立憲の政策がまるごとわかる立憲民主党 政策集2024Policies 2024

障がい・難病

総論

  • 「障害者の権利に関する条約」の批准のための一連の障がい者制度改革の成果を踏まえつつ、同条約を誠実に履行するため、条約の規定に基づいて、住み慣れた地域で、誰もが居場所と出番がある社会を実現します。
  • 障がいのある人のニーズを踏まえ、障がい種別や程度、年齢、性別を問わず、難病患者も含めて、家族介護だけに頼らずに、障がいのない人とともに共生し、安心して地域で自立した生活ができるよう、障がい福祉サービスにおける脱施設化をはじめ仕組みづくりや基盤整備、人材育成に取り組みます。
  • 改正された障害者総合支援法の附則を踏まえ、2011年の障がい者制度改革推進会議総合福祉部会の骨格提言の理念の実現を目指します。重度訪問介護の支援区分中度者への対象拡大や、常時介護を要する障がい者等に対する支援、障がい者等の移動や就労の支援、障害支援区分の認定や障がい福祉サービスの支給決定の在り方、意思疎通を図ることに支障がある障がい者等に対する支援の在り方などのうち、積み残された課題について検討します。
  • 精神障がい、知的障がい、身体障がい当事者の政策決定過程への参画を推進し、ともに議論しながら障がい者政策を進め、内閣府に置かれている障害者政策委員会の機能強化など、障害者基本法の改正を検討します。また共生社会の創造に向けた地域住民・NPOの活動に対する支援をより拡充するとともに、それらを通じて障がいの軽重にかかわらず、健常者とできる限り同等に社会に参画する選択肢を増やしていきます。
  • 障がい者の活躍の場を広げるとともに障がい者本人の意思決定を尊重するため、成年後見制度をはじめとするさまざまな制度の在り方を検討します。
  • 共生型福祉施設の設置を促進するなど、共生環境を整備します。
  • 「障害者の権利に関する条約」の第27条(労働及び雇用)が「締約国は、障害者が他の者との平等を基礎として労働についての権利を有することを認める」とうたっていることに鑑み、働く全ての障がい者にディーセント(働きがいのある人間らしい)でインクルーシブな就労の場を確保することを目標に据え、政策に取り組みます。
  • 内部障がいや発達障がい者を含めた移動困難者にとって大都市だけでなく地方でも移動しやすいユニバーサルデザイン社会を実現します。また、「バリアフリー法」の対象に災害時の避難対策も含めて、避難所等のバリアフリーを実現するとともに、「バリアフリー法」によってバリアフリーが義務付けられていない小規模の交通施設や建築物等についても、円滑化基準の改定や財政支援などを通じて、バリアフリー化を進めます。
  • 障がい福祉等に係る公的支出の対GDP比についてOECD平均である2%の水準を目指します。

障がい福祉サービスの安定提供、障がい福祉従事者の処遇改善

  • 障害福祉サービス等報酬の増額による経営の安定化とサービスの質の向上を進めます。
  • 障害福祉サービス等報酬の改定に当たっては、全ての障がい福祉事業者のサービスが安定的に提供されること、障がい福祉従事者の賃金が改善して生活が安定し、離職の防止や事業所の人材確保につながるよう配慮し、福祉施設・事業所の活動の質の評価を反映させる仕組みの導入や、事務職や技術指導者等の処遇改善も行います。
  • 障がい福祉事業所の安定的な運営のために、次期改定を待たずに令和6年度の障害福祉サービス等報酬改定を見直します。具体的には、生活介護、就労継続支援B型、グループホームにおける現場の支援実態を顧みない報酬体系の導入や基本報酬の減額等を見直し、事業所に対する適切な評価や基本報酬の引き上げを行います。
  • 障害福祉サービス等報酬の改定で食事提供体制加算の廃止や、送迎加算の引き下げが行われないよう、「食事加算等存続法」を制定します。
  • 障がい福祉従事者の賃金を全産業平均並みに引き上げることを目標とし、まずは「介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法」を早期に制定し、政府の処遇改善策からさらに支給対象を拡大、支給額を増額(障がい福祉事業所で働く全ての職員1人当たりプラス月額1万円)します。

虐待防止法の改正、差別解消法の実効性ある運用

  • 学校や病院等における通報の義務化をはじめ、第三者によるチェック体制を整備するなど障害者虐待防止法を改正し、学校や病院等での虐待防止を進めます。精神保健福祉法の改正で義務化された精神科病院における虐待の通報の実施状況を踏まえ、虐待防止と報告を確保するためのさらなる取り組みを検討します。
  • 改正障害者差別解消法の附帯決議や事業者に対する合理的配慮の義務化を踏まえ、基本方針等において、障がいの分野に応じて具体的な差別事例や合理的配慮の提供事例を盛り込むこと等を検討します。
  • 障がいを理由とする差別に関する相談及び紛争の防止や解決に当たっては、ワンストップの相談窓口の設置や利用しやすい体制整備に努めるとともに、裁判外紛争解決の仕組みの検討など、障害者差別解消法の実効性ある運用を目指します。
  • 障害者差別解消法の改正を踏まえて、障がい児・者が医療機関を受診しやすい環境整備に努めます。
  • 精神疾患と犯罪を結び付ける偏見の解消に取り組みます。
  • 旧優生保護法下での強制不妊手術被害者等に対する一時金・補償金について、地方自治体と連携し、対象者への周知に取り組みます。また、強制不妊手術等が進められた背景・原因を検証するとともに、優生思想の問題点や社会の多様性の重要性について、啓発を進めます。(再掲)

女性や性的マイノリティへの対応

  • 複合差別など女性や性的マイノリティの障がい者が直面する課題の実態調査を行い、意思決定の場への参画を進めていきます。障がい者が性暴力・DV被害を受けた場合の対策を推進します。

社会保障

  • 医療・介護・障がい福祉等に関する社会保障サービスの自己負担の合計額について、所得に応じて上限を設ける総合合算制度を創設します。(再掲)
  • 障がい者の暮らしを支える制度を拡充します。介護保険優先原則の廃止、障害年金の引き上げなどを検討します。

就労支援、社会参加

  • 福祉的就労利用者の一般就労への移行を進めるため、現行の雇用率制度に基づく一般就労の在り方にさらなる検討を加え、すでに地方自治体で導入事例のある多様な就労の場の創出や、尊厳ある生活を維持できる稼働所得の確保を目指します。
  • 障害者雇用率制度における除外率制度の廃止に向けた取り組みを進めるとともに、雇用主が雇用率達成のみを目的として障害者雇用代行ビジネスを利用しないよう事業主への周知・指導を行います。
  • 就労継続支援B型や地域活動支援センター等を利用している障がい者についても、労働者性が一定程度認められ、労災や健康診断など、個々の実情に応じて労働法規が一部適用されて安心して働けるよう、障がい者の就労支援体系全体の再編も視野に検討します。
  • 短期的には、現行の福祉的就労における低工賃問題への対応を図り、事業者への支援策の拡充を含めて、安定的な就労場所の確保や一般就労への移行促進も含めた自立可能な仕組みを構築します。
  • 障がい者がそれぞれの能力を発揮できるよう仕事を切り出すなど、障がい者の雇用(国の行政機関及び地方自治体を含む)を拡大し、定着支援を促進します。
  • 障がい者雇用を促進する観点から、「障害者雇用納付金制度」の在り方を検討します。
  • 職場・学校での介護、通勤・通学の移動中の介護を重度訪問介護の対象とする「重度障がい者就労就学支援法」を制定します。
  • 障がいの有無にかかわらず、全ての人が生涯にわたり文化芸術やスポーツを楽しめる環境を整えます。障がい者の余暇活動に対する支援の充実に努めます。
  • 障がい者の公共交通運賃補助制度の拡充と、障がい者割引チケット購入のDX化など利便性向上を進めます。

インクルーシブ防災、まちづくり

  • 災害対策基本法の改正を踏まえ、災害で誰も取り残されることがないよう、高齢者や障がい者などが避難計画策定や防災教育段階から関与する「インクルーシブ防災」を推進し、災害弱者対策を強化します。
  • 「インクルーシブ防災」の実現に向けて、避難所等のバリアフリー化のための改修の要件拡大を進めます。
  • 災害時の支援を充実します。小規模ホームのスプリンクラーの設置を支援します。
  • UD(ユニバーサルデザイン)推進のために改修補助制度を拡充します。またホテル等のバリアフリールームの拡大とUD化を推進します。
  • 鉄道の駅ホームからの転落防止等の安全対策のうち、財政的な負担の大きさから工事等が遅れているものについては、国が財政投融資資金等を活用して早急に進めます。(再掲)
  • 鉄道駅などで真に必要な方が長時間待たずにエレベーターを利用できるよう基準等の見直しを進めます。
  • カーボンニュートラルに向け、EV充電インフラ整備のユニバーサルデザイン化、アクセスビリティのさらなる向上を進めます。
  • 車椅子使用者用駐車施設等の適正利用の取り組みを進めます。
  • 音響式信号機や盲ろう者対応信号の普及をはじめ、盲ろう者や視覚障がい者が安心して安全に渡れる横断歩道の整備を加速化するため、地域の合意形成に向けた指針を定めるとともに、国としても省庁横断的に取り組み、自治体への財政支援を拡充します。

情報アクセシビリティ・コミュニケーションの推進、手話言語法の制定

  • 自治体での手話言語条例の制定を推進するとともに、聴覚障がい者が安心して日常生活や社会参加を進められるよう、手話習得の機会の拡大や手話文化の継承・発展を図る施策を推進する「手話言語法」を制定します。
  • 「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」の附帯決議を踏まえ、障がい者による情報の十分な取得や利用と円滑な意思疎通の手段を充実させるため、国・地方自治体がアクセシブルな機器を優先調達する仕組みを導入します。
  • 聴覚障がい者と聴者を電話で即時双方向につなぐ電話リレーサービスの着実な運用に努めます。

インクルーシブ教育・特別支援教育、学びの環境の整備

  • 障がいの有無などにかかわらず、子どもたちが同じ場でともに学ぶことを追求し、難病や内部障がい、医療的ケア児を含む個別の教育ニーズのある子どもに対し、合理的配慮と必要な支援を提供できるインクルーシブ(ともに生きともに育ちともに学ぶ)教育を大学教育に至るまで実現します。
  • 障害者権利条約に基づくインクルーシブ教育を目指して一人ひとりに応じた支援を行うため、医学モデルとなっている学校教育法上の特別支援教育の目的を見直し、特別支援教育の在り方について検討を進めます。
  • 子どもが発達段階や習熟度に応じた指導をインクルーシブな場、あるいは居住地の近くで受けられるよう、通級による指導も含め、体制・支援を充実させます。
  • 通級指導や交流および共同学習が、障がいのある児童・生徒を部外者として位置付けることがないようにします。教員や介助員、教材等の在り方について検討しつつ、普通学級で障がいのある児童・生徒が十分に学べるための環境整備を進めると同時に、全ての教職員、普通学級の児童・生徒が、障がいのある児童・生徒とともに支えあい、仲間として受け入れる理解を深めるための取り組みを進めます。
  • 障害者放課後デイサービスの体制の充実並びに経営の安定化と併せて、重度障がい児や医療的ケア児を含めた障がい児の受入れを進めます。
  • 高校進学を希望する障がい者が、定員内にもかかわらず不合格になる事例もあることから、こうした定員内不合格を禁止するとともに、入試時及び入学後の環境整備を推進します。
  • AYA世代(思春期・若年成人)のがん患者や難病患者が治療を受けながら学業を継続できるよう、特に取り組みが遅れている高校生のための院内学級を整備します。

医療的ケア児等の学ぶ権利の保障

  • 「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」に則り、たんの吸引や経管栄養などを必要とする医療的ケア児の支援を拡充します。医療的ケア児の保育や学校教育等を受ける権利を保障するために、看護師を保育所や学校等に配置することや、研修を受けた介護福祉士等を学校に配置するための環境整備を進めるとともに、通学支援などを拡充し、希望する学校等に通学しやすい環境を整えます。医療的ケア児を家庭だけでなく社会全体で支えるための支援事業を拡充します。(再掲) 

発達障がい

  • 発達障がいに対する地域や企業、職場での他の職員、産業医の理解の増進、職場での意思決定支援者による支援の導入等により、さらなる障がい者雇用の拡充を図ります。
  • 発達障がい者に対して切れ目のない支援が行われるよう、2016年に施行された改正発達障害者支援法に基づき、発達障がいの疑いのある児童の保護者への支援、教育上の配慮、関係機関と民間団体の間での支援に資する情報の共有、就労の支援、地域での生活支援、権利利益の擁護、司法手続での配慮、発達障がい者の家族等への支援等を着実に進めます。また、特別支援教育コーディネーターの役割を担う教員の在り方について検討します。
  • 大人の発達障がいへの対応(就労支援、ピアサポート等)を強化します。

精神保健福祉法

  • 精神疾患による患者やその家族への地域生活支援の強化等を充実させ、地域で自立した生活ができるよう、病院から地域への移行を促進します。移行に必要な生活支援の在り方については、当事者とともに議論しながら検討します。また、患者の尊厳を守るため、精神科病院での身体拘束の削減を進めます。
  • 医療保護入院者退院支援委員会には、入院者本人及び本人の地域移行の支援者が参加することで、入院期間の更新やみなし同意による事実上の長期入院を防ぐ措置を講じます。
  • 家族等が同意や不同意の意思表示をしない場合に、市町村長の同意が安易に行われ、医療保護入院が増加することのないよう、必要な措置を講じます。
  • 精神障がい分野のピアサポート(当事者による相談支援)事業がごくわずかな自治体でしか行われていない現状を改善するため、障害者ピアサポーター養成研修事業において事業所に雇用された障がい者だけでなく、多様な取り組みが評価されるように見直すなど、人材の養成・確保を国の責任で進めます。

失語症対策

  • 失語症対策を進め、障害者手帳制度を是正し、障害年金等級の見直しを検討します。
  • 失語症者が、どこに住んでいても意思疎通支援サービスが利用できるよう、失語症者向けの意思疎通支援者の養成、人材確保を加速化するため、自治体への財政支援を拡充します。

難病対策

  • 難病・小児慢性特定疾患患者への支援を拡充します。
  • 患者のニーズを踏まえ、難病対策を拡充します。2014年に成立した難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)で全国に設置された難病対策地域協議会の実態を把握し、患者・家族の積極的な参画を促すための支援を行い、協議会の活動を活性化します。また、医療費の自己負担限度額の在り方、成人後の小児慢性疾患への切れ目のない移行期医療(トランジッション)など、改正難病法の附帯決議に残された課題について検討を進めます。検討に当たっては、当事者の声に引き続き耳を傾け、ともに議論しながら進めます。
  • 包括的な難病対策の促進に向け、難病等に対する有効な新規治療薬・治療方法の開発を進めるとともに、新たな治療薬の実用化に当たっては早期診断や早期治療が可能となるよう医療提供体制を早急に整備します。
  • 指定難病の医療受給者証等により、難病患者にも障害者法定雇用率が適用できるよう、精神障がい者の雇用率算定の状況を見極めつつ検討を進め、難病患者の就労支援を強化します。
  • 「難病の子どもの資金支援法」(仮称)を制定し、税制上の優遇措置を検討します。
  • 先天性の代謝異常症等の患者が必要とする特殊ミルクの安定供給を進めます。
  • ALSや筋ジストロフィー患者をはじめとする難病患者が人工呼吸器をつけて地域で安心して暮らせるよう、医療的ケアの提供体制を整え、医療機関をはじめとする地域の関係機関と連携した支援対策に取り組みます。
  • 新型コロナウイルス感染症の後遺障害に関する研究調査を継続するとともに、ME/CFS(筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群)との因果関係の解明に向け、神経免疫系の研究調査を実施します。