立憲の政策がまるごとわかる立憲民主党 政策集2024Policies 2024
法務
人権尊重の刑事司法制度
- 「えん罪」被害者の速やかな救済のため、再審法の在り方を全面的に見直します。施行70年を経ても一切改正されてこなかった刑事訴訟法第4編再審を抜本的に見直して、裁判所ごとに審理に格差が生じている、いわゆる「再審格差」を是正するとともに、審理の長期化を解消することを目指します。再審請求審において、全面的な証拠開示制度を創設し、併せて再審開始決定に対する検察官による不服申し立てを禁止するなどの見直しを進めます。
- 無実の人が罪を負わされる「えん罪」をなくすため、現在一部の事件に限定されている「取り調べ等の録音・録画(可視化)制度」の対象事件をさらに拡大します。同時に、拡大した事件についても、裁判所で公正な事後検証ができるよう、取り調べ等の開始から終了までの録音・録画を実現します。
- 現在の再審請求手続は大変複雑で、再審事由が極めて限定されており、再審を受けるための壁となっています。この再審請求手続きを見直して再審への門戸を開き、真に「えん罪」のない社会を目指します。
- 死刑再審無罪者への国民年金の給付、成年被後見人の選挙権回復などを行ってきました。今後もさらなる人権の尊重と回復に向けた制度の改正を目指します。
- 「人質司法」とも指摘される被疑者及び被告人の身体拘束について、人権保障と真実発見のバランスの観点から課題を整理し、対応を検討します。
- 犯罪の被害者やその家族、また、加害者の家族に対しての精神的・経済的・社会的なケアが十分に制度化されるよう、調査・検討します。
差別解消
- インターネット上の誹謗中傷を含む、性別・部落・民族・障がい・国籍等に関するあらゆる差別の解消を目指し、「包括的差別禁止法」を制定し、新たな人権救済機関を設置するとともに、個人通報制度を導入します。
- あらゆる人権侵害行為を受けた人を救済することのできる、独立性を有し、公正・中立さが制度的に担保された、より実効性のある人権救済機関(「人権委員会」(仮称))を設置し、救済活動を行う仕組みを創設します。(再掲)
- インターネットやSNS上の差別や誹謗中傷、人権侵害等への対策を強化します。政府は侮辱罪を厳罰化しましたが、侮辱罪での現行犯逮捕を完全には否定しないなど、表現の自由が萎縮する懸念が残りました。相手の人格を攻撃する誹謗中傷行為を刑法の対象とするため、「加害目的誹謗等罪」を創設するとともに、プロバイダ責任制限法を改正して発信者情報の開示を幅広く認めることなどを柱とする「インターネット誹謗中傷対策法案」の成立を目指します。
- 人権条約に認められた権利を侵害された個人が、条約機関に直接訴え、国際的な場で救済を求めることができる個人通報制度を定めている関係条約の選択議定書を日本が批准することを目指します。(再掲)
- 個人通報制度や調査制度を定める女性差別撤廃条約の選択議定書を批准し、ジェンダー不平等な法制度を見直し、ジェンダー平等を実現するための法整備を進めます。(再掲)
- レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーをはじめとする「性的少数者」などが差別を受けず自分らしく生きることができる社会をつくるため、性的指向や性自認(SOGI)による差別について、①行政機関等による差別の禁止、②雇用の分野での差別の解消、③学校等での差別の解消等の施策を盛り込んだ「LGBT差別解消法」(「性的指向又は性自認を理由とする差別の解消等の推進に関する法律」)を制定します。(再掲)
- 同性婚を可能とする法制度を実現します。性的指向・性自認(SOGI)にかかわらず、全ての人に結婚の自由を保障するため、婚姻平等を実現する「民法の一部を改正する法律案」(婚姻平等法案)を成立させます。(再掲)
- 戸籍上の性別変更要件のうち、最高裁が2023年10月に違憲判決を下した「生殖不能要件」に加え、「未成年の子なし要件」「外観要件」を削除する「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(GID特例法)の一部を改正する法律案」を成立させます。ICD-11(国際障害疾病分類第11版)の採択に伴い、GID特例法の名称変更を検討します。ホルモン療法の保険適用拡大を検討し進めます。(再掲)
- 嫡出でない子(結婚していない男女間に生まれた子)の権利の保護を図ることを目的として、出生届書の記載事項から嫡出である子または嫡出でない子の別を記載する欄を削除する戸籍法改正を目指します。
- 2016年に成立した「ヘイトスピーチ解消法」における取り組みを拡大し、国際人権基準に基づいて、人種・民族・出身などを理由とする差別的言動を禁止する法律の制定など、あらゆる差別撤廃に向けた動きを加速させます。(再掲)
- わが国に依然として存在する偏見に基づく差別を解消するため、2016年に制定された「部落差別解消推進法」の具体化を進め、強化・改正を目指します。
- 1991年の入管特例法施行前に韓国などで政治犯として拘束されたため、特別永住者の地位を得ることができない日本在住の朝鮮半島出身者に対し、永住できる特例を設ける法改正に向け、超党派で取り組みます。
性暴力の禁止
- 性犯罪の被害の実態を踏まえた刑法の見直しを引き続き進めます。強姦罪を強制性交等罪とするなど性犯罪を厳罰化する110年ぶりとなる刑法改正が2017年に行われましたが、2019年には性暴力事件の無罪判決が相次いだため、2023年に不同意性交等罪と罪名を変更して要件を例示、明記しました。改正刑法の附則には5年後見直し規定も与野党修正で追加されました。今後とも、公訴時効の延長・撤廃や地位利用の性犯罪規定の新設など、さらなる見直しに取り組みます。
- 性犯罪は、その被害を訴えにくく、支援を求めにくい犯罪であることに加え、「魂の殺人」ともいわれるほどの重大な被害を及ぼし得る犯罪です。この性犯罪の特殊性に鑑み、ジェンダーバイアスを排した適正な処罰がなされ、被害者の権利侵害の回復がなされるように「性暴力禁止法」の制定を検討します。
- 性犯罪の事件では、ジェンダーバイアスを排した適正な捜査・司法運用がなされるよう、捜査機関・司法機関など関係機関への通知・研修等が行われるようにします。
- 子どもへの性的虐待は決して認められるものではありません。2017年の刑法改正で創設された監護者性交等罪などによる適切な処罰を求めます。
- 教職員や部活動の指導者などによる子どもへの性犯罪やスクールセクハラは後を絶たず、深刻化しています。2021年に議員立法「わいせつ教員対策法」(「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律」)が成立し、2023年には性犯罪見直しの刑法改正が行われましたが、子どもへの被害の実態を踏まえた見直しを引き続き進めます。
- 子どもは性暴力を受けたことが理解できず、成人してから認識することがあります。公訴時効について、2023年の刑法改正で性犯罪の時効を5年延長するとともに、18歳未満の被害者の場合は18歳になるまでの期間を時効に追加しました。今後とも、公訴時効の延長・撤廃や地位利用の性犯罪規定の新設など、さらなる見直しに取り組みます。
- 被害者が子どもである場合、性犯罪捜査・公判などの過程で、さらなる負担を負わせることがないよう、司法面接制度を改善・普及させ、人材育成とともに、民間団体を含む関係機関との連携を強化します。(再掲)
- 児童が被害を受けた事件の刑事裁判では、司法面接による録音・録画や供述調書について、2023年の刑法改正で伝聞法則の例外として証拠能力を認める特則を新設しました。司法面接制度の知見や技術を向上させ、海外の取り組みにも学びながら、被害を受けた子どもの負担軽減、聴取者を中立的な立場の専門家とすることの検討など、さらなる改善・見直しを進めます。
企業の法的支援
- 2020年に施行された改正民法で保証制度の見直しが行われましたが、十分とはいえません。中小企業等に事業用の資金を貸し付ける場合には、その会社のことや「保証」の制度を知らない人を保護するため、会社経営者本人以外を保証人にすること(第三者保証)を法律で禁止します。
- 会社を新たに起こしたり、経営をしたり、親から子へ経営を引き継がせたりするときに、弁護士等が法律上の支援をする制度等を充実させ、中小企業経営がより発展し、より長く続けられるようにします。
- 企業が持続的に成長していくため、コーポレート・ガバナンスの強化等によって生産性・収益性を向上させていくことが重要です。内部通報体制の整備義務や、公益通報者保護の拡充なども含め、総合的な改革を推進します。
- 債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)を改正し、債務者の利益保護規定の強化等に取り組みます。
- 知的財産権に関する紛争処理機能を強化することで、特許紛争の早期解決を図り、知財システムの実効性を担保するとともに、新産業やベンチャー企業の創出を支援します。
法曹養成改革
- 経済的状況や学歴などその人が置かれた立場に関係なく、さまざまな経歴や専門性を持った人が法曹(裁判官・検察官・弁護士)として活躍できる機会をつくるために、多くの問題・課題を抱えている現在の法科大学院をはじめとする法曹養成制度を根本から見直します。
- 法曹志願者数の減少に歯止めをかけるため、司法試験の受験資格、方法、試験科目、司法修習期間の見直しや、弁護士への研修機会の提供等の措置を講じ、より良い法曹養成制度を目指します。
- 司法修習生のうち、給費制が廃止され、修習給付金の支給を受けることができなかったいわゆる「谷間世代」の救済策を検討します。
選択的夫婦別姓制度の実現と個人の尊重
- 女性が結婚・出産後も働き続けるだけではなく、社会のリーダーとして活躍することも増えてきました。しかし、結婚のときに女性の多くが改姓することによって、それまで「旧姓で」積み上げてきた経歴が本人とつながらなくなる問題や愛着ある姓を変更せざるを得ないといった自己同一性喪失の問題が生じてきました。個人の尊厳と両性の本質的平等を実現するため、民法を改正し、選択的夫婦別姓制度を早期に導入します。
- 2022年の民法改正で、女性の再婚禁止期間が廃止され、離婚後300日以内の子でも再婚した際は再婚後の夫の子と推定する嫡出推定制度に見直されました。いまだ不十分な無国籍児の救済をさらに進めるとともに、国籍取得に関する国籍法3条3項を改正して、子どもの身分の早期安定を図ります。
- 親族による扶養は生活保護の要件ではないこと、生活必需品である自家用車の保有を認めることなどを運用面で周知徹底します。(再掲)
- 2026年までに民法改正法が施行され、離婚後共同親権が導入される予定です。改正法には、裁判離婚でDV被害が認定されずに共同親権が決定され、子や父母一方を危険にさらす可能性、新たに発生する共同親権を巡る裁判や調停への家庭裁判所の体制が不十分であること等の懸念が含まれます。父母双方の真の同意がない場合は単独親権を原則とする等の法改正を行い、それらの問題・懸念を完全に払拭します。
社会復帰支援
- 2023年10月に長野刑務所で留置中の男性が凍死する問題が発生しました。再発防止策を講じ、刑務所の環境改善を行います。
- 犯罪の総件数が減少傾向にある一方で、罪を犯した者が罪を繰り返してしまう「再犯率」が高いことが問題となっています。「再犯の防止等の推進に関する法律」をもとに、刑期を終了した人たちが二度と罪を犯さないで済むよう、高齢者や障がいのある人、薬物依存歴のある人など、実情に応じた矯正プログラムの見直しや、刑期終了後の就職支援等の充実を図ります。
- 矯正施設を出た元受刑者の社会復帰は、保護司等のボランティアによって支えられていますが、現在、保護司の高齢化やなり手の減少に直面しています。保護司の処遇改善を図り、なり手不足を解消するとともに、保護司を含めた保護観察制度を社会の変容に合わせて見直します。また、2024年5月に保護司が自宅で殺害される痛ましい事件が発生したことを踏まえ、保護司の安全確保を図るため、ベテランの保護司が経験の浅い保護司をサポートする、面接場所として各地の更生保護サポートセンターや公民館などを活用するなど、現行法制度でも可能な対応策について、積極的に展開します。
所有者不明土地・相続登記問題
- 所有者不明土地は、相続登記が未了のまま放置されているものであり、空き地・空き家問題や整備が進まない山林問題、公共事業や災害復興工事に支障をきたしている問題などの要因にもなっています。相続登記の義務化や相続土地の国庫帰属の制度が創設されましたが、国・地方公共団体が地域整備事業を行う場合に、所有者不明土地であっても用地取得が迅速にできるよう、さらに法整備を行います。
外国人労働者の受入れ
- 在留外国人の増加による社会経済情勢の変化を受け、国民及び在留外国人の一人ひとりが、社会の対等な構成員として、国籍及び社会的・文化的背景を認め合い、相互に人格と個性を尊重しつつ、支え合いながら共生する社会の形成を推進するため、「多文化共生社会基本法」の制定を目指します。
- 「多文化共生社会基本法」では、①国籍や社会的・文化的背景による差別禁止、②差別に関する相談・紛争防止の体制整備、③教育・啓発・交流促進等による国民の関心と理解の増進、④日本語習得機会の確保と情報提供等による生活の円滑化、⑤未成年の在留外国人への教育の確保などについて、地方自治体と国とが適切に連携して取り組むことを定め、その施策を推進します。
- 外国人技能実習制度に代わる新たな雇用制度として、政府提案の育成就労制度が創設されましたが、外国人労働者に対する人権侵害問題は温存されたままです。外国人労働者の適正な受入れと適切な就業環境を実現するため、「外国人労働者安心就労法」を制定し、現行の在留資格を廃止して新たに一般労働1号、2号の在留資格を創設するとともに、就労資格全般の見直しや雇用手続きの公的機関への一元化など、外国人一般労働者雇用制度の整備を推進します。(再掲)
- 入管法改正で追加された、公租公課を滞納した場合に永住許可を取り消す条項は、日本人に対する罰則と比べてあまりに重く差別的で、人権侵害の恐れがあるため、直ちに削除します。
- 地域・職場・学校での交流事業の支援、日本語教育の機会の確保など、外国人対応が増えている自治体を支援します。
難民等保護
- 国際法違反との強い批判を受けている現行の難民認定制度・収容送還制度を抜本的に見直し、わが国が締約国となっている「難民の地位に関する条約」や「国際人権規約」等の国際ルールに基づいて、保護すべき難民申請者や補完的保護対象者等を適切に保護できる新たな難民認定・保護制度を確立するため、政府から独立した第三者機関である「難民等保護委員会」の創設等を柱とする「難民等保護法・入管法等改正法」の制定を目指します。(再掲)
- 戦争等避難者も難民等として円滑に保護し、生活面での支援を提供できる体制を整備します。ウクライナやミャンマー、シリア、アフガニスタン、ガザなどからの戦争等避難者を緊急・円滑に受け入れ、日本で安心して暮らせるように、医療・福祉・就労・教育・住宅などの支援を展開するため、「戦争等避難者に係る入管法特例法案」の成立を目指します。
成年年齢引き下げ・少年法見直し
- 成年年齢の引き下げに伴い、18歳・19歳への悪徳商法による消費者被害を防止するため、「消費者の権利実現法」の制定を目指します。また、飲酒や喫煙といった健康被害などの懸念がある年齢要件については、個別に慎重な検討を行います。
- 成年年齢の引き下げ、社会の複雑化の進展に伴って、法教育の重要性は高まっています。国民全体が一定レベルの法知識を得られる環境を整備します。
- 政府は少年法を改正し、18歳・19歳の者を少年法の適用対象としつつも、「特定少年」と位置付けて、家庭裁判所から検察官に逆送する犯罪の範囲を拡大するなどの特例規定を設けました。この改正は、未熟で可塑性に富む少年らの更生にとって阻害要因となることから、推知報道の禁止の解除、ぐ犯の対象からの除外、前科による資格取得制限の緩和の適用除外といった改正点を見直すとともに、少年事件の報道や出版などにおける被害者やその家族・遺族への配慮規定を追加するよう再改正します。
テロ対策・国民の自由
- 国民の生命・自由・安全を守るため、最先端技術を駆使して入国審査などの水際でのテロ対策を進めます。併せて、航空保安体制の強化、テロ目的の資金移動・麻薬取引の監視などを強化します。
- 2017年の強行採決により創設された共謀罪については、監視社会をもたらす恐れがあることや、表現の自由、思想・良心の自由、その他の日本国憲法の保障する国民の自由と権利を侵害する恐れがある上に、テロ対策としての実効性は認められないことから、廃止します。
- 2016年施行の改正刑事訴訟法により、通信傍受の対象が拡大され、薬物や銃器などの4類型に加え、傷害や児童ポルノなど9類型が追加されました。適正運用に努め、警察や検察が通信傍受を濫用することのないよう厳しく監視します。
養育費の確保
- 多様化・複雑化する社会の中で、家族を巡る問題も変化し、増大しています。子どもの養育、離婚、貧困、ひとり親家庭などについての課題の解決を目指します。
- 養育費は子どもの成長・発達のために必要であることから、子どもの権利として位置付けます。
- 日本は離婚の9割近くが協議離婚であり、その半数以上で養育費の話し合いができていません。養育費の取り決めが必ずしもなされていない現状に鑑み、当事者にとって精神的・経済的・物理的に簡便な方法を促進し、親の義務の履行を促します。
- 社会全体で子育てを支援し、子どもの貧困を防止する観点からも、行政機関が一時立替を行う諸外国の例を踏まえ、養育費立替払制度の創設など公的関与の拡大を進めます。「不払養育費立替・取立制度導入法」の制定により、政府が「不払養育費立替・取立機構」を設立し、不払いの養育費の取立てを行う仕組みをつくります。
信頼される行政・司法の再構築
- 安倍政権は2020年、検察官の人事に対する内閣や政治家の介入を可能にする検察庁法改正を含む国家公務員法等改正案を国会に提出しましたが、元検事長の恣意的な定年延長などは認められるのものではありません。検察の独立性や政治的中立性を確保しつつ、法務・検察行政の刷新を図ります。
- 財務省の公文書改ざん問題で、国は改ざんを指示した国家公務員に賠償金の負担を求めなかったため、国民の税金により賠償が行なわれました。国家賠償法に基づく求償権を適正かつ厳格に行使させるとともに、国家賠償請求訴訟の事案に係る国の説明責任を確保するため、「国賠法に基づく求償権行使促進法案」の成立を目指します。
- 政府は、在外邦人が憲法で保障された公務員の選定・罷免権を国内と同様に行使できるようにするため、最高裁判所裁判官の国民審査に投票できるよう必要な措置を講じました。今後さらに投票の利便性を高める取り組みも進めます。