第3章各分野の対応
19 消費者問題
219回臨時国会および221回特別国会に消費者庁提出法案はなかった。この機会を捉え、消費者部門会議では、消費者法・消費者行政の今後の方向性を改めて検討するため、同分野の専門家から意見聴取を行った。
消費者庁設置以降、規制行政(不当取引・悪質商法の防止)、支援行政(自立した消費者の育成)、協同行政(相談情報の共有や見守りネットワークの構築)については一定の進展が見られるが、被害者の財産的・精神的損害を回復する救済行政は依然として不十分であるとの指摘を受けた。また、消費者庁設置法案の附帯決議事項である、多数の消費者に被害を与えた者の不当収益をはく奪し被害者を救済する「不当収益のはく奪制度」に関する検討が進展していない点も課題として示された。この課題は、近年生じたジャパンライフ事件や旧統一教会問題にも通ずる問題であると改めて認識するとともに、立法府として必要な制度の整備を進める必要性を確認した。
「みんなで大家さん」トラブルへの対応
全国で「みんなで大家さん」を巡る出資トラブルが深刻化していたことから、2025年8月より消費者部門で状況を確認した。「みんなで大家さん」は、高利回りを強調した勧誘により消費者から多くの出資を集めたが、事業の実態が不透明で、配当停止や返金遅延が相次ぎ、出資者が資産を失う被害が広がった。また、本件は、消費者からすれば一般の金融商品と同様に見えるが、実際には、金融庁の監督が及ばない不動産特定共同事業法(不特法)に基づいて販売されており、事業者側の説明不足やリスクの不告知が繰り返されてきた。
不特法は国土交通省の所管であり、また、「みんなで大家さん」の成田プロジェクトの運営主体である共生バンクは、同省の所管する成田国際空港株式会社(NAA)の土地を賃借していることから、国土交通部門と合同で会議を行うとともに、「不動産投資商品をめぐる被害対策ワーキングチーム」を設置した。WTではNAAが共生バンクに貸し出した開発予定地を視察し、当事者の意見と照らし合わせて、政府の対応を確認し、今後起こり得る問題や被害回復策の検討を求めた。制度の隙間を突いた悪質な投資スキームを防ぐため、引き続き政府の対応を注視していく。
高齢者の看取りビジネス等を巡る消費者被害の防止・救済を求める
全国で「高齢者等終身サポート事業」を巡る契約トラブルが相次ぎ、契約内容が不明確なまま高額な費用を請求され、解約困難となり、生活がひっ迫しているとの相談が寄せられている。本来、終身サポートは、入退院時の身元保証、賃貸契約の支援、日常生活支援、死後事務など、高齢おひとりさまの生活を支える重要な役割を担うが、一部事業者がサービス内容や費用負担を十分に説明せず、消費者契約法上の不当勧誘に該当し得る手法で契約を誘導している。医療、住宅、葬儀など複数の行政分野にまたがる事業であるにもかかわらず、政府の対応は縦割りのままで、被害防止・救済の両面で十分とはいえない。消費者部門は、現行ガイドラインの不足点を踏まえた説明義務や費用の透明化、解約手続の明確化などの改善、事業者の登録制・認可制導入の検討、返金支援や相談体制の強化など、政府が一体的に取り組むべき対応を取りまとめ、2025年12月、消費者庁および厚生労働省に要請を行った。高齢おひとりさまの生活基盤を守るため、制度の実効性確保に向けて引き続き取り組んでいく。
