第2章「次の内閣」・政務調査会 各分野の対応
内閣
特別職公務員の給与等引き上げに反対
人事院は2023年8月、公務員のなり手不足等の課題に対応すべく、若年層に重点を置いた給与・ボーナスの引き上げ等を行い民間給与等との格差を埋めることを勧告した。
この勧告を受け、政府は212回臨時国会に「一般職の職員の給与に関する法律案の一部を改正する法律案」(一般職給与法案)・「特別職の職員の給与に関する法律及び二千二十五年日本国際博覧会政府代表の設置に関する臨時措置法の一部を改正する法律案」(特別職給与法案)を提出した。
立憲民主党は、一般職給与法案には賛成した。他方で、物価高騰のさなか、特別職公務員のうち総理大臣および大臣以下政務三役・内閣官房長官・万博政府代表の給与等を引き上げることには国民の理解が得られないことから、これらの給与等を当面据え置く特別職給与法案の修正案を提出したが、否決されたため、同法案には反対した。法案はいずれも可決・成立した。
セキュリティ・クリアランス法案に賛成
政府は213回通常国会に「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案」(重要経済安保情報保護活用法案)を提出した。特定秘密保護法に規定されている適性評価(セキュリティ・クリアランス)制度を「重要経済安保情報」に導入する本法案については、労働組合や弁護士会から問題点が指摘され、与野党で修正が合意された。立憲民主党は問題点の解消へ向けた附帯決議を付して賛成し、法案は可決・成立した。(詳細 第3章 セキュリティ・クリアランス法案)
経済安保推進法改正案に賛成
政府は213回通常国会に「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律の一部を改正する法律案」(経済安保推進法改正案)を提出した。本法案は、2023年7月に発生した名古屋港コンテナターミナルのシステム障害事案を受け、経済安保推進法を改正し、港運事業を同法の対象事業に追加して情報セキュリティ向上を図るものである。
港運事業の情報セキュリティ向上について、既存の制度に新たな規制を追加する法改正は、特に中小事業者にとって負担が大きく、運用次第で事業者が損失を被るおそれも指摘された。
立憲民主党は、対象事業者の指定を慎重に行うこと等の附帯決議を付し、法案には賛成した。法案は可決・成立した。
銃刀法改正案に賛成
2022年に発生した安倍元首相の銃撃事件・2023年に発生した長野における猟銃を使用した殺人事件等を踏まえ、政府は213回通常国会に「銃砲刀剣類所持等取締法の一部を改正する法律案」(銃刀法改正案)を提出した。
この法案については、ハーフライフル銃の規制強化によってクマ類・ニホンジカ・イノシシ等を管理する人材の育成に支障が生ずる等の懸念が指摘され、立憲民主党は懸念に対応する附帯決議を付し、法案には賛成した。法案は可決・成立した。
再エネ海域利用法改正案に賛成
政府は213回通常国会に「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に関する海域の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案」(再エネ海域利用法改正案)を提出した。本法案は、排他的経済水域(EEZ)に浮体式を中心とする洋上風力発電を導入する仕組みの創設等によって洋上風力発電の導入拡大を図るものである。
法案については、自然保護団体から、計画の初期団体から関係者が十分な関連情報に基づき合意するための「海洋空間計画」が策定されるべきことや、事業実施後のモニタリングの仕組みを整備すべきこと等の指摘があり、立憲民主党はこれらの点を附帯決議に反映させ、法案には賛成した。法案は衆議院で可決されたが、参議院で継続審議となった。
デジタル関係法案等への対応
政府は213回通常国会に「情報通信技術の活用による行政手続等に係る関係者の利便性の向上並びに行政運営の簡素化及び効率化を図るためのデジタル社会形成基本法等の一部を改正する法律案」(デジタル社会形成基本法等改正案)を提出した。立憲民主党は「誰ひとり取り残されないデジタル社会」というビジョンに基づき、デジタル・アナログを併用した丁寧なデジタル社会の形成を求め、同法案に附帯決議を付して賛成し可決・成立した。また、党デジタル政策プロジェクトチームでは著名人の名前を騙るインターネット上のなりすまし広告による詐欺行為や、偽造マイナンバーカードを用いたスマートフォン乗っ取りの被害等について、関係者や政府からのヒアリングを実施した。
悪質ホストクラブ被害への対応
ホストクラブ等が客である若年女性に高額な「売掛」債務を負わせ、売春させて回収する等の「悪質ホストクラブ被害」が社会問題化し、立憲民主党は2023年11月、政府に対し「悪質ホストクラブの被害防止対策の徹底・強化を求める要請」を行った。また、議員立法「特定遊興飲食高額債務問題対策の推進に関する法律案」(悪質ホストクラブ被害対策推進法案)を212回臨時国会に、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案」(悪質ホストクラブ被害防止法案)を213回通常国会に提出した。法案はいずれも継続審議となった。(詳細 第3章 悪質ホストクラブ被害対策・防止法案)
離島のJR運賃並み法案を提出
現在の離島の航空・船の運賃割引制度は、対象を住民・準住民に限定している。
立憲民主党は、島民以外も運賃割引の対象とすることにより、交流人口の増加を図り、島内の消費を伸ばし、島の経済を活性化させる国境離島みんながJR運賃並法案を213回通常国会に衆議院へ提出したが、継続審議となった。
大阪・関西万博の適正な実施を求める
2023年10月、2025大阪・関西万博の会場建設費が500億円上振れすることが明らかとなった。立憲民主党は11月、「2025大阪・関西万博に関する基本的考え方」を発出し、費用の上振れを批判するとともに、今後、国民負担を増やさない前提で責任ある対処をするよう求めた。また、大阪・関西万博に関する費用の全体像について予備的調査を実施した。2024年1月には能登半島地震で甚大な被害が発生したことから、「能登半島地震の復旧・復興を最優先することを求める声明」を発出した。
旧姓を通称使用する意思の尊重を求める
政府は選択的夫婦別姓制度の導入を先送りし続け、結婚の際の姓の変更による不利益は、ほとんどの場合、女性がこうむっている。戸籍上の姓が変わっても、社会活動における氏名の同一性を保持するため、旧姓を通称として使用する女性も少なくない。ところが、いわゆる国会同意人事の候補者リストでは、旧姓を通称使用する候補者の戸籍上の姓が主、通称が従として表記されている。立憲民主党は2024年2月、「国会同意人事の候補者が通称名を使用している場合の表記に関する要請」を行い、通称名を使用している候補者についてはその意思を尊重し通称名を主として表記するよう政府に求めた。
安定的皇位継承に向けた取り組み
2022年1月、衆参両院は、天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議に基づく政府における検討結果の報告を受けた。2023年12月、額賀福志郎衆議院議長と海江田万里副議長から、立法府としての対応について協議を行うべく各党内の議論を深めていただきたい旨の要請があった。
立憲民主党は「安定的な皇位継承に関する検討委員会」において党内議論を重ね、2024年3月12日に論点整理を取りまとめた。5月17日、23日と2回にわたり衆参正副議長の主催する立法府の対応に関する全体会議が開かれ、6月14日には個別の意見聴取が行われた。(詳細 第3章 皇位の安定的継承)