毎年9月に発刊国会レポートDiet Report

立憲民主党
国会レポート2023
(第209回臨時国会、210回臨時国会、211回通常国会の総括)

第2章「次の内閣」・政務調査会 各分野の対応

法務・憲法

女性の再婚禁止期間を廃止する民法改正に賛成

政府は210回臨時国会に、親権者の懲戒権に関する規定を削除し体罰禁止等の規定を設けるとともに、嫡出推定規定などを見直す「民法等の一部を改正する法律案」を提出した。

立憲民主党は、不十分な無国籍者対策や、国籍取得に関する国籍法3条をめぐる問題点をただしつつも、子の身分の安定や女性の再婚禁止期間の廃止を評価し、同法案に附帯決議を付して賛成し、可決・成立した。

裁判所職員定員法改正に反対

政府は211回通常国会に、判事補などの員数を減少する「裁判所職員定員法の一部を改正する法律案」を提出した。2022年の208回通常国会で成立した同法改正の附帯決議で、裁判官の定員管理などについて政府の取り組みを求めたが、この間の対応は不十分であった。これは司法制度改革の失敗を象徴するものであり、立憲民主党は反対したが、与党などの賛成により同法案は可決・成立した。

GPS装着を可能にする刑事訴訟法改正に附帯決議

政府は211回通常国会に、保釈中の被告人の逃亡を防止する制度を創設し、犯罪被害者等の氏名等の情報保護を行う「刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」を提出した。

犯罪被害者の秘匿措置は急がれる課題である一方、国がGPS装置により個人情報を取得することは、保釈中の被告等の逃亡事案がこの間続いたとはいえ、プライバシーとの関係で慎重な運用が求められることから、附帯決議などで担保しつつ、立憲民主党は賛成し、同法案は可決・成立した。

第三者機関による難民保護政策を提案

政府が2021年の204回通常国会に提出した入管法等改正案は、ウィシュマさんが名古屋入管で医療放置され死亡する事件もあり、入管行政への国民の不信、批判が高まる中、廃案を余儀なくされた。しかし再び政府は211回通常国会に、旧法案の骨格を維持した入管法等改正案を提出した。立憲民主党は反対したが、与党などの賛成により、若干の修正を加え同法案は可決・成立した。

立憲民主党は対案として、政府から独立した第三者機関を創設する難民等保護法案と入管法等改正案の2法案を野党4会派で参議院に提出したが、廃案となった。(詳細 第3章 難民等保護法案・入管法等改正案

2023.5.9 難民等保護法案と入管法等改正案を参議院に提出
2023.5.9 難民等保護法案と入管法等改正案を参議院に提出

刑法等改正、性的姿態撮影処罰法に賛成

政府は211回通常国会に、不同意性交等罪の要件を明確化し性交同意年齢を引き上げるなど、性犯罪の規定を見直す「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案」「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律案」を提出した。附則に5年後の見直し規定を追加するなどの修正を行ったうえで、同法案は全会一致で可決・成立した。(詳細 第3章 性犯罪見直し刑法改正

婚姻平等法案を提出

各地の地方裁判所で同性婚を認めない現行制度は違憲または違憲状態とした判決が相次ぐなか、立憲民主党は211回通常国会に、同性婚を法制化し婚姻の平等を実現するための議員立法「民法の一部を改正する法律案」を衆議院に提出したが、継続審議となった。

憲法調査会分科会が中間報告を発表

210回臨時国会で憲法調査会は多様な憲法課題を4分類し、それぞれに設置した分科会で精力的に議論した。情報化社会と人権保障分科会は2022年11月、デジタル化の進展による知らぬ間の「内心の自由」侵害などの課題に対処するため、自己情報コントロール権・情報アクセス権・情報環境権の保障を柱とする中間報告を取りまとめた。

地方自治分科会は2023年2月、住民に身近な地方自治体が自主的・総合的に地域の諸課題を広く担えるよう法整備を進めることを中間報告で提案した。国会の在り方分科会は同月、緊急政令や緊急財政処分等の「緊急事態条項」の憲法への導入について、国会の権能放棄であり必要はなく、参議院の緊急集会および関連法による対応で措置済みとする中間報告を取りまとめた。安全保障分科会は、憲法の平和主義やその理念を具体化した9条等を議論した。

国民投票法改正を提案

211回通常国会で立憲民主党は、情報化社会と人権保障分科会での議論の成果を踏まえ、2022年に取りまとめた国民投票法改正案を見直し、衆議院憲法審査会で提案した。情報アクセス権の保障に資するよう、①憲法改正案に関するタウンミーティングの開催、②インターネット等を利用する方法による広報の2項目を、広報協議会の事務に追加した。さらにフェイクニュースや偽情報の流布に対応するため、情報の正確性の検証に資するようファクトチェックを行う民間団体等と広報協議会との連携に関する規定を設けた。

なお、2022年に取りまとめた改正案の内容は、①憲法改正案に対する賛否の勧誘のための広告放送の全面禁止、②政党等による賛否の意見表明のための広告放送の禁止、③政党等によるインターネット有料広告の禁止、④1団体の支出の上限額の設定、⑤外国人等からの寄附の受領禁止、などである。

参議院緊急集会の活用を主張

210回臨時国会、211回通常国会の衆参両院の憲法審査会では、緊急事態、特に参議院の緊急集会・議員任期延長も審議された。立憲民主党は、衆議院の解散や任期満了に伴う総選挙が相当期間実施できないと見られる「選挙困難事態」であっても議員任期の延長は必要なく、参議院の緊急集会が暫定的に国会の機能を果たすべきとの見解を表明した。

緊急時の国会機能の維持に審議が傾斜していることに対して立憲民主党は、政府が臨時国会召集要求を放置したり、時の内閣が恣意的に衆議院を解散したりと、平時の国会機能が軽視されていると指摘し、緊急事態条項よりも焦眉の国民的課題である同性婚、LGBT、反撃能力、放送法等と憲法の関係を論議すべきと提案した。

憲法対話集会を東京、三重で開催

2023年4月28日、3分科会の中間報告を議題にしてオンラインとリアルのハイブリッド形式で対話集会を東京で開いた。5月28日には三重県で「立憲主義に基づく論憲」をテーマに対話集会を開き、国民との憲法対話を継続した。

2023.4.28「りっけんと語ろう!2023憲法対話集会―3分科会の 中間報告説明会」
2023.4.28「りっけんと語ろう!2023憲法対話集会―3分科会の 中間報告説明会」