毎年9月頃に発刊国会レポートDiet Report

立憲民主党
国会レポート2024
(212回臨時国会、213回通常国会総括)

第2章「次の内閣」・政務調査会 各分野の対応

法務・憲法

裁判所職員定員法改正案に賛成

政府は213回通常国会に、裁判所職員の員数を減少する「裁判所職員定員法の一部を改正する法律案」を提出した。裁判官の定員管理などについての附帯決議を付して立憲民主党は賛成し、成立した。

総合法律支援法改正案に賛成

犯罪被害者等支援弁護士制度を創設するため、政府は213回通常国会に法テラス(日本司法支援センター)の業務を拡充する「総合法律支援法の一部を改正する法律案」を提出した。

事実婚の者も対象とするよう検討を求めた附帯決議を付して立憲民主党は賛成し、成立した。

長野刑務所を視察

立憲民主党は2024年3月、長野県須坂市の長野刑務所を視察した。留置中の男性が2023年10月に凍死した問題で、同所長らから経過などの説明を受け、男性が留置されていた居室などの施設を見学した。

視察を踏まえ法務省に対して、速やかな原因究明と調査報告書の公表、再発防止策の徹底を求めた。

2024.3.18 法務部門が長野刑務所を視察
2024.3.18 法務部門が長野刑務所を視察

共同親権導入の民法改正に附則修正

政府は213回通常国会に、離婚後の共同親権を導入することなどを柱とする「民法等の一部を改正する法律案」を提出した。政府原案は、生煮えの内容で、DVや虐待等に関する深刻な不安や懸念が残されたままであった。

立憲民主党は、共同親権導入に賛成・反対双方の当事者団体や有識者、弁護士団体、労働団体など幅広くヒアリングを行いながら、必要な修正項目を与野党に提案した。

衆議院での修正協議の結果、共同親権合意の真意を確認することなどを明記した附則修正を行うことで合意した。

また国会審議では、合意のない場合、「多くの場合は共同親権ではなくて単独親権の道をいくという形になる」などの政府答弁を引き出し、さらに家庭裁判所の体制整備等を求める附帯決議を付すことができた。

立憲民主党は、法案の修正案には賛成し、修正を除く原案に反対したものの、修正後の法案には賛成し、同法案は成立した。(詳細 第3章 民法等の一部を改正する法律案

技能実習見直しに対案を提出

国際機関等から「現代の奴隷制」とも指摘されてきた外国人技能実習制度をめぐり、政府は213回通常国会に、入管法・技能実習適正化法改正案を提出した。

政府案は、技能実習を育成就労制度に変更する等としているが、その多くが看板の掛け替えにすぎず、抜本的な解決とは程遠い内容である。

立憲民主党は政府案への対案として、「外国人一般労働者雇用制度の整備の推進に関する法律案」(外国人労働者安心就労法案)を衆議院に提出した。外国人労働者に選ばれる日本となるため、悪質民間ブローカーの排除などを柱とする内容である。

並行して行われた与野党の修正協議では、永住権取消の際の配慮を明記した附則修正で合意した。また、運用その他で少しでも状況の改善に繋がるよう衆議院で14項目、参議院で29項目におよぶ附帯決議を付した。

これを踏まえ立憲民主党は、法案の修正案には賛成したが、修正を除く原案、および修正後の法案に反対した。政府案は可決・成立し、立憲案は否決された。(詳細 第3章 抜本改正とは程遠い入管法・技能実習適正化法改正案

2024.4.25 外国人労働者安心就労法案を衆議院に提出
2024.4.25 外国人労働者安心就労法案を衆議院に提出

不払い養育費立替法案を提出

社会全体で子育てを支援し子どもの貧困を防止するため、立憲民主党は213回通常国会で「不払養育費立替・取立制度の導入に関する法律案」を衆議院に提出したが、継続審議となった。

改正民法で設けられた法定養育費分が不払いとなった場合、新たに設立する機構が立て替え、債務者に求償し手数料を徴収するなどの仕組みとした。

ビジネスと人権PTを立ち上げ

2023年のジャニーズ性被害問題など、ビジネスと人権の現状と課題が国内で共有されたことから、立憲民主党は2023年10月、ビジネスと人権プロジェクトチームを設置し、企業の人権に関する取り組みと事業価値向上等に結びつく国際状況などについて、有識者からのヒアリングを行った。

GID特例法改正案を提出

立憲民主党は「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(GID特例法)の一部を改正する法律案」を213回通常国会で衆議院に提出したが、継続審議となった。

改正案の内容は、戸籍上の性別変更要件のうち、最高裁が2023年10月に違憲判決を下した「生殖不能要件」に加え、「未成年の子なし要件」「外観要件」を削除することである。

議員任期延長の改憲論に反対

212回臨時国会の所信表明演説、213回通常国会の施政方針演説で岸田首相が「(改憲)条文案の具体化を進める」と演説したことを受け、衆議院憲法審査会で自民党、公明党など5会派が選挙困難事態における議員任期延長を柱とする条文案の起草機関の設置を提案した。

これに対して立憲民主党は、議員任期延長の立法事実や災害に強い選挙の在り方をめぐる議論が尽くされていないこと、現行憲法の緊急事態条項である参議院の緊急集会で対応が可能であることなどから、議員任期延長の憲法改正は不要だと主張した。

緊急集会については、①国民の選挙権の保障、②一刻も早い選挙の実施、③緊急事態から平事への復元力の担保、④取られた措置が衆議院の同意を要する臨時のものとの位置付け――など、「緊急事態における権力の簒奪と濫用を防ぐ仕組み」であり、活用すべきと憲法審査会で発言した。

国民投票法改正に結論を

2021年に成立した改正国民投票法の附則4条は、投票環境の整備、国民投票の公平及び公正を確保するための必要な法制上の措置を2024年9月までに講ずるものと規定している。ところが関連する放送やネットCMの規制、資金規制、ネットの適正利用、広報協議会規程など、国民投票法および手続上の課題を依然として残している。そのため立憲民主党は、議員任期延長ではなく、国民投票法改正に結論を得るよう求めた。

また、国会が長年放置している選択的夫婦別姓や同性婚など、現実的な憲法課題についても積極的に議論すべきと主張した。