毎年9月頃に発刊国会レポートDiet Report

立憲民主党
国会レポート2024
(212回臨時国会、213回通常国会総括)

第2章「次の内閣」・政務調査会 各分野の対応

外務・安全保障

ウクライナ侵略、イスラエル・パレスチナ情勢など国際社会は緊迫した状況にある。アジアでも中国の継続的で一方的な現状変更の試み、ロシアと北朝鮮の連携など、安全保障環境の厳しさが深刻度を増している。

こうした中で外務・安全保障部門は、212回臨時国会まで両部門を1人のネクスト大臣が担当していたが、213回通常国会から外務と安全保障のネクスト大臣がそれぞれ任命された。212回臨時国会、213回通常国会あわせて、外務省から2件の法案と12件の条約、防衛省から4件の法案が提出され、両部門は合同会議で案件を審査した。

213回通常国会で提出された重要経済安保情報保護活用法案に対しては、外交・安全保障戦略プロジェクトチームと外務・安全保障部門、内閣部門、経済産業部門とともに審査に臨み、修正の上、附帯決議を付して賛成し、法案は可決・成立した。(詳細 第3章 セキュリティ・クリアランス法案

2024.1.24 米国から来日中の超党派の下院議員訪問団と日米関係について意見交換
2024.1.24 米国から来日中の超党派の下院議員訪問団と日米関係について意見交換

政府に慎重な防衛装備移転を求める

政府は2023年12月に防衛装備移転三原則および運用指針を改定した。立憲民主党は国会での議論も経ず、移転可能な装備の範囲を大幅に拡大することに疑問を呈し、殺傷能力のある武器の輸出については慎重であるべきという姿勢を外務・安全保障部門長のコメントで示した。

政府は2024年3月にも防衛装備移転三原則の運用指針の改定等を行い、日英伊で次期戦闘機を開発・生産する「グローバル戦闘航空プログラム」(GCAP)に係る次期戦闘機の完成品を日本から第三国に移転することを可能とした。次いで213回通常国会にGCAPの管理等を行う国際機関を設立する「GIGO設立条約」が提出された。政府から、次期戦闘機の第三国への直接輸出の必要性・合理性について納得できる説明が十分になされたとは言えないが、国際共同開発・生産の機関の設立の必要は認められる。立憲民主党は、戦闘機の第三国移転には慎重な姿勢を明確にした上で、憲法に基づく平和主義を踏まえつつプログラム自体を監視し、関与していくことで、わが国の安全保障の確保と平和主義を守ることの両立に資すると考え賛成し、本条約は承認された。

数字ありき、増税ありきの防衛費増に反対

5年間で43兆円、GDP比2%の数字ありきの防衛費について、2024(令和6)年度予算にて、政府は過去最大の7.9兆円の防衛費を計上した。政府は、増税ありきにもかかわらず、防衛増税の実施時期決定を再び先送りし、防衛費の詳細は不明なまま予算は成立した。(詳細 第2章 予算・決算・行政監視

また、213回通常国会に政府が提出した長期契約恒久化法案については、装備品の調達コストが縮減する可能性は一定理解でき、長期の安定契約は国内の防衛産業の維持に資するという意見もあった。しかし、本法案は、時限法であった長期契約法を恒久化するものであるが、後年度負担額の増加による予算の硬直化、政府が恒久化の根拠とする縮減効果の説明が不十分、など恒久化の必要性が認められず、立憲民主党は反対したが、可決・成立した。

防衛省設置法等一部改正案に賛成

213回通常国会に政府が提出した防衛省設置法等一部改正案は、「統合作戦司令部」の新設、GIGO設立条約や日・独物品役務相互提供協定(日独ACSA)に関連した整備等、内容が多岐にわたる6本の法案を1本に束ねたもので、特に関連条約・協定の審議前に本法案の賛否を問うなど、政府・与党の国会軽視の姿勢を問題視した。他方、本法案で実施される自衛隊の改編等をはじめとする様々な措置について、妥当性が認められること、日独ACSAに関連する自衛隊法改正は平時のみが対象であること等が確認できたため、本法案に賛成し、可決・成立した。

日・独物品役務相互提供協定への対応

政府は213回通常国会に日独ACSAの国会承認を求めた。急速に変化する厳しい安全保障環境において、安全保障分野の共同訓練の実施、人道支援、PKO、災害派遣などを通じて、基本的価値を共有するドイツとの関係を促進する意義はある。また、質疑を通して、外務省はドイツとは存立危機事態における協力について具体的に協議していないと答弁、防衛省からは存立危機事態の認定に関わる、「わが国と密接に関係ある他国」とは現実的には相当限定されるとの答弁があった。しかし、条文解釈上は「存立危機事態」等を含むと政府が答弁したことを一部議員が問題視し、議論の末これまでのACSAと同様に反対することとなったが、与党等の賛成で承認された。

パレスチナ情勢に停戦を求める決議を採択

2023年10月7日に始まったイスラエルとハマス等のパレスチナ武装勢力間の紛争が継続しており、パレスチナ・ガザ地区での人道状況は危機的状態にある。外務省や国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)からのヒアリングを実施し、代表コメント等で、全ての紛争当事者に、国際人道法等の国際法を厳守すること、日本政府が人道支援と停戦にむけて、中東諸国と主体的に情勢に関与していくこと等を求めた。さらに、立憲民主党は衆参両院の本会議決議をけん引し、「ガザ地区における人道状況の改善と速やかな停戦の実現を求める決議」を採択した。

2022年に始まったロシアによるウクライナ侵略については、2024年2月、侵略開始から2年に際して声明を発表した。日本政府に人道・復旧復興支援の継続を求め、国際社会の継続的な支援の重要性を強調するとともに、改めてロシアの侵略を非難し、ウクライナからの撤収を求めた。

北朝鮮の軍事衛星発射

北朝鮮は、2023年に25発、2024年に10発(7月2日現在)のミサイルを発射するとともに、ロシアへのミサイル提供を通じ、技術の向上を図っている。2023年11月には軍事衛星打ち上げを目的とする弾道ミサイルの発射を行い、地球周回が確認された。こうした度重なるミサイルの発射に関し、衆参両院で発射を非難する決議を採択した。

拉致被害者家族、団体からヒアリング

党拉致問題対策本部は、2023年12月、2024年4月に「家族会」「救う会」「特定失踪者家族会」「特定失踪者問題調査会」の4団体から、北朝鮮向けラジオ放送「しおかぜ」の二重放送が約10カ月間停止する問題や2024年2月に決定した、「家族会」「救う会」の新たな「運動方針」などについてヒアリングを行った。方針変更に込められた、親世代が存命のうちの、一刻も早い拉致問題解決への決意を共有し、改めて全力で取り組むことを約束した。

2024.4.3 拉致問題対策本部が「家族会」「救う会」「特定失踪者家族会」「特定失踪者問題調査会」の4団体よりヒアリング
2024.4.3 拉致問題対策本部が「家族会」「救う会」「特定失踪者家族会」「特定失踪者問題調査会」の4団体よりヒアリング