸出倍増に向けた戦略的施策を推進します。きめ細かい情報提供などによって輸出促進に向けた農林漁業者の取り組みを促進します。
  • 海外の規制に対応できる産地や地域産品を育成し、海外の消費志向を捉え、地域特産品や国産原材料を活用した加工品(加工食品・水産調整品・穀粉調整品等)の輸出促進により農業所得の向上、農山漁村の活性化を図ります。
  • 米や米加工品の海外市場での需要拡大を図るとともに、国際的評価の高まる日本酒・焼酎(泡盛を含む)や、日本産酒類(ビール、ワイン、ウイスキー等を含む)の生産・流通支援、文化の発信、輸出の促進を行います。また米を活用したレシピの紹介や和食器などと合わせた日本食文化の魅力を発信し、多様な海外ニーズに合わせた市場開拓を支援します。
  • 農林水産物輸出を促進し、農業における「グローバルG.A.P.」(農業生産に関する国際基準)、食品加工業における「HACCP」、林業における「FSC」、漁業における「MSC」「ASC」などの農林水産分野の国際認証取得を推進します。

経済連携・貿易協議

  • 自由貿易体制の発展にリーダーシップを発揮し、国内での持続可能な農林水産業の確立を前提に、多国間・2国間での経済連携については日本の利益の最大化を図ります。
  • 行き過ぎたグローバリズムや他国の自国第一主義が、わが国存立の礎である農林漁業や食の安全などに甚大な影響を及ぼす懸念もあります。徹底した情報開示を求め、わが国の農林漁業・農山漁村の持続可能性や、食の安心・安全および食料の安定生産に看過できない影響が想定されるときは反対します。

行き過ぎた市場化や経済連携交渉に反対

  • 国連では、家族農業や協同組合などの重要性を積極的に評価し、食料の安定供給とそれを支える自国の農業の持続的経営を支える国内政策を推進しています。国内の第1次産業・農山漁村の崩壊につながる行き過ぎた市場化政策や国際貿易交渉には反対します。