毎年9月頃に発刊国会レポートDiet Report

立憲民主党
国会レポート2024
(212回臨時国会、213回通常国会総括)

第2章「次の内閣」・政務調査会 各分野の対応

農林水産

農林水産部門では、農林水産政策大綱を取りまとめるとともに、213回通常国会における農林水産省提出6法案の対応を協議するため、食料・農業・農村基本法検討ワーキングチーム(法案成立後、食料・農業・農村基本法政策ワーキングチームに改称)、森林・林業政策ワーキングチーム、水産政策ワーキングチーム、棚田振興ワーキングチームの4WTを設置し、それぞれ政府、有識者、関係団体等との意見交換を行ってきた。

特に、「食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案」(食料・農業・農村基本法改正案)の議論に際しては、食料・農業・農村基本法検討WTでの議論に加え、党農林漁業再生本部の下、農林水産キャラバンを全国各地で展開し、地域の声を政策立案に反映させてきた。今後も全国で活動を展開していくことを確認している。

2024.3.16 農業者との意見交換(農林水産キャラバン宮城)
2024.3.16 農業者との意見交換(農林水産キャラバン宮城)
2024.6.28 練馬区の花農家を視察(農林水産キャラバン東京)
2024.6.28 練馬区の花農家を視察(農林水産キャラバン東京)

農林水産政策大綱を取りまとめる

立憲民主党は農林水産政策の見直しを進め、2024年6月20日に農林水産政策大綱を取りまとめた。

同大綱は、かつて実施された農業者戸別所得補償制度に関して、食料安全保障の確保と多面的機能の発揮に貢献する農業者の所得向上に資する、農地に着目した直接支払に転換し、わが国農業の中心である家族経営や集落営農等を積極的に支えることを基本的考え方としている。併せて、中山間地域等条件不利地での地域資源の活用、農業生産の活性化、地域の特性に合う多様な農業の展開、有機農業、環境保全型農業の推進等の施策を通じ、農山村再生の実現等を図るものとなっている。今後は、同大綱に基づいて、新たな直接支払制度の具体的な制度設計等を進めていく。

食料・農業・農村基本法改正案に反対

25年ぶりの改正となる食料・農業・農村基本法改正案に対して、立憲民主党は農林水産政策大綱を踏まえて修正を求めた。しかし政府・与党が応じなかったため、同法案および与党など提出の修正案に反対したが、与党等の賛成多数により可決・成立した。(詳細 第3章 食料・農業・農村基本法改正案

食料供給困難事態対策法案に反対

政府が213回通常国会に提出した「食料供給困難事態対策法案」は、農業者に対して必要以上に強権的な仕組みを強いる上、刑事罰(20万円以下の罰金)が不当に重すぎるため、行政罰(20万円以下の過料)に修正することを求めた。しかし政府・与党がこれに応じなかったため、立憲民主党は、同法案に反対したが、同法案は与党等の賛成多数により可決・成立した。法案審議で明らかになった課題への政府の対応を確保するため、立憲民主党等の提案により、計画届出の指示について、真に必要な者及び場合に限るなど、適切かつ慎重な運用に努めることなどを内容とする附帯決議が付された。

農業振興法等改正案に賛成

政府が213回通常国会に提出した「食料の安定供給のための農地の確保及びその有効な利用を図るための農業振興地域の整備に関する法律等の一部を改正する法律案」は、農業生産の基礎である農地の確保及び農地の適正かつ効率的な利用の促進を図るものである。立憲民主党は、改正案に賛成した上で、農地所有適格法人の議決権要件の特例に対する農村現場の懸念が強いことなどから、附帯決議を求めた。農業経営発展計画の認定に当たって、投機目的の出資を排除するなど厳格に審査するとともに、計画認定後も農業現場に寄り添った監督措置等を適切に講ずることなどを内容とする附帯決議が付され、同改正案は可決・成立した。

スマート農業技術の活用促進法案に賛成

政府が213回通常国会に提出した「農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律案」は、スマート農業技術等の開発と普及等を進めていくものである。立憲民主党は、同法案に賛成した上で、附帯決議を求めた。スマート農業技術の活用の促進に係る基本方針の策定に当たって、中小家族経営や中山間地域等の条件不利地を含めた農業者の生産性の向上に寄与するものとなるよう考慮することなどを内容とする附帯決議が付され、同法案は可決・成立した。

特定農産加工業経営改善臨時措置法改正案に賛成

政府が213回通常国会に提出した「特定農産加工業経営改善臨時措置法の一部を改正する法律案」は、法の期限の延長等を内容とするものである。既に発効済みのCPTPPや日EU・EPA等により、今後も関税引き下げが予定されている品目があり、特定農産加工業者の経営の改善を促進する必要があることから、立憲民主党は、改正案に賛成した。その上で、農産加工業者の原材料の調達の安定化及び食料安全保障の強化に資するよう、必要な措置を講ずることなどを内容とする附帯決議を付し、同改正案は可決・成立した。

漁業法等改正案に賛成

政府が213回通常国会に提出した「漁業法及び特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案」は、TAC(漁獲可能量)報告義務に違反した太平洋クロマグロが流通する事案が発生し、管理の強化が急務であるため、個体の経済的価値が高い太平洋クロマグロについて、TAC報告時の個体管理や、取引時の伝達・記録の義務付け、罰則の新設等の措置を講ずるものである。立憲民主党は、改正案に賛成した上で、漁業収入安定対策事業やクロマグロ資源管理促進対策の更なる充実・強化に努めることなどを内容とする附帯決議を付し、同改正案は可決・成立した。

棚田地域の振興に向けて

棚田地域は、日本のピラミッドともいわれる貴重な国民的財産であり、農産物の供給にとどまらず、伝統・文化の継承、美しい景観の形成、国土の保全、水源の涵養、生物の多様性の確保、自然環境の保全といった多面的機能を有している。しかし地形的な条件不利性から、棚田維持には多大なコストがかかり、加えて人口減少や高齢化で担い手不足が進み、全国各地で棚田が荒廃の危機に直面している。これらの課題に対して立憲民主党は、棚田振興WTを設置し、2025年3月末で失効する棚田地域振興法および関連施策の効果を検証するとともに、今後の施策の在り方を検討していくことを確認した。