第2章「次の内閣」・政務調査会 各分野の対応
厚生労働
トリプル改定の見直し等を要請
2024年度に医療・介護・障害福祉の3つの報酬が同時に改定される6年に1度のトリプル改定が行われた。厚生労働部門は、各報酬改定について関係団体等からヒアリングを行い、政府に問題点をただした。特に、介護報酬改定による訪問介護の基本報酬の引き下げ、障害福祉サービス等報酬改定による基本報酬の減額等について、撤回や見直しを厚生労働省に申し入れた。
さらに立憲民主党は213回通常国会で、介護の崩壊を防ぐため、「訪問介護事業者に対する緊急の支援に関する法律案」(訪問介護緊急支援法案)、「介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案」(介護・障害福祉従事者処遇改善法案)を衆議院に提出した。2法案は政府提出の「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律案」とともに審議されたが、継続審議となった。(詳細 第3章 訪問介護緊急支援法案、処遇改善法案)政府案は、介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等を規定するものであるが、介護離職等を防ぐには介護サービス等の提供体制の確保も必要なため、立憲民主党は提供体制の検討規定を追加する修正を求めたが与党は応じなかった。しかし、政府案は介護・育児と仕事との両立に一定程度資するものであるため、立憲民主党は附帯決議を付して賛成した。政府案は可決・成立した。
2024年度の改定で薬価は引き下げられた。薬価は2年に1度の改定に加えて中間年も改定され、毎年改定となっている。この中間年改定は、医薬品産業全体の体力の低下と医薬品の不安定供給の原因となっていることから、厚生労働部門は厚生労働省に中間年薬価改定を廃止し、2年に1度の改定とすることを申し入れた。
介護、医療の負担増等の課題に取り組む
政府は2023年12月、「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)」を決定した。その内容には、介護保険はサービス利用の自己負担2割・3割の対象拡大等、後期高齢者医療は窓口負担3割の対象拡大について検討することが盛り込まれた。物価高が続く中でのこれらの負担増は、介護や医療サービスの利用控えにつながり、高齢者の要介護度や健康の悪化に深刻な影響をもたらすおそれがあった。立憲民主党は、物価高騰の中で社会保障の負担増を行わないこと等を厚生労働大臣に申し入れた。
また、厚生労働部門は、介護サービスを持続的に確保するための方策など介護制度の中長期的課題について検討を深めるため、精力的に有識者ヒアリングを行った。
雇用問題の対策を提案
政府は213回通常国会に「雇用保険法等の一部を改正する法律案」を提出した。内容は、雇用保険の適用拡大、教育訓練やリスキリング支援の充実、育児休業給付の安定的な財政運営の確保等である。介護休業給付の国庫負担の暫定措置や非正規雇用者の教育訓練への支援など残る課題は附帯決議で担保し、立憲民主党は賛成した。本法案は可決・成立した。
また、雇用をめぐる諸課題について提案や検討を行った。「年収の壁」による働き控えが起きていること等を踏まえ、立憲民主党は213回通常国会で、2つの給付金によって対応する「就労支援給付金制度の導入に関する法律案」を衆議院に提出し、継続審議となった。(詳細 第3章 就労支援給付制度の導入に関する法律案)
近年深刻な社会問題となっているカスタマーハラスメントに関して、立憲民主党は2024年6月、関係団体からヒアリングを重ねた上で、労働者保護のための措置を事業者に義務付けることや、対策を講じる際に消費者の苦情の申出等が不当に妨げられることのないよう特に配慮することなど、法改正を含めて検討し対策を行うよう厚生労働大臣に申し入れた。
雇用問題対策プロジェクトチームでは、同一価値労働同一賃金や有期雇用に関する規制等の課題について、有識者ヒアリングを重ねた。
健康保険証廃止の延期を要請
マイナンバー在り方検討プロジェクトチームは「マイナ保険証に関する基本的考え方」を取りまとめた。立憲民主党は、この基本的考え方で示した2024年秋の保険証廃止の延期を実現するため、212回臨時国会で「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案」(保険証廃止延期法案)を衆議院に提出し、継続審議となった。(詳細 第3章 保険証廃止延期法案)
医療や福祉に関する政府案を徹底審議
政府は212回臨時国会に「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律案」を提出した。本法案の規定のうち、欧米各国で既に承認されている大麻成分を含む抗てんかん薬の施用等を日本でも認めることは、医療ニーズに対応する必要な措置であった。一方で大麻の施用罪創設については、必要ではあるものの、処罰化によって若い世代の将来を損ねる危惧もあった。立憲民主党は、大麻不正施用者への治療・支援や、薬物乱用防止に向けた若者への広報啓発活動の強化等を盛り込んだ附帯決議を付した上で賛成し、本法案は可決・成立した。
213回通常国会では、政府は「再生医療等の安全性の確保等に関する法律及び臨床研究法の一部を改正する法律案」を提出した。遺伝子治療の安全な提供や普及、提供計画の審査の公平性、研究対象者の保護が図られるものであり、先端医療技術の発展や研究対象者への安全な医療提供につながる改正であることから、立憲民主党は賛成し、本法案は可決・成立した。
また、政府は213回通常国会に、生活困窮世帯への居住支援や子どもの自立支援など支援策の強化を図る「生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案」を提出した。相談支援員の体制や「貧困ビジネス」対策の強化など課題は残るが、生活困窮世帯への支援強化につながるものであり、立憲民主党は附帯決議を付して賛成し、本法案は可決・成立した。
ハンセン病元患者家族への補償を推進
213回通常国会で、ハンセン病の元患者の家族に支給する補償金の請求期限を5年間延長する議員立法「ハンセン病元患者家族に対する補償金の支給等に関する法律の一部を改正する法律案」を超党派で取りまとめた。本法案は衆議院厚生労働委員長提案により可決・成立した。その際、立憲民主党が主導して、偏見差別をおそれて請求を躊躇する当事者が多いことを踏まえたきめ細やかな広報の実施等を内容とする決議を採択した。