毎年9月頃に発刊国会レポートDiet Report

立憲民主党
国会レポート2024
(212回臨時国会、213回通常国会総括)

第2章「次の内閣」・政務調査会 各分野の対応

予算・決算・行政監視

「物価高を克服するための緊急経済対策」を提言

2023年は、前年の円安が一服し、年初は1ドル130円程度で推移していたが、10月には再び150円を突破するなど、急速な円安が進んだ。また、消費者物価指数は3%台前半から2%台後半と高い水準で推移し、実質賃金も長期間にわたりマイナスが続くなど、日本経済の土台を成す家計は依然として厳しい状況に置かれていた。しかし、政府の対応は後手に回り、肝心の家計は負担軽減を実感できない状態が続いていた。

こうした状況を受けて、立憲民主党は10月18日、「物価高を克服するための緊急経済対策」(総額7.6兆円規模)を発表した。本対策は、中間層を含む全世帯の約6割を対象とする3万円の「インフレ手当」、児童手当の拡充や給食費無償化など党の主要政策を先行実施する「緊急前倒しプラン」、事業者向け電気料金高騰対策、農林水産キャラバンにおける現場の声を形にした「第一次産業緊急支援プラン」、省エネ家電買い替え支援など、家計・事業者に直接届く支援策を集中的に講じる内容となっており、年度内、当面6カ月間を対象として、緊急の経済対策を提言するものであった。

11月2日、ようやく、政府は「デフレ完全脱却のための総合経済対策」を閣議決定し、同対策に基づき、212回臨時国会に2023(令和5)年度補正予算を提出した。一般会計総額は約13.2兆円とされたが、GDPギャップが解消しつつある中でこのような大規模な財政出動を実施することは、さらなる物価高騰を助長し、国民生活を一層圧迫する懸念があった。

これを受けて立憲民主党は、政府の経済対策に関係する予算等を撤回の上、「物価高を克服するための緊急経済対策」を実現するとともに、所得税・金融所得課税の累進性強化、基金の余剰金の国庫返納等を図り、追加の公債発行について全額を取りやめること等を求める予算の編成替え動議を衆議院予算委員会に提出したが、与党等の反対により否決され、11月29日、2023年度補正予算は原案通り成立した。

2023.10.18 「物価高を克服するための緊急経済対策」を発表
2023.10.18 「物価高を克服するための緊急経済対策」を発表

課題山積の巨額当初予算に反対

政府は2023年12月22日、2024(令和6)年度当初予算を閣議決定した。その後、2024年1月1日に発災した令和6年能登半島地震に対応するため、1月16日、一般予備費を5000億円増額する概算変更の閣議決定が行われた。

一般会計総額は112.6兆円に上り、2年連続で110兆円の大台を超えた。対前年比では12年ぶりの減となったが、これはこの間野放図に計上されてきた巨額の特定目的予備費が減額されたこと等によるものであり、歳出は依然として膨張傾向にあった。一方で、税収は69.6兆円に留まり、巨額の不足は新規の国債発行で賄うこととされたが、「金利のある世界」が戻りつつある中でのさらなる債務の膨張は、財政の持続可能性に影響を与えかねない。

加えて、防衛増税の実施時期の不透明な先送り、子育て世帯の負担増を招く本末転倒の「子ども・子育て支援金制度」の創設など、財源確保の在り方にも大きな問題があった。

また、政府・与党は、能登半島地震の復旧・復興のための予算が含まれているとして衆議院通過を急いだが、実際には一般予備費が積まれているのみだった。加えて、予備費での対応は、財政民主主義や規模の観点等から問題があることから、速やかに補正予算を編成することを強く求めたが、政府・与党は一顧だにしなかった。

こうした理由から立憲民主党は同予算に反対したが、3月28日、与党の賛成により成立した。

立法府軽視の予備費濫用を厳しくただす

213回通常国会では2022(令和4)年度予備費等6件が審議された。中でもコロナ・物価高予備費は合計で9兆8600億円が計上されたが、国会の事前議決の例外である予備費の規模として極めて異常であった。また、内閣府の地方創生臨時交付金1.2兆円のように、年度内に支出すると言いながら、その全額、あるいは多くを翌年度に繰り越している事例も散見された。全体として、国会開会中は原則として予備費を使用しないとする閣議決定に反して支出をしている事例が多数見受けられ、財政民主主義の観点から断じて看過できるものではなかった。

こうした理由から立憲民主党は予備費5件に反対した。なお、特別会計経費増額総調書等1件については、弾力条項に基づき地方自治体への譲与金を増額するものであることから賛成した。いずれも5月29日、与党等の賛成により承諾された。

2022年度決算等に反対、内閣に対して警告

参議院では212回臨時国会、213回通常国会で2022(令和4)年度決算等が審議された。同年度の決算剰余金は過去2番目の規模となる2.6兆円を記録したが、これは政府が防衛財源を確保するにあたって示した見込み額(1.4兆円)と大幅に乖離しており、前提となる税収の見積もりに失敗していると言わざるを得なかった。

その他にも、予算・決算審議において様々な問題点が明らかにされてきたことを踏まえ、立憲民主党は2022年度決算並びに国有財産増減等計算書に反対した上で、内閣に対する警告決議、措置要求決議、会計検査院への検査要請を取りまとめ、賛成した。なお、国有財産無償貸付状況総計算書は、住民生活に資する国有財産を地方公共団体等に無償で貸し付けるものであることから賛成した。措置要求決議、検査要請は6月10日の決算委員会で決議・要請され、その他は6月12日の本会議で是認・警告された。

2024.6.10 参議院決算委員会で総理入りの締めくくり総括質疑を実施
2024.6.10 参議院決算委員会で総理入りの締めくくり総括質疑を実施

決算審議の遅れ解消、議決方式の見直しを提言

衆議院では212回臨時国会、213回通常国会で、2020(令和2)・2021(令和3)・2022(令和4)年度決算等が審議された。立憲民主党は決算の議決案並びに国有財産増減等計算書に反対、国有財産無償貸付状況総計算書に賛成した。いずれも6月18日の本会議で議決・是認された。

なお、衆議院の決算審議は複数年度をまとめて行うことが常態化していたが、今回ようやく積み残しが解消されることになったことを受け、国家財政のPDCAサイクルを確立する観点から、今後毎年直近の決算を審議することを強く呼びかけた。また、衆議院では、政府の予算執行等の問題点を指摘した上で、それ以外の事項については「異議がない」とする形で決算の議決が行われているために、決算本体に反対する以上、議決案にも反対せざるを得ない。参議院では決算本体と警告決議等は別に採決されていることを指摘し、議決方式の見直しを強く求めた。