第2章「次の内閣」・政務調査会 各分野の対応
内閣
インフル特措法等改正法案に反対
3年超に及ぶパンデミックは、国民生活に多大な負担と犠牲を強いてきた。危機管理に当たって立憲民主党は、コロナ対策の徹底検証とエビデンスや専門家の知見を生かした司令塔の設置が必要であると主張してきた。
211回通常国会に政府が提出した「新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律案」(インフル特措法等改正法案)は、内閣官房に内閣感染症危機管理統括庁(統括庁)を新設するものであり、重要広範議案として審議された。しかし統括庁は、決定権限を持つ対策本部の事務局機能を担うに過ぎず、他機関への指揮命令権限もなく、強力な司令塔組織が本来果たすべき機能は期待できないものであった。さらに、内閣官房の所掌事務を無制限に拡大できる包括条項も追加されていた。立憲民主党は国民民主党、有志の会とともに、内閣官房の業務肥大化を防ぐ観点から修正案を提出した。
修正案は与党等の反対により否決され、立憲民主党等が反対した政府案は賛成多数で可決・成立したが、立憲民主党の求めによって、政府のコロナ対応の検証・公表と速やかな措置、コロナ予算の使途・効果の検証、多様な専門的知見を活用する体制の確保、業務肥大化防止に向けた事務・組織の不断の見直し等の附帯決議を付した。
DVに精神的暴力を含める法改正に賛成
政府は211回通常国会に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律の一部を改正する法律案」(DV防止法改正案)を提出した。現行のDV防止法はかねてより、通報・保護命令の対象となる暴力の範囲が狭いこと、加害者への住居からの退去命令が一時的なため、被害者側が住居移転せざるを得なくなる等、多くの課題が指摘されてきた。今回の政府案は、すべての課題を解決するものではないが、精神的暴力も保護命令の対象となること、保護命令の期間を1年間に延長するなど課題解決につながりうることから、立憲民主党は附帯決議を付して賛成し、改正DV防止法が成立した。
フリーランス保護の新法制定を後押し
政府は211回通常国会に「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案」(フリーランス・事業者間取引適正化等法案)を提出した。
立憲民主党はこれまで、労働基準法の外に置かれ不利益を被る危険に常にさらされているフリーランスの保護に向けて、関係団体や有識者からヒアリングを重ねてきた。政府案は、業務委託の際に明示すべき契約条件が不明確、委託事業者の禁止項目の不足、労災保険や雇用保険、健康保険等のライフリスク対策がない等、不十分な点はあったが、フリーランスの保護や業務トラブルの回避に道を開くものであり、当事者が待ち望んでいた新法であることから、立憲民主党は附帯決議を付して賛成し、同法案は可決・成立した。
孤独・孤立対策推進法案に賛成
政府は211回通常国会に「孤独・孤立対策推進法案」を提出した。自公政権下で公助が切り崩され、社会保障がスティグマ化されるなか、孤独・孤立対策が適切に進められる必要がある。法案は孤独・孤立対策を推進する体制や基本的施策などを定めるもので、孤独・孤立対策の推進につながりうることから、立憲民主党は法案に附帯決議を付して賛成し、法案は可決・成立した。
近時、若年女性支援団体へのバッシングが深刻化し、孤独・孤立対策に関する支援活動全体にも支障が出ているとの指摘が法案の検討過程で有識者からあった。立憲民主党は、バッシングの実態を把握し対策を検討するため、2023年6月、一般社団法人Colaboを視察した。困難を抱える若年女性に手を差し伸べる支援事業のエンパワメントをはじめ、必要な施策の推進に引き続き取り組んでいく。
日本学術会議会員選考への介入の動きを阻止
日本学術会議は、独立性・自律性あるアカデミーであり、内閣総理大臣による会員の任命は、学術会議が選考・推薦した候補者をそのまま任命するものとされてきた。ところが2020年、菅首相(当時)は、学術会議が推薦した候補者のうち6人の任命を拒否した。政府は、任命拒否の理由を明らかにせず学術会議会員の選考に第三者を介入させる日本学術会議法改正案を211回通常国会に提出する動きをみせた。これに対し立憲民主党は法案提出は蛮行だと批判し、法案提出見送りを求めた。政府は211回通常国会への法案提出を見送った。
デジタル関係法案への対応
政府が211回通常国会に提出した「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律案」(マイナンバー法等改正案)は、立憲民主党などが反対したが可決・成立した。(詳細 第3章 マイナンバー問題)
また、政府は211回通常国会に「デジタル社会の形成を図るための規制改革を推進するためのデジタル社会形成基本法等の一部を改正する法律案」を提出した。立憲民主党は、セキュリティの充実、点検や検査等のデジタル化に関する安全の確保などを求め、附帯決議を付して賛成し同法案は可決・成立した。
差別禁止に逆行するLGBT理解増進法案に反対
LGBTなど性的マイノリティへの理解増進については、2021年に超党派議員連盟で法案が合意されたが、自民党の差別的対応により提出に至らなかった。一方、与党は211回通常国会に議連合意案を修正した議員立法「性的指向及び性同一性の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案」(与党修正法案)を提出した。与党修正法案は、日本維新の会等が提出した法案の内容を踏まえて再修正され、「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案」(与党再修正案)として審議され、立憲民主党は反対したが、与党等の賛成多数により可決・成立した。立憲民主党は議連合意案を法案提出したが否決された。(詳細 第3章 LGBT「理解抑制」に反対)
社会を変革するためSDGs基本法案を提出
立憲民主党は、あらゆる施策についてSDGs達成度を評価し、その結果を施策へ反映させる等の仕組みをつくるため、211回通常国会に「持続可能な開発の目標の達成に向けた諸施策の総合的かつ一体的な推進に関する法律案」(SDGs基本法案)を衆議院に提出し、継続審議となった。今後も党SDGsに関するワーキングチームを中心に、SDGs達成を実現するための取り組みを進める。
子どもを守る車内置き去り防止法案を提出
日本では子育てを担う保護者等への公的支援が不足しており、保護者等の注意が行き届かないこと等により子どもが車内に置き去りにされ亡くなる事故が発生している。通園バスについては2023年4月から置き去り防止装置の設置が義務付けられたが、事故は通園バス以外の車両でも発生している。立憲民主党は、子どもを乗せる一定の車両に置き去り防止装置等の設置を義務付けること等を定める「保護者等による自動車内への子ども等の置き去りの防止に関する法律案」(車内置き去り防止法案)を211回通常国会で衆議院に提出し、継続審議となった。
国民のための行政改革を推進
立憲民主党、社会民主党、国民民主党の3党は、211回通常国会で衆議院に自律的労使関係制度を導入するための公務員制度改革関連5法案を共同で提出したが、継続審議となった。(詳細 第3章 公務員制度改革)
立憲民主党と日本維新の会は、「行政改革・身を切る改革プロジェクトチーム」で協議し、211回通常国会で衆議院に天下り規制強化法案を共同で提出するとともに、公文書管理法改正案および公文書院設置推進法案を共同で提出したが、いずれも継続審議となった。(詳細 第3章 行政改革)
日本の脆弱な公文書管理制度の転換に向けて
2011年4月に「公文書等の管理に関する法律」が施行された以降も、改ざんや破棄など、公文書をめぐる多くの不祥事が頻発した。立憲民主党は、公文書が健全な民主主義の根幹を支える国民特有の資源であることから、日本の脆弱な公文書に関する制度や運用を改め、適切な管理の在り方を検討するため、2023年3月に公文書管理プロジェクトチームを立ち上げた。
PTでは、10回にわたり内閣府や国立公文書館、国立国会図書館、有識者からヒアリングを行い、①行政等の意思決定過程などを後に検証できる公文書作成、②公務員が適切な公文書管理を行うための体制整備、③適切な電子公文書の実現の3点からなる提言をまとめた。今後も公文書に関する諸課題を考察し、適宜、提言を行っていく。
皇位の安定的な継承へ向けた取り組み
立憲民主党は、代表のもとに「安定的な皇位継承に関する検討委員会」を2021年12月に設置している。退位特例法案に対する附帯決議が要請している皇位の安定的継承と女性宮家の創設について、有識者などの協力も得ながら、静かな環境のもとで引き続き議論を続けている。
なお、皇族数確保策を提言している政府の有識者会議による報告について、211回通常国会の衆議院内閣委員会一般質疑において、立憲民主党の議員が官房長官と一対一で、この問題に集中した質問を行っている。