第3章焦点となった法案・課題への対応
一刻も早い水俣病問題の解決を求める水俣病問題の解決支援法案
水俣病は、日本の経済成長期に起きた四大公害の一つとして知られ、環境省の前身である環境庁発足の原点ともいわれる。その環境省が2024年5月の患者・被害者との懇談会(熊本県水俣市)において、長年、水俣病で苦しんで来られ、全面解決を求めている方々の声を十分に聞くことなく、3分でマイクを切り、発言を遮断した。水俣病の公式確認から70年近く経た今もなお、救済を求めて係争が起きている現状に、環境省は向き合うことができていないとの批判は免れない。
環境省の形骸化した聞く姿勢をただす
5月1日に何が起きたのか、懇談会の責任者である環境大臣は現場でどのように認識していたのか、立憲民主党は国会質疑や環境部門会議等で確認した。環境省が提出した懇談会進行シナリオには、団体の発言時間について「3分でマイクオフ」と信じがたい記載がされていた。苦しみを抱える人々と共に、解決に向けて並走するための懇談ではなく、苦情として聞くだけの会になっていたと疑わざるを得ない。
また、現場では、「マイクを切ったんじゃないか」と指摘する声が上がっていたにもかかわらず、伊藤信太郎環境大臣はマイク切りに気づくことはなかったと発言している。同じ会場にいながら、気づかないはずがなく、大臣の発言はにわかには信じがたい。
水俣病被害者と改めて向き合う
立憲民主党は改めて熊本県水俣市と新潟県新潟市を訪問し、水俣病被害者の方々から意見を伺った。主な意見は、被害の実態解明と被害地域における健康調査の速やかな実施、最高裁判決を踏まえた認定基準の見直し、メチル水銀が蓄積した水俣湾および阿賀野川の魚介類を摂取した経験があり、水俣病の症状がある人々を「公害健康被害の補償等に関する法律」(公健法)の認定患者として認めること等であった。
政府は、「水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法」(水俣病特措法)で明記され、現地で必要とされている疫学を含む健康調査を行わず、MRIを使用した調査研究にすり替えるなどして被害者との信頼関係を大きく棄損させている。また、原因企業の責任に固執し、本来、最優先で考えるべき被害者救済が滞っている。地域での差別などをおそれ、水俣病特措法の申請ができなかった水俣病被害者がいまだ数多く存在することを認識すべきである。そして、公健法や水俣病特措法の制度を維持するために、水俣病の症状を有する被害者の多くを切り捨て、被害者を分断し、半世紀以上も水俣病被害者を困難な状況に置いていることを国として反省すべきである。
これらの問題意識から、立憲民主党は213回通常国会に水俣病問題の解決支援法案を提出した。法案では、水俣病特措法の再開(未申請者)と、疫学を含む健康調査の2年以内の実施、健康調査の結果などを受けての水俣病特措法の抜本的な見直しを講ずることを盛り込んだ。また、環境大臣に対して「一刻も早い水俣病問題の解決を求める緊急要請」を行った。緊急要請では、最優先課題として現地の人々と環境省との信頼構築、医療費の充実、汚染者負担の原則に委ねていては被害者が不利益を被ることになる場合の救済の在り方などを盛り込んだ。
本法案は残念ながら今国会では審議にすら入ることができずに継続審議となったが、今後も引き続き現地の人々の声に耳を傾け、救済の実現を目指していく。